生活保護課担当者がベーシックインカムを語る(後編)
皆さんこんにちは。前回に続き、生活保護担当者がベーシックインカムを考える記事です。前回の記事はこちらからどうぞ。
前回の記事では、既存の生活保護制度はどういうものなのか、ベーシックインカムはどのような構想で、生活保護制度とどう違うのか、日本でベーシックインカムが導入されれば国はどう変わりそうかについて書きました。
今回は、ベーシックインカム導入によるデメリットと、日本での導入の可否について書いていきます。
3.想定されるデメリット
(1)貧富の格差は拡大する
ベーシックインカム制度は、いわば国民の収入の底上げです。なので、すでに収入がある人にとってはさらなる富の源泉になる一方、生活困窮者にとってははやはり最低限度の生活を維持する費用のままであり、貧富の差は拡大すると予想します。
例えば、私はありがたいことに自分の稼ぎだけで十分に生活できる水準を確保できています。そこにベーシックインカムが導入されて、追加の収入があればどうでしょうか。私ならそれを全額投資に突っ込んで運用して、さらなる利益を見込めます。
一方、現在生活に困窮されている方はどうでしょうか。たしかに、ベーシックインカムによって最低限度の生活を営むことはできるかもしれません。しかし、それ以上の水準を求めていくことは難しい。
また、保護費が「補助金」的なお金なのに対して、ベーシックインカムは「給付金」的なお金であることにも注意が必要です。保護費は生活・医療・介護など用途によって細かく分類されており、その用途において足りない分のみ支給されます。しかし、給付金の場合はすべて一緒くたにして支給される前提ですから、適切な金銭管理ができずに家賃が払えない、病気になった月は医療費が払えないなどの困りごとが生じる可能性があります。しかも、給付金になってしまえばケースワーカーもつかないでしょうから、指導する人もつかなくなってしまう。
(2)他法他施策は大幅に減る
これまでは生活困窮者に対して必要分のみ支給していたお金を、全国民に等しく給付することになれば、保護費とはケタ違いの財源が必要になるでしょう。そうなると、既存の制度の多くは廃止せざるを得ない。だってお金がないもの。
まず、年金や手当は間違いなく廃止でしょう。これらは毎月の生活費として支給しているお金なのだから、ベーシックインカムがあれば賄えるでしょうという理屈で。
医療費や介護サービス費の負担割合も見直されて、1~3割負担ではかかれなくなると推測されます。あと、高額療養費制度とか高額介護サービス費制度も廃止されるか、負担額が増額されるでしょうね。
憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」をベーシックインカムで果たしているとみなすのであれば、同様の制度を並走させる理由がありませんから、生活保護とも共存しません。となると、ベーシックインカムでも生活が困窮する人の受け皿はなくなってしまうことになります。
(3)情報格差による支出増?
歳入(行政の収入)の観点から推測すると、やっぱり財源が足りないし、増税はせざるを得なくいでしょう。一方で、こうした増税に対する救済策も用意してくると思われます。いわば増税に対する口実です。新NISA制度からも「これだけ税制優遇した証券口座をあげるんだから別のところで増税させてね」というメッセージが感じられますし。
たとえば、マイナンバーカードを使って確定申告や免税の手続きをとれば一部の税負担を免除するとか、対面で手続するのとオンラインで手続するのとでは税の負担割合が違うとか。情報ややり方を知らない人から多く搾り取る構図を作らざるを得ないんじゃないかなと。私が官僚だったらそうやって情報弱者から税金をむしり取りますね。
となると、(1)と同じように、すでに情報へアクセスし、取捨選択できる人はより生活がしやすくなり、そうでない人の生活は引き続き困窮するという格差が生まれそうです。
4.日本での導入は難しいかな
(1)一億総生活保護社会
こうしたデメリットから、すべての人に一律支給のベーシックインカムは実現が難しいでしょう。妥協案として考えられるのは、所得別に段階を設ける、年齢や持病などで段階を設けるなどで、既存の生活保護と似たような制度にせざるを得ないのかなと。
あとは、生活保護でいう最低生活費にあたる基準額を、「健康で文化的な最低限度の生活」ではなく、もう少し高い水準にまで押し上げて算出して、個々人の事情に応じた金額を支給するくらいでしょうか。
となると、そこまでして制度改革をする必要なんてあるかなという感じになります。しかも、既存の制度のままなら生活保護法上の制約を受けることになります。となると、行政、国民どちらにとってもメリットはなさそう。
(2)「生活保護」ってやめません?
そもそも生活保護っていう表現やめませんか?表現が漠然としているし。生活困窮者といっても、その人によって異なる困りごとを抱えておられて、その内容や程度に応じた支援を行政がしています。なのに、「保護」などと仰々しい表現を使ってしまうと、本来なら支援を受けられる方でも高いハードルを感じてしまう恐れがあります。
制度の改革は置いといて、名前だけでも変えません?生活応援制度とか、再出発支援制度とか、社会全体で助け合おう制度とか。
ということで、ChatGPT先生に生活保護制度の新しい名前を考えてもらいました。
生活サポートプログラム
福祉保障サービス
家庭支援プラン
ライフサポート・アシスタンス
社会的支援ケアプラン
安定生活サポート制度
生活保障プラン
福祉サポートプロジェクト
ライフコンフォートプラン
社会的支援プログラム
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