【展覧会レポート】ムロツヨシさんとたどる謎と不思議の世界「デ・キリコ展」
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まるで夢の中のような、どこか幻想的にも思える広場や部屋。人間の代わりのように存在する顔のない人形たち。見覚えのあるような、ないような…そんな不思議な世界を感じることができる展覧会が、上野・東京都美術館で開催中です。
本展は、20世紀初頭から活躍し、シュルレアリストをはじめ多くの芸術家に衝撃を与えたジョルジョ・デ・キリコの大回顧展。100点以上もの作品が集まります。90歳で亡くなる直前まで創作を続けたデ・キリコの、彼が作り上げた「謎」あふれる世界へ。さあ旅立ちましょう!
ーデ・キリコの「謎」と不思議の世界
デ・キリコの代名詞ともいえるのが、「形而上絵画」とよばれる作品です。
1910年のこと。デ・キリコはフィレンツェの街の見慣れた広場で、「あらゆるものを初めて見ているかのような不思議な感覚」に陥ったそうです。その奇妙な体験をきっかけとして生まれたのが、形而上絵画でした。
不自然な遠近法で描かれた塔や、長く伸びる建物や彫像の影。箱や地図、ビスケットなど、一見関係のないオブジェが無造作に配置された部屋。街中のような場所にたたずむ表情のないマヌカン(マネキン)。
日常の風景のように思えても、どこか異質な感じがする。現実のものを描いているのに、その組み合わせや配置によって非現実的なように感じる。
デ・キリコは、このような感覚を「謎」ととらえ、愛したのですね。描き続けることで、この不思議な世界をかたちづくっていったようです。
そんな作品を見ながら、会場を歩いていると…周りには連なるアーチや窓、不思議な形の壁が。これらは展示されている作品の中にもときおり見られるもの。
なんだかそのまま、デ・キリコの描く世界に入り込んでいってしまうような感覚がしてきます。
アーチや窓を通して見える景色にも、何か意味があるような…。
ーデ・キリコの探究をたどる
デ・キリコは、古典主義的な技法や主題に回帰したり、それまでの形而上絵画の再制作を行ったりと、約70年の創作活動の中で様々な探究を続け、スタイルを進化させていきました。
その変遷をたどれるのも、世界各地から100点以上の作品が集まった本展だからこそ。
本展では、デ・キリコが続けたその探究に合わせるように、全5章と3つのトピックで構成されています。彼の描く世界がどのように変わっていったのか、意識して作品を見てみるのも楽しいかもしれません。
また、会場では絵画以外にもデ・キリコが手掛けた彫刻や挿絵、舞台衣装も展示されています。
実際にマヌカンの彫刻を見て驚いたのは、まるで描かれているようにつくられていること。そのフォルムや陰影の付き方など、絵画の中からそのまま出てきたよう。
「美しい彫刻は、常に絵画的なのである」と語っていたそうですが、その言葉の意味を少し理解できたような気がしました。
デ・キリコは、彫刻や舞台についても特別な思いを持っていたようです。音声ガイド内でも解説がありますので、ぜひ聞いてみてください!
ームロツヨシさんが案内するデ・キリコの世界
音声ガイドのナビゲーターを務めるのは、役者のムロツヨシさん。
ドラマや映画、舞台で個性ある演技が魅力のムロさんと、デ・キリコの相性はばっちり。デ・キリコ自身の言葉を交えながら、「謎」があふれる唯一無二の世界を案内してくれます。
公式サイトでムロさんのインタビューや動画メッセージもご覧いただけますよ。
あわせて、本展の学術協力を担当された金井直先生の特別解説も収録。
謎と不思議の世界って…いったい何だろう?という方も、デ・キリコについてもっと知りたい!という方も、展示の楽しさが増すこと間違いなしの内容なので、音声ガイドをぜひご利用くださいね。
本展は、東京都美術館にて2024年8月29日まで開催中。東京展終了後には、神戸へも巡回します。
デ・キリコの謎と不思議の世界で、皆様をお待ちしております!
(サイトウ)
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