「話し合い」を学び直す 〜納得解の導き方〜
仕事で毎日のようにしている「ミーティング」。
それは、情報共有の場であったり、あるテーマについて議論する場だったりするわけですが、「ミーティングのやり方」って誰に教わるわけでもなく、社会人になると同時にぬるっと経験してきたような気が…
私は社会人歴15年ですが、最初の会社はミーティングらしいミーティングはほぼなかったので、「ミーティング歴」としては実質9年くらい?
9年間、ほぼ毎日ミーティングしてきました。
それでも、「話し合い」って難しい。
そう思って読んでみた本が『話し合いの作法』です。
図書館で何気なく借りて読んだのですが、良すぎて結局購入してしまいました。
(今見たら Kindle Unlimited になっていたので、Unlimited 契約している人は無料で読めちゃう…!)
以下、特に学びになったポイントをまとめます。
日本には「残念な話し合い」が蔓延している
著者曰く、日本の企業や教育の現場では、話し合いが「機能不全」に陥っているとしています。
なぜかというと、
話し合いには作法があり、日常の「コミュニケーション」とは全く異なるものである
にも関わらず、その作法についてどこでも習わないまま社会に出て、実践を余儀なくされる状況だから
まさにその通り…
本著ではその「話し合い」を適切に行うための作法が体系的に紹介されています。
話し合い=対話+決断
では、「話し合い」とはいったい何なのか。
本著ではそれを「対話+決断のプロセス」と表現しています。
対話
お互いの意見のズレや違いを表出させ、認識し合うコミュニケーション
結論をただちに出すのではなく、まずは相互の「違い」と「共通点」を理解するフェーズ
決断(議論)
対話を重ね、最終的に「決める」こと
決断するためには、AとB、どちらの意見が優れているかを理性的に比較検討する「議論」が必要
理想的なプロセス
まず「対話」のフェーズを経てお互いの意見の違いを表出させ、分かり合える部分、分かり合えない部分を探っていく
対話が進むと意見の違いの量が徐々に減っていき、共通認識が増えていく
こうして対話量が徐々に減っていった段階で、「決断」するフェーズに移る
そしてこのプロセスの実践において重要なことは、以下2点をメンバーが共有し意識し続けること、としています。
今、「対話」と「決断」のどちらのフェーズで、話し合いをしているのか
今日は「対話」だけで終わるのか、それとも「決断」まで行くのか
対話と決断、あまり意識せずに話し合いをすることが多かったので、この点は今後心がけたいと思いました。
対話の作法
特に日本人は、「対話」することを避け、空気を読む、忖度する、察するコミュニケーションに慣れているので、「対話」に馴染みがないことが多い、とのこと(私もそうかも…)。
そもそも対話とは日常のコミュニケーションとは全く異なる行為である、ということを認識した上で、対話の作法として特に意識したいと思ったのは以下3点です。
1|対話の目的を明確にすること
対話に参加するメンバーそれぞれに対話を自分ごと化してもらうため、対話の目的を明確にします。
なぜ、このテーマで対話するのか?
なぜ、この忙しい時に、今、対話するのか?
なぜ、他ならぬ私たちが、対話しなくてはならないのか?
対話の先に、どんなメリットが考えられるのか?
2|フォーカスされた問いを設定すること
「はい、じゃあ何でもいいので話しましょう」では良い対話は生まれないので、ファシリテーターが適切な問いを設定します。
「べき論」の応酬にならないような問いを設定する
「対話」とは価値観の擦り合わせなので、「自分の価値観」が出てくるような問いを設定する
3|全員に発言してもらうこと
ミーティングでよくあるのが、「特定の人ばかり話している」状況ではないでしょうか…
「対話」においては、その場に参加している全員が発言することを目指します。
沈黙もまた「声」である
沈黙している人にはタイミングを見て発言を促す
特にリーダー的な立場にある人が気を付けるべきこと
対話の途中で発言を「評価」しないこと(「対話」は良い悪いを判断する場ではないから)
人は年をとると話が長くなるので、自分ではなく他のメンバーに話してもらうことを意識する
決断の作法
対話ができたらOK、ではなく、話し合いの結果、何をするかを決め、行動しなければ成果には繋がりません。
成果を出すには「決断」と「実践」が必要です。
「決断」フェーズにおいてやるべきことは、「対話」フェーズにて表出したA案・B案を全員が見ているテーブルの上に広げ、それぞれのメリット・デメリットを皆で話し合うこと。つまり「議論」です。
その上で、どの案が「私たち」にとって最適なのか、「決断」を行います。
筆者は、『「決める」というのは本当に大変なこと』とした上で、「決め方」について以下のように述べています。
では「納得解」を生み出すために必要なことは何なのか?
ここで重要なのはその「決め方」で、本著では「決断」について5つの方法が紹介されています。
どのように決めるか|5つの決め方
全員で合意する(満場一致)
多数決
多段階での多数決
スコアで決める
評価で決める
特に学校教育などの場でやりがちなのは「多数決」ですが、安易に多数決に逃げてはいけない、というのが著者の主張です。
多数決は決断方法としては最も簡単ですが、参加者の「納得」につながりにくいため、その後の「実践」がおざなりになる可能性が高いためです。
「決断」の作法において私が目から鱗だったのは、『「決め方」自体も皆で決める』ということ。
「どのように決めるのか」を合意した上で決断し、決まった内容については全員が責任をもって実践する。
それが正しい「話し合い」なんですねー。
まとめ
「話し合い」とはそもそも「かったるい行為」。
それでも、私たちには「話し合い」が必要だ
実生活には「正解」がない、だからこそ「話し合い」が必要であり、正しく話し合うための「作法」が必要である、ということをこの本を読んで学びました。
「話し合い」って大変だ…!
著者も、『「対話」なんていうのはそもそも「かったるい行為」』と述べています。
なぜならそれは、答えのない問いに向き合うプロセスであり、他者との間に意見の食い違いなども起こるし、それを丁寧に咀嚼していく面倒臭い手続きだからです。
だけども、特に現在のようなVUCAな時代、多様性の時代にこそ、それが必要とされている、とも述べています。
正解のないものに向き合うことは実際しんどい行為です。
でも、この時代だからこそ、それが必要とされている。そこにはとても共感しました。
未だ見ぬ「納得解」を目指して、「話し合いの作法」を実践していきたいと思います。
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