女性特有の内臓との付き合いについて⑥
紹介状を書いてもらい、予約した総合病院は、10年前卵巣嚢腫の切除でお世話になったのと同じ病院でした。症状と経緯を説明し診察を受けて、効果が曖昧なホルモン治療を続けるか、この際切り取って終わりにしてしまうか、の選択をする前に、治験の案内もありました。
治験薬はレルミナに近いホルモン治療薬のようだったけれど、効果はある程度わかっていて、承認前のデータ集めであることなどが説明されました。
また、説明の中には治験の期間や、期間中の行動や、検査義務なども説明されましたが、治験期間のはじめに「なにもしない3ヶ月」(つまりまた血祭りの3ヶ月を経過しなければ!)を設けなければならず、またプラセボグループに入ってしまう可能性もありました。
現時点の私の「すぐにもこの症状どうにかしてほしい。なにかするならその結果としてQOLを上げたい」という要望には、アンマッチだったので、お断りすることに。
治験の説明を聞いたことで、より「どうしたいのか」「どんな状態を希望するのか」が明確になりました。
私がいまよりもう10歳くらい若かったら、治験で1年間の「改善するかも?しないかも?」の期間を挟んでいたかもしれないけれど、もうすでに10年近く毎月のつらい生理期間を耐え、3年ほどホルモン薬による軽減を試してきたうえで閉経も近い年令になったいま、いつ終わるかわからない閉経をあれこれ手を変え品を変えて今か今かと待ちながら逃げ切りを図るよりも、この不良債権のような臓器をとっとと取り除いてしまいたい、と思うようになっていました。
そして、それが不良債権である以上、どうせ決断するなら早いほうが「得」な気がしたし、もはや私の心はほぼ決まっていたけれど、それでもなお積極的に手術をすすめてはいない医師目線でのメリットとデメリットを知りたくなりました。
改めて手術で子宮摘出を選択することのメリット・デメリットを担当医に確認してみると、次のような回答でした。
【デメリット】
手術の切り口の痛み。
費用。
1週間程度仕事を休む必要があること。
臓器をとってしまうことへの心の負担。
結果、妊娠を望めなくなること。
【メリット】
症状改善の切れ味の良さ。
デメリットの痛みについては、10年前の卵巣嚢腫の手術でだいたい想像できる範囲だったし、入院に手厚い医療保険に切り替えていたので費用についてもそれほど心配はない。
仕事を休むこともありがたいことにそれほどハードルは高くなく、50を目前に子を持つ将来も全く想定していないので子宮が彼女本来の仕事をしないうちにとってしまうことにセンチメンタルもあまりありませんでした。
子宮だからどうこうという発想はなく、なんというか、腫れた盲腸は切除しましょ、に近い感覚。
メリットについては、担当医師の言った「切れ味」という表現が気に入りました。たしかに症状の元をとってしまえば、当然今の悩みはスパッときれいに無くなります。それは、私が3年通院しながら望んでいた状態にほかなりません。
「その選択をするのであれば、それは尊重します。」
と担当医師は言いました。
「尊重する」ということは、いいかえれば「絶対必要ではないけど、そうしたいならできるし、そこはお好きにどうぞ」とも聞こえたけれど、多くの人はすすめられるまで自分で選んだりはしないのかもな、と考えました。
私の状態はもしかすると、とってしまうほどではないのかもしれない。
年齢も年齢だし「いまさら」なのかもしれない。
けれど、今からでもいい「切れ味のいい改善」が欲しくなっていました。
そして、その日のうちに手術の日程を決め、術前検査の日程を決め、手術までの期間飲む鉄剤を処方してもらい帰宅しました。