愛を創る彼女

「私、貴方の過去も未来も見てきたの」

 彼女はそう言った。

「貴方すごく幸せそうに死んでた。いろんなひとに囲まれて、笑いながら。長生きしてたよ?」

 僕は何を言われているのかもわからないまま答えた。

「長生きしなきゃいけないのか」

「ううん、長生きしてたの。この世界線では。だから、この世界線からズレちゃいけないの」

 彼女の言うことの意味はわからない。ただ、彼女に愛されているということだけはわかった。彼女は時折数式をプレゼントしてくれる。虚数単位を作るための数式を。

 彼女の虚数単位はjだけど、わざわざiと描いてくれる。彼女が求めているものは愛なんだろう。僕にはiを求める数式なんか作れない。それでも彼女が一生懸命説明してくれるから、彼女からプレゼントされた数式の意味はなんとなくわかる。

 初めてプレゼントされた数式は (log_e(-1))/π だった。対数を忘れている僕に説明してくれた。

「log_e(-1)は不定じゃないの。多価なの。だから、この数式の解に愛が含まれているの」

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