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レオナルド・ダ・ヴィンチ作『ウィトルウィウス的人体図』がオフィスに出現!黒板アートプロジェクト#2

※過去記事のアップです(2019年11月30日)

アクセンチュア・イノベーション・ハブ 東京(以下AIT)の8F、カフェ向かいのインターナルスペースに黒板アートを制作しました。2018年、会議室MUGENの黒板壁に作成した黒板アートの第二弾になります。今回模写したのは、イタリア盛期ルネサンスを代表する画家の一人、レオナルド・ダ・ヴィンチ作『ウィトルウィウス的人体図』です。芸術部として本作品を模写対象として選んだ背景と、制作の様子について、レポートします。

■ ダ・ヴィンチ作『ウィトルウィウス的人体図』に込めた意味

今回ダ・ヴィンチの作品を選定した最大の理由は、数学、天文学、建築学、音楽等様々な領域への飽くなき探求心を持ち続けた彼の姿は、常にイノベーションを求め既存に対する破壊と創造を目指すアクセンチュアのコンセプトに重なると考えたからです。
ダ・ヴィンチの作品の中でも『ウィトルウィウス的人体図』は、医学のシンボルとして現在でも親しまれている有名な作品です。本作品は、古代ローマ時代の建築家ウィトルウィウスの『建築について』における記述を元に描かれました。『建築について』では、人体は宇宙の中心に従って均整がとれており、建築もまた同様に調和がとれているべきだと述べられています。ダ・ヴィンチもまた、人体の機能は宇宙の動きと関連していると信じていました。彼の思想は、ルネサンス期の芸術と科学の融和を示しています。
『ウィトルウィウス的人体図』はそうした彼のイノベイティブな思想を代表する作品であり、昨年2019年はダ・ヴィンチの没後500周年のアニバーサリー・イヤーであったこともあって、アートや科学等との融合により新しいビジネスを創出する場であるAITにふさわしいと考え、題材としました。

ウィトルウィウス的人体図 "Vitruvian Man" (1487)

■ 制作の様子

今回、黒板アートを手掛けてくださったアーティストは以下の方々です。
◆東京藝術大学 工芸科 在籍 岩津 光洋さん
◆東京藝術大学 絵画科 油画専攻科在籍 中津 明優音さん
◆アクセンチュア社員 中島 雅智さん 
※各アーティストのプロフィールは文末参照

今回も一日で巨大な黒板アートを制作していただきました。制作の様子をみていきましょう。

1.制作前の打ち合わせ

今回の黒板アートは文字部分を抜いて、約2m四方の巨大な作品ですが、初めにアーティストの皆様が手渡されたのは、実は縦約15cm四方のパワーポイントの画像でした。打ち合わせは、これをいかに拡大するかについて議論を重ねることから始まりました。議論の結果、黒板の描画範囲を4分割し、各人の担当範囲を決め、同様に分割したパワーポイントの画像と照らし合わせながら描くことになりました。画像の拡大描写には、プロジェクターで画像を投射して線をなぞることが多いといいますが、今回は機材の都合もあり、アナログ手法で拡大していただきました。昨年のエッシャーの際も同様の手法で拡大していただきましたが、限られた範囲の中でアーティストの方の創造力と技術を結集し、鮮やかに拡大していく様子には毎回感嘆します。

制作前に枠を取っている様子

2.構図の写し(下書き)の作成

1.で決めた担当に従い、構図の写しを行っていきます。この作業は、仕上がりのバランスを決めるうえで重要な作業です。今回の図はダ・ヴィンチによって人体のバランスを示すための円や正方形が描かれているため、それらをベースに構図が崩れることはありませんが、コンパス等を使用せずに、正確な円や正方形を描くのは簡単な作業ではありません。水平計等利用できる道具を活用し、正確な線を描いていきます。
次に、色の濃淡を表現するベース作りのため描画範囲全体をチョークで塗り、中央の人体図もこの時点で輪郭を描いていきます。巨大な作品のため、3名で協力しつつ体を張って制作を行う様子が伺えます。

全体像の構図を描いていく
32のパーツに分割したパワーポイントの画像と照らし合わせながら、黒板のサイズに拡大して制作を進めていく

3.詳細な描きこみから仕上げへ

絵の印象を決める人体図の表情、左右対称性が重要となる体つきについては、統一性を保つため最初の4分割の担当範囲を超えて、一名ずつ担当しました。詳細な描き込みを行う中で、全体のバランスを見失うこともあり、何回も修正を行います。
エッシャーの作品と大きく異なり、今回は人物像がメインです。白のチョーク一本で、原画の特徴を明確に捉え、黒板に人体図の表情が描かれていく様子は大変興味深かったです。細かな描写は、消しゴムや雑巾、綿棒など身近な道具を使用し、工夫しつつ描かれたものです。
絵の横に書かれた文字は『ウィトルウィウス的人体図』の元となった、ウィトルウィウスの『建築について』より第3章第3節の一部であり、人体と宇宙の調和、そして建築における調和を唱えている部分になります。

人体図の全体像がはっきりと認識できるようになる
人体図に”骨太さ”が描かれていく
完成までもう一歩!

4.完成!

最後に、全員で距離を取って眺めつつ、時間が許す限り詳細を整え、黒板アートが完成しました!
3名のアーティストが制作に費やした時間は、休憩を挟みつつ10時から20時までの10時間。AITに寄られた際は、黒板アート第一弾のエッシャーの作品とともに、アーティストたちの努力が詰まった、第二弾の本作品もぜひ見ていただきたいと思います。
そして、本作品がAITで働く社員、AITを訪れる人々にとって、何か「新しいもの」を創造する上での刺激の一端になってくれるよう願います!

完成作品!
作品の下には、アーティストのサインが入る
オフィスの中に出現したウィトルウィウス的人体図


【アーティスト プロフィール】

左:中津 明優音 中央:中島 雅智 右:岩津 光洋

岩津 光洋
東京藝術大学 工芸科 在籍。金属を溶かし、作品制作を行う鋳金研究室に所属。
チャンネル登録者数2000の駆け出しの作家兼YouTuber。
少年時代はバスケに熱中し、美術を志したのは18歳。リアリティ、デッサン、恐竜をこよなく愛す。
錫やブロンズでリアリティを求めた作品を中心に制作している他、原型制作も行う。

中津 明優音
1999年 大阪府生まれ。
大阪で絵画を学び、2018年に大阪市立工芸高校美術科を卒業、その後は2019年に東京藝術大学 絵画科油画専攻に入学。
空間性をテーマに立体・平面問わず様々なメディアを扱いつつ、絵画研究を行なっている。藝大ミュージカルエクスプレスにて舞台美術にも携わる。
受賞歴は、旺文社 全国学芸サイエンスコンクール 銀賞等。

中島 雅智 (アクセンチュア社員)
2015年芸術部に参加、アートとビジネスとの繋がりを探求する企画メンバーの一員。
エッシャーの絵に続くAITの黒板アート第二弾を企画、今回もアーティストとして参加。
手法に拘りはなく、どんなジャンルでも描くスタンスでアートを手掛ける。


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