コンドームの練習を子どもとやってみませんか?
どきっとするタイトルですみません。しかし、真面目です。性教育はセックスや避妊・性感染症予防の話だけではない!と日々発信していますが、しかし、セックスやコンドームのつけかたなども子どもたちには正しく知って欲しいですよね。
先日、性教育ワークショップのご依頼があり、男子4人(小5~中1)に向けて「生理」「射精」「セルフプレジャー」「セックス」「性的同意」「受精・妊娠」「体外受精」「避妊・性感染症予防」「性自認、性的指向、性表現など」をギュギュっとつめこんだワークショップを開催しました。
(ワークショップで使う素材達)
まずは参加する子どもたちの知識確認も兼ねて、赤ちゃんの話から。赤ちゃんってどれぐらいの大きさでうまれてくるか知ってる?何カ月おなかにいると思う?最初はどれぐらいの大きさ?なんて話をします。中学生は、受精卵という言葉や、卵子と精子がであって受精卵になることは知っているようです。ではでは、卵子や精子がからだのどこにあるのか、どんな仕組みなのかを今日はやっていくよ!!ということで、ワークショップスタート。
排卵って?生理って?
まずは卵子を持つひとのからだにある「卵巣、卵管、子宮、腟」を作ります。一つ一つ説明をしながら工作すると、思春期の男子も興味を持ってくれたよう。卵子は何個あるでしょう?卵子は何歳からからだの中にあるでしょう?なんてクイズにも積極的に答えてくれます。(ちなみに正解は、思春期のころの卵子は20~30万個、50歳ぐらいで0個になります。また、胎児のころにすでに卵子はできています。)
からだが完成したところで、排卵・生理について。思春期になると脳から指令(ホルモン)が出て、大人のからだになっていくこと。それに伴い、月に1回卵巣から卵子が飛びでてくること。卵子は約24時間、卵管の先っぽで精子を待つこと。子宮には血管が増えて内膜が厚くなること。約28日たつと、内膜がくずれてきて、膣から少しずつ出てくること、それを生理ということ。1回の生理は3日~7日あること、などなどを説明。
ここで「生理用品って知ってる?」ときいたらピンと来ないよう。「ナプキンってきいたことある?」と言うと、ああ!ってうなずく子も。ここで、ナプキンを1人1個くばって、あけてもらいました。皆、こわごわとあけます。シールがついているのを興味深く見る子もいます。そこで使い方を説明。4人とも一生懸命きいてくれました。生理痛やPMSについても軽く説明。本当はもっと色々な生理用品なども紹介したかったのですが、時間の都合で割愛。(生理についてもっと詳しく学び、ナプキンだけではなく、タンポン、月経カップ、吸水ショーツ、低用量ピルについても学ぶワークショップもあります。詳細はこちら。)
射精って?セルフプレジャー、間違わないで!
次は精子をもつひとのからだにある「精巣、精管、ペニス」を作成。またまた精子の数や、おしっこと精子はまざっちゃわないのか、などなどクイズをまじえて工作をしていきます。(ちなみに、精子の数は約10億個。おしっこと精子の通り道はとちゅうから同じですが、射精のときは膀胱の出口の筋肉が収縮するので、精液におしっこがまざることはありません。)
そして、思春期のころから(もっと小さい頃からでも大丈夫)ペニスをさわりたくなることがあるけれど、それは脳からのホルモンの影響なので問題ないこと。ただし、手でやさしくさわること、床やかたいものにこすりつけたり、ギューッと力強くにぎったりしないこと、一人っきりになれるところでさわることを伝えました。また、寝ているあいだに射精をする夢精についても説明。朝起きてパンツに白いねばねばした液がついていても病気じゃないので、新しいパンツにとりかえようね、と話しました。また、今回は男の子だけの参加でしたが、女の子もおまたのあたりを自分でさわって気持ちよくなることがあるけれど、変なことではないよという話もしました。
性自認・性表現について考えてみる
ワークショップでは便宜上、子宮や卵巣がある人を女性、精巣やペニスがある人を男性と言ってしまうのだけど、本当はその人の性別がなにかなんてまわりの人には分からないことを説明。どんなからだであっても、どんな服装をしていても、その人の性別はその人が決めることで、まわりのひとは勝手にきめられないと話しました。最近のこどもたちは、このような性自認、性表現などのはなしは戸惑わずに「そうだよねー」という感じできいてくれることが多いです。
セックスってなに?
まずは赤ちゃんが欲しい時のセックスの説明。ペニスを腟に挿入するという行為を説明しつつ、排卵は月に1回なので、タイミングがあわないと妊娠しないことを話しました。淡々と話をすすめてきているので、特に恥ずかしさなどはお互いうまれません。仕組みとして「なるほど」といった感じです。
次に、赤ちゃんが欲しいわけではないけれどセックスをしたくなることもあると説明。好きな人ができて、もっと近くに寄り添いたいと思った時、セックスをすることもあると話します。月に1回の排卵のときにしか妊娠しないといっても、排卵がいつあるかわからないから、妊娠する可能性はいつでもあること。なので、赤ちゃんができないように対策をしなければならないと話します。
避妊・性感染症予防についての基礎知識
避妊の方法としては、排卵をふせぐ薬である低用量ピルを女性が飲む方法があることを説明。また、精子が子宮に入らないように、ペニスをカバーするコンドームというものがあると伝えます。そして、セックスをする際は赤ちゃんができないようにするだけではなく、セックスでうつる病気があるから注意しなくてはならないこと、それを防げるのはコンドームだけであるのでコンドームは絶対に使えるようにならないと!と。このときに、同性同士のセックスは赤ちゃんはできないけれど、性感染症のリスクはあるから、しっかりコンドームなどで予防しようということも伝えます。
コンドームは練習が必要!
コンドームの使い方はむずかしくて、その成功率は80%ぐらいであることを説明。なのでかならずセックスをする前に練習が必要だよ、と話します。まずは、ここで練習をしてみよう!じゃんけんで順番をきめて、一人ずつコンドームを布を固く巻いてつくったペニスに付ける練習をしてもらいます。みんな真剣にそしてとても上手にやってくれました。「いつかセックスしたいとおもったときには、自分のペニスにつける練習もしてみてからね。」
相手としっかり話し合ってから
「セックスがしたいと思ったら、相手と一緒に、赤ちゃんができない方法や性感染症がうつらないようにするためにどうするかをしっかり話し合おう。こういうことが話し合えるぐらいお互いよく考えていて、お互いセックスをしたいと思っていないと、セックスはまだすることはおすすめできないよ」と伝えると子どもたちは「うんうん」とうなずきます。また、「コンドームや低用量ピルをつかっても100%の避妊も100%の性感染症予防もできないので、万が一のときどうするかまで考えてみてね」とも。
体外受精
赤ちゃんがほしくてコンドームなどをつかわずにセックスをしても、なかなか赤ちゃんができない人もいることを説明します。そして体外受精を疑似体験。工作で作った卵子、精子をとってきて、透明のケースにいれてもらいます。ここで卵子と精子がうまく出会えて受精卵になると、子宮に戻すこと。体外受精であってもそうでなくても、受精卵全て成長して赤ちゃんとしてうまれてこれるわけではないこと、途中でざんねんながらなくなってしまう命もあることも伝えると神妙な顔をしてきいてくれました。
最後は本としてまとめます
できあがった工作は好きな色のリボンで結んで、本のような形にして持って帰ってもらいます。
保護者のかたへ。安全なセックスへの協力のお願い。
保護者のかたは少しはなれたところからきいてもらっていたのですが、最後に少し説明を。今回参加してくれた子どもたちは、セックスの機会がさしせまっている様子ではなかったけれど、子どもたちが今後そのようなことがある際はサポートをして欲しいと。具体的には下の写真(書籍『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて』より)のように、安全なセックスのために必要な情報をまとめたものとコンドームを必要になりそうな年頃で渡してあげて欲しいということを伝えました。
このワークショップで伝えたいこと
この情報過多なワークショップにかける時間はたったの90分。ひとつひとつをしっかり覚えて帰ることは最初から期待はしていません。しかし、「こうやって膣から血がでてくるんだ」「生理用品を使うって大変だな」「セックスをするのには準備がいるんだ」「コンドームって結構難しいから練習が必要なんだな」というように、様々なトピックで実際に自分の手を動かして体感したことは今後もなんとなく覚えているはずです。このような感覚さえ残ってくれたなら、実際の生理の対応や避妊・性感染症予防についてなんてそのとき調べてくれればいいのです。性の話ひとつひとつは恥ずかしいことでも特別なことでもないということは参加してくれたこどもたちには伝わったと考えています。あとは、自分の気持ちやからだを大切にしつつ、相手の気持ちやからだも尊重し、コミュニケーションをしっかりとっていってくれると嬉しいです。
以上、盛りだくさんなワークショップのレポでした。ここまで大がかりに家庭でやるのは難しいとおもいますが、ところどころこどもに伝えたいとおもったところだけでも、是非、お子さんに話してみて下さい!
また、今回のワークショップのような内容、今回のワークショップに盛り込みきれなかった思春期以降のさまざまな性の話を書籍ではまとめてあります。こちらもどうぞよろしくお願いいたします!