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2023年度定時株主総会 アクティビストからの株主提案まとめ①
皆さまこんにちは、アクロポリス・アドバイザーズです。
お気づきのように、2023年度のアクティビストによる株主提案はかなり多く、皆さまも大変注目なさっていることでしょう。
ということで、今回はアクティビスト別に提案をまとめ、その中からいくつかピックアップして詳細を紹介していきたいと思います。
また、アクティビストによる提案が多いので2本立てでお送りいたします。
第1弾である今回は、Asset Value Investors・Dalton Investments・ESG投資事業組合・Hibiki Path Advisors・Kaname Capital・Lim Advisors・Nanahoshi Managementの7社について紹介いたします。
以下は今回紹介するアクティビストの株主提案早見表です。
提案概要の部分に提案内容を簡単にまとめてみましたので、少し確認したい時などに拡大してご使用ください。
![](https://assets.st-note.com/img/1686144298252-WfgPoWl3gD.png?width=1200)
■Asset Value Investors
アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)は、ロンドンを拠点とする投資運用会社で、20年以上にわたって日本株に投資しています。
AVI の投資チームは投資先企業の経営陣との対話を通じて、企業価値の持続的な向上に貢献することを目指しています。
①NCホールディングスへの提案
AVIは、2021年に当該会社の株主となって以来、プライベートなエンゲージメントを行なっており、今回が初めての株主提案となります。
これまでの対話により、一部の取組みについては実施されAVIはそのことを正当に評価している一方で、M&A等の事業投資計画の開示やセグメント情報の透明性向上、定量的な株主還元方針の開示といった、株主共同の利益の観点から重要性の高い取組みは未だ達成されていないため、株主提案権を行使せざるを得なくなったとしています。
今回の株主提案では、株主共同の利益の向上のため、以下の8つの点を提案しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1685684077956-F1VwE3Y6DR.png?width=1200)
【参考資料】
・[NCホールディングス]株主提案に対する取締役会の反対意見
・[AVI]株主提案補足資料
②エスケー化研への提案
【参考資料】
・[エスケー化研]株主提案に対する取締役会意見
・[AVI]Painting a better SK Kaken(キャンペーンサイト)
■Dalton Investments
1999年創業のダルトン・インベストメンツは、2008年に世界金融危機が起きる以前から日本株に積極的に投資してきた老舗アクティビストです。
今年度は11社に対して株主提案を行いましたが、理由はそれぞれありつつも全ての会社に対して、資本市場に対する意識の強化を求め、かつ
取締役の業績連動報酬制度の見直し・自己株式取得・取締役の過半数を社外取締役とすることのいずれかを要求しています。
①リンナイへの株主提案
1、自己株式取得の件
2、取締役が保有する株式の取扱いに関する定款変更の件
3、社外取締役の構成に関する定款変更の件
リンナイに対しても、例に漏れず、資本市場からの評価に対する意識を強化することを目的とし、昨年2022年4月に公表したホワイトペーパーでの問題提起とほぼ同様の課題が、リンナイには依然としてあります。
ダルトンは、リンナイの事業の実力は非常に高いものの、資本市場からは相応の評価をされていない点を問題視しており、以下を課題として認識しています。
⚫ バランスシート上の必要現金は理解する一方、水準の妥当性について疑問。
⚫ 全ての資金を想定資本コストが最も高い株主資本(現金)で調達する計画となっており、資本コストを意識しているように見受けられない。
⚫ 高い現金創出能力を有するがゆえ、現行の株主還元政策では現金が積み上がり続け、資本効率低下の傾向は変わらない。
⚫ ROEに対するコミットメントがない。
【参考資料】
・[リンナイ]株主提案に対する取締役会意見
・[Dalton]過去のホワイトペーパー(2022年4月)
■ESG投資事業組合
①宮地エンジニアリンググループへの提案
1、剰余金の処分の件
2、定款一部変更の件(取締役報酬の個別開示について)
2年連続の株主提案であり、昨年度は剰余金処分の件についての賛成比率が30%を超えていました。来る株主総会の決議結果にも注目ですね。
当該会社はPBR1倍割れの企業であり、当該会社が長期間にわたって株主への配当を行わず内部留保を増やしていることに対して批判をしており、企業の経営陣の知識や意欲にも疑問を呈しています。
さらに、取締役報酬の個別開示を求めており、従来の開示では子会社からの報酬や使用人兼務取締役の給与が明示されていません。
ダルトンは、特定子会社を含む代表取締役の報酬の個別開示を要求し、株主に対して透明性の高い開示姿勢を求めています。
【参考資料】
・[宮地エンジニアリンググループ]株主提案に対する取締役会意見
・[宮地エンジニアリンググループ]2022年定時株主総会決議結果
■Hibiki Path Advisors
Hibiki Path Advisorsは、シンガポールの登録資産運用会社として2016年3月より営業を開始しました。
日本の上場企業にバリュー投資手法を適用し、経営者と協力して長期的な成果を追求することを目的としています。
①日本高純度化学への提案
1、純投資目的以外の特定投資株式に関わる定款変更の件
2、剰余金の配当方針に関わる定款変更の件
3、株主資本コストに関わる定款変更の件
Hibikiは長年当該会社とエンゲージメントしてきましたが、資本政策、そしてバランスシートのマネジメントに関しては、現経営陣との見解の相違が大きかったため、株主提案をするに至りました。
【参考資料】
・[日本高純度化学]株主提案に対する取締役会意見
・[Hibiki Path Advisors]キャンペーンサイト
■Kaname Capital
2018年に、自己資金及び顧客資金を運用するためKaname Capitalは設立されました。「世界で最も質が高く、最も割安な株式は何か」という問いかけをもとに、日本株に積極的な投資を行なっています。
①フクダ電子への提案
1、「フクダ電子株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)基本方針」の廃止の件
2、定款一部変更(大規模買付行為への対応策に関する規定の新設)の件
3、取締役の個人別の報酬額の決定方法の件
4、定款一部変更(取締役の報酬額の決定方法に関する規定の新設)の件
当該会社は、Kaname Capitalが深く関わっている企業の一つです。
創業者一族によって経営されている会社で非常に長い歴史を持っており、完全に株主を無視している会社でした。
これまで、「指名・報酬委員会の設置」「個人株主の議決権の増加と株式の分割」「増配の要求」などの要望を出し、要望の半分は受け入れられましたが、残りの半分はまだ受け入れられておらず、株主提案に至ったと考えられます。
【参考資料】
・[フクダ電子]株主提案に対する取締役会意見
・「マネックス・アクティビスト・フォーラム2023」パネルディスカッション第2部
■Lim Advisors
香港の投資運用会社リム・アドバイザーズ・リミテッドは、アジア市場で投資しており、日本企業にも積極的に提案を行なっているアクティビストです。
①テレビ東京ホールディングスへの提案
1、定款一部変更(株式会社日本経済新聞社との共同事業運営契約の開示)の件
2、定款一部変更(資本コスト等の開示)の件
3、定款一部変更(人事諮問委員会及び報酬諮問委員会の開催実績及び審議内容の開示)の件
4、定款一部変更(取締役報酬の個別開示)の件
5、剰余金の処分の件
2年連続の提案となります。
昨年と今年の提案内容には相違もありますが、共通している部分もあります。
現在の経営陣には、日経新聞元幹部が4人も含まれており、「天下り経営」として批判しており、この状況ではテレビ東京の成長エンジンを活かせず、資本効率を意識した経営ができないと指摘されています。
日経新聞がテレ東株の32%を保有していることを考えると、高い賛成比率を得ることは難しそうですが、日経テレ東大学の終了も絡んだ内容になっており、注目に値すると思います。
【2022年の提案】
1、定款一部変更(株式会社日本経済新聞社からの天下りの禁止)の件
2、定款一部変更(顧問等の廃止)の件
3、取締役1名選任の件
4、定款一部変更(取締役報酬の個別開示)の件
5、定款一部変更(資本コストの開示)の件
6、定款一部変更(政策保有株式の売却)の件
7、剰余金の処分の件
【参考資料】
・[テレビ東京HD]株主提案に対する取締役会意見
・[テレビ東京HD]第12回定時株主総会招集通知
■Nanahoshi Management
Nanahoshi Mnagementは、ESGを主要課題とし、日本を中心に市場で過小評価された企業に対して、長期的な目線で株主価値の最大化を促すことを目的としています。
①焼津水産化学工業への提案
1、剰余金の処分の件
2、取締役(監査等委員である取締役を除く。)1 名選任の件
3、剰余金の処分に係る定款一部変更の件
4、気候変動リスク対応に関する定款一部変更の件
5、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)廃止を求める件
Nanahoshi Managementは、焼津水産化学工業のPBR0.5倍という異常に低い評価の改善を目標としています。
そのために、資本コストを低減(リスク低減)し、資本効率性を向上(資本コストを意識)させるための提案を行なっています。
【参考資料】
・[Nanahoshi Management]株主提案
・[Nanahoshi Management]キャンペーンサイト
◇おわりに
ここまで読んでくださってありがとうございました。
まだまだ株主提案は続きますので、次回の「第2弾アクティビストの提案まとめ」でまたお会いしましょう。