Free Fujitec の行方
皆さまこんにちは
アクロポリス・アドバイザーズです。
毎日蒸し暑い日が続き、お疲れのところと思います。
一方で、定時株主総会が連日開催され、注目されていた方も多くいると思います。そこで今回は、
フジテックの第76期定時株主総会、特にウチヤマ・インターナショナルからの株主提案に関連する内容について、まとめていこうと思います。
具体的には、フジテックの臨時株主総会以降、内山氏が会長職を解任されてから第76期定時株主総会までの流れを時系列でまとめました。
その他定時株主総会の株主提案についてご興味がある方は、以下の記事もご覧くださいませ。
■第76期定時株主総会決議結果(2023年6月21日開催)
フジテックの今期定時株主総会は以下のように、
会社提案は全て可決され、株主提案は全て否決されるという結果になりました。
同時に株主提案はかなり低い賛成比率での否決ということもあり、
ウチヤマ・インターナショナルとしては大変厳しい結果となったのではないでしょうか。
また、ウチヤマ・インターナショナルは、前回の臨時株主総会でのオアシス側から選任された取締役の賛成比率が低いことにも言及していましたが、今回の定時株主総会では高い賛成比率を得られたようです。
以下は、取締役のスキルマトリックスです。
【参考資料】
・[フジテック]臨時報告書
・[フジテック]第76期定時株主総会決議ご通知
■定時株主総会関連
前回の臨時株主総会以降、内山元会長とフジテックの間では多くの動きがありました。
内山氏率いるウチヤマ・インターナショナルでは、「Free Fujitec」と題してホームページが開設され、様々な文書やインタビューなどが公開されました。
○ウチヤマ・インターナショナルが株主提案権を行使(2023/04/25)
株主提案の議案は先述したとおり、第5号議案〜第12号議案です。
ウチヤマ・インターナショナルは、今回の株主提案に関して、
「創業家がファンド株主から経営権を取り戻すためのものではなく、長期永続的な大株主として、フジテックの強く持続的な企業価値向上ひいては株主価値創造を実現するための提案です。」としています。
また、オアシス側が選任した取締役を含む取締役会に対する懸念点として挙げられているのが、フジテックの企業価値の根幹を成す事業そのものについては何も言及することなく、会社と従業員、取引先、地域社会との信頼関係が揺らぎかねない状況に突入しつつあるという点です。
・[ウチヤマ]株主提案のお知らせ
・[ウチヤマ]株主提案について(プレゼン資料)
・[ウチヤマ]株主提案の趣旨とその内容について
・[フジテック]株主提案受領のお知らせ
○フジテックが株主提案に対して「反対」する取締役会意見を公表(2023/05/23)
前述のような取締役会の不適格性は存在せず、
フジテックの取締役会は、特定の株主の影響を受けず、短期的な利益にとらわれることなく、正常な経営を行っており、提案株主の主張は事実に反しているとしています。
また、ウチヤマ・インターナショナル側が選任した取締役候補者は、十分な適格性を備えているとは言い難いと述べています。
・[フジテック]会社提案及び株主提案に対する取締役会意見
・[フジテック]会社提案取締役候補者について
○ウチヤマ・インターナショナルがフジテックの取締役会意見について事実誤認を指摘(2023/05/29)
フジテックの公表した取締役会意見の記述に、「株主提案に係る候補者については、指名・報酬諮問委員会から、候補者について外部専門家の支援を受けて実施したインタビューの結果及び当該外部専門家の意見も踏まえ、取締役として選任する必要はない旨の答申を受けております。」という部分があり、あたかも株主提案の社外取締役候補者全員と面談したかのような印象を与える記載であると述べています。
しかし、実際はフジテック側が面談をしたのが8人中4人にとどまるとして、事実誤認を主張しています。
○ウチヤマ・インターナショナルがフジテックの会社提案について見解を公表(2023/05/31)
ウチヤマ・インターナショナルは、会社提案の社外取締役候補者に反対票を、社内取締役候補者に賛成票を、剰余金処分案については反対票を投じると公表しました。
現取締役会は、経験及び力不足で、自らの保身を図ろうとする利益相反はもちろんのこと、拙速かつ不透明な候補者の選定であると批判しています。
・[ウチヤマ]フジテックの会社提案に対する見解
・[ウチヤマ]アンソニー・ブラック氏の選任プロセス及び選任の目的に関する疑念
○ウチヤマ・インターナショナルがISSの評価に対する反論を公表(2023/06/07)
以下のようなISSの主張に対し、ウチヤマ・インターナショナルは、
弊社側の候補者は、詳細ではないながらも、大まかな事業戦略とその結果としての財務指標を示しているにもかかわらず、2 月に選任された取締役会は、いまだに事業戦略自体を打ち出せていない点について、反論を述べています。
・[ウチヤマ]議決権行使助言会社 ISS の評価に対する反論
○ウチヤマ・インターナショナルがフジテックの社外取締役の独立性に対して疑義を表明(2023/06/13)
フジテックの社外取締役の独立性に関して、
特にセス・フィッシャーと社外取締役候補のグラニンジャーは2009年からの10年を超える付き合いであるとの情報が得られており、明らかにオアシスからの独立性がないとしています。
その他3名は、ヘッドハンターではなく、オアシスにプライムブローカレージサービス(ヘッジファンド向け総合サービス)を提供するGoldman Sachsからの紹介で、2022年1月ごろ(臨時総会の半年以上前)から、オアシスが投資先に送り込む取締役候補として関係が存在していたともしています。
・[ウチヤマ]フジテックの現任社外取締役とオアシスとの関係性に関する外部調査結果
■その他の動き
○フジテックが内山前会長の解職と第三者委員会による調査の終了についての文書を公表(2023/04/07)
内山氏が会長から解職された理由は以下の3点であると述べています。
①関連当事者取引に関する第三者委員会への協力不足
②株主総会の選任手続きにおいて不正*があり、経営者選任の基本原則に反する疑念の発生
③内山氏からの引継・助言はほぼ完了し事業運営の継続性が見込まれること
この内山氏の解任に関する決議は、取締役で全会一致で行われ、コーポレートガバナンスの向上に努めると述べています。
*第75期定時株主総会の直前に内山氏を取締役候補者とする議案を撤回しながら、同株主総会終了後に同氏を会長職に選定し、株主総会の信認を得ていない同氏が当社内で一定程度の影響力を保持しているような外形を生じさせたこと
・[フジテック]内山前会長の解職と第三者委員会による調査の終了に関するお知らせ
○内山高一氏がオアシスのセス・フィッシャー氏その他に対し、名誉毀損訴訟を提起(2023/05/09)
内山氏は、2月の臨時株主総会に関連するキャンペーンでの、オアシスによる主張は事実無根であり、名誉毀損に値すると訴訟を起こしました。
・[ウチヤマ]訴状
・[フジテック]当社に対する訴訟の提起に関するお知らせ
○ウチヤマ・インターナショナルが第三者委員会による検証終了の理由について見解を公表(2023/05 吉日)
内山氏は、第三者委員会による検証終了の理由について、公式見解を公表する前にメディアですでに言及していましたが、2023年4月7日付けのフジテックの公表した内容が事実に反しているとして、ここで公式見解を公表しました。
フジテックは、内山氏が調査に協力していないとしていましたが、内山氏はそれは事実に反しているとしています。
フジテックの公表資料では内山氏に対するヒアリングは1回しか行われていないと記載してありますが、2022年9月22日と、同年12月28日の2回にわたって本件第三者委員会との面談を行っているとのことです。
○フジテックが第三者委員会の指摘事項への対応に関するお知らせを公表(2023/05/23)
前述の内山氏の第三者委員会への協力について、フジテックは以下のように公表しています。
・[フジテック]第三者委員会の指摘事項への対応に関するお知らせ
■おわりに
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回の定時株主総会も2月の臨時株主総会と同様、さまざまな情報が交錯していましたが、皆さまの情報把握の手助けはできましたでしょうか?
出来ましたら幸いです。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。