【18推CD】文豪達のカフネ 感想
(ワクチンの高熱に浮かされながら聴いていたのでちょっと理解が曖昧かもしれません、すみません!気付いた点は随時修正します)
文豪達のカフネ 第一巻 綾織武朗
自分の理想を追求したい、でも実家の力による不自由のない暮らしは手放したくない。
そんなジレンマを抱える自虐と自尊心のバランスが、文学部生あるあるって感じで可愛かった!
ヒロインも現実の苦しみから逃れたいだけじゃなくて、彼の思想を理解していると同時に人生に不可欠ではない「物語」(役に立たないかもしれないけれども美しいもの、善きもの)を愛しているのだから、最期まで詩的に彩られた”私たちのストーリー”の中でエデンに発つ結末を選ぶと決意して彼のところに来たんだよね。
ラストは心中。
実家の別荘に逃げたのに親に啖呵切ってこれからどうするの?と一瞬思ったんだけど、そもそも「これから」なんてこの世にはないって最初からわかってたんだよなあ。
二人で生きていく地上の道を切り開くより、エデンに旅立つことを選んだ同士。
生活より生存より大切なものがあるのが芸術家(小説家もその一部)だと思うので、その感覚はすんなりのみ込めた。
願わくば彼らが物語を愛した証に、エデンに発つ前の気持ちを二人の「言葉」にして遺してほしかったな。
ああでも、最期って決めた一夜だからこそ、言葉を手放して肉体を燃やし尽くすってのが最高だったのかもなあ。
文豪達のカフネ 第二巻 園原藤村
「それって本当に●●?」
・姪ちゃんの病気って本当にあった?
再会初日、咳が酷くなる病気(?)が進行しているとわかってる子の前であんなにガンガン煙草吸う?(煙草中毒なのかと思ったらその後は吸ってない?のもよくわからない)
疲労がポンの💉前に飲ませたという医者の薬って「何」?
・姪の父親は本当に園原おじさんに彼女を託すことを了承してた?
そもそも持病があるっていったら引き取ってもらえないから病気は隠してた(か、そもそも嘘だった)と思うけど、隠してたならそれなりのお金を出す人がいたんだよね。小説家の方が大金を出せるってありうる?
小説で儲かっているというわけではない=実家に資産があるなら、娘を売る前に実家を頼るのでは?
園原おじさんを出禁にする判断力はあるんだから、もし万が一彼に託さざるを得ない状況になったらもっと段階を踏むはず。だから、電話する?はハッタリだと思う
↓
病気は本当ではない(か、極めて軽度)
もちろん姪の父親は了承してない
と思うんだけど、だったらなんで彼があんな強硬策に出たのかよくわからないんだよね。それこそ『新生』のように「老獪な偽善者」として近づいたら彼女の方が惚れるストーリーに誘導できたのでは?
彼の書いた小説にヒントがあるんだと思うんだけど、内容が出てこないからわからないよー
文豪達のカフネ 第三巻 上東野独歩
・唯一無二の吐血プレイ
・彼の二律背反を理解するには、愛読書『欺かざるの記』だけじゃなく『或る女』(独歩の最初の妻をモデルにした有島武郎の本)も必要なんじゃないかと思う
感想メモ
・清純さを求めながら、淫らさを求めるのはなぜか
「淫らな処女」とという意図はわかるけどスカ(*も尿も飲…も)は個人的にかなりきつかった…乙女向けとは……?
・ヒロインには無知で無垢であってほしい・尊敬してほしいのに、自分の醜い感情を序盤から明かしてしまうのはなぜか
「わかってほしい」からもう一層ある気がする
・許してほしいのに、罰されたい?
・母/子どもだった自分→見捨てた/見捨てられた だとしたら、上東野はかつての自分ではなく母の側
その気になればいつでもヒロインを見捨てることができる、行動できる側・選択肢を持つ側であることをあれだけ誇示しておいて意識が「見捨てないで」の側にあり続けるのはなぜ?
事実としてどうあろうとも、女は心変わりひとつで離れると思っているから?
・自分の経験から結婚も親子の絆も恋ひとつすれば全くの無意味だと思い知っている(逆に言えば、恋は神との契約も血も超える)と思い知ったはずなのに、なぜ清らかな乙女と教会で誓いを立てて結婚することを夢見たのか
・病める時も、健やかなる時も
純粋に親を信じていた「健やかなる時」に捨てられた人が、「病める時」にそれを誓う意味
・神の前に誓うのに必要なのは清らかな生贄だったのかと思いきや、清らかな乙女を踏みにじる自分を神は止められない→生きている人間が全てだというという叫びなのか だとするとやっぱり神じゃなくて母親が世界の理だったのかな
・残り僅かな命であるという焦りがあるのはまあわかるんだけど、一緒に死なない理由は?「ほら、女は見捨てていくだろう」的な自分の絶望を再演する自傷行為的な…?心中すると思ったから予想外すぎて…いやなんで……?
・吐血プレイはマジですごかった、寝っ転がって聞いてたけど思わず身を起こすくらい
「愛読書」のこと
・私は『欺かざるの記』は未読、『或る女』は読んだのが大昔すぎて記憶が曖昧なのだけど、女の性的な魅力に強烈に惹かれつつ嫌悪するってまさにそのあたりのテーマだと思うんだわ カフネ1の綾織くん(有島武郎モチーフ)はそんな話全然なかったけども…
・独歩の最初の妻は逃走に成功しているけど、『欺かざるの記』では逃げられた側の心情についてどう書いてたんだろうなあ(全然そんな話出てこなかったらごめんなさい)