なぜ生活保護費は過払いされるのか?(現役担当者が考察)
1.生活保護費の過払いが話題
昨今、生活保護費の過払いがニュースを賑わせています。
こんなニュースが流れるたび、「これだから行政は〜」みたいなコメントがなされているので、ここはいったん、担当者目線でなぜ生活保護費が過払いされるのかを考察しようと思います。
ちなみに、過払いとなった保護費は原則返していただくことになります。いわゆる返還金です。返還金のことは以下の記事をどうぞ。
2.生活保護で過払いが出るワケ
(1)担当者の事務能力が低い
非常に失礼なことを申し上げますけど、担当者(要はケースワーカー)の事務処理能力はかなり低い傾向にあります。
私もまだまだ経験が浅く、事務処理能力も高くないですが、そんな私から見ても、処理が遅い・処理がザツ・処理漏れがある・添付資料が適当という事務処理を頻繁に目にします。実働年数10年を超えていても、「支出負担行為って何ですか?」みたいな方が少なからずおられます。
とはいえ、かれらは福祉職(要は専門職)で採用されている場合が多く、現場での支援活動を主としておられますので、そんな方々に高度な事務処理(事務職の仕事)まで求めるのはいささか求めすぎだとは思います。だからこそ、私のような事務系出身の職員が一定数配置されているのでしょうけど。一般事務職はいらないとか言ってはいけない…。
なんか、処理処理言ってると、ムダ毛処理みたいですね。
(2)事務量多過ぎ
担当者の事務処理能力(質)は置いておいて、シンプルに事務量が多すぎます。
社会福祉法では、ケースワーカーの配置について、市では80世帯に1人、郡では65世帯に1人が標準だと定められています。これだけでもかなり多いような気がしますけど、実際は100世帯以上を1人で抱えていることもザラです。
各種支援員や専門員がサポートしているとはいえ、シンプルに抱えすぎのような気がします。学校の先生でも1クラス40人くらいでしょう。単純計算で2~3クラスを1人で担任しているような状態。
そして、その世帯ごとにケース記録を書いたり、保護費の計算をしたり、訪問したりしているわけですから、1件1件にかけられる時間はそう多くないのだと思います。
(3)他法の活用が複雑過ぎ
生活保護制度は、最後のセーフティネットたる位置づけですので、活用ができるものは活用してもらわないといけません。
で、今さらなんですけど、行政の制度ってややこし過ぎませんか?税金、障害者福祉、年金、介護保険、児童手当、公営住宅などなど、、、、。
どの制度がどの制度よりも優先されて、どの制度がどの制度によって減免されたり加算されたりするのか、、、みたいなのが全然わからない。
たぶん、その制度一筋で何年もやり続けてようやくわかるレベル。そんな意味のわからない制度をパズルのように組み合わせていったら、そら計算ミスも起こりますわな。
(4)生活保護担当はラビリンス
ということで、わけもわからないまま、日々膨大な事務をこなさなければならない生活保護担当は、ある種ラビリンスのなかで迷っているような状態。
こんなイメージでしょうか。地獄です。
※画像生成AIを使いたいだけ
3.ぶっちゃけた話…
生活保護関係の部署に1年半ほど身を置いていると、扶助費の算定誤り、ぶっちゃけ見たことあります。1件や2件ではない程度には…。
まぁ人間がやることなので、ミスが出るのは仕方ないことなのですけど、誰も幸せにならないので無いに越したことはありません。ただ、生活保護を取り巻く制度の煩雑さや、そこに携わる人数や能力を考えると、ミスが発生しやすい状況なのは間違いありません。
もっとシンプルな制度設計にする、あるいは、事務系の配置を増やすなどしない限り、今後も生活保護費の過払いは全国で発生し続けると思っています。皆さん、覚悟しておきましょう。