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「CHEESE」という名称①(本研究会開催の意図②CHEESE#01-1b)

溢れかえる「発達障害」について…
もう少しつっこんでみたいと思います。

「発達障害」を理解するためのツールとして、
ウィングという学者さんの
「三つ組の障害」という概念があります。

アスペルガー症候群(現在は用いません)を含む
自閉症スペクトラム、いわゆる「発達障害」を、
「社会性」、「コミュニケーション」、「想像力」の障害とした
モデルです。

そしてこの3つからなる三角形の内部を
「発達障害」という一群と理解したときに、
「個性豊かな」発達障害を把握することができる。

視覚化されると「誰にとっても」分かりやすくなります。

三つ組

誰でもなれる「発達障害」

あくまで私見ですが、私は、
この「発達障害バブル」の発端が
このモデルにあるとみています。

とても分かりやすいモデルではありますが、
大きな2つの落とし穴があります。

まず、ひとつめ。
「社会性」、「コミュニケーション」、「想像力」
それぞれの能力の「高さ」「低さ」とは
どういうことでしょうか?

社会性に問題があれば、周囲と馴染めず、トラブルを起こす。
コミュニケーション能力の問題で話が回りくどくなる。
変化への対応が苦手で切り替えがうまくいかない。
いかにも「発達障害」らしい状態像でしょうか…。

でも、よく考えてください!
誰ともトラブルを起こさない人を知っていますか?
ニュアンスばかりの会話って浅く薄っぺらくないですか?
変化への対応が得意な人なんて少数じゃないですか?
「猫も杓子も発達障害」になってしまう理由はこれです。
みんな同じじゃないですか?

「状態像」のみの把握

ふたつめは、
「状態像」のみを捉えていることです。
この三角形の内側に、もとからいたのか、
何らかの理由で入ってしまったのかは分かりません。

前回書いたとおり、「発達障害」に思えても、
つまり、「社会性」や「コミュニケーション」、「想像力」に
難しさを抱えていても…

その原因(理由)が
「生まれながら」であれば「発達障害」
「生まれてから」であれば「愛着障害」です。
「愛着障害」との区別ができないのが2つめの落とし穴です。

本当に、まっとうに、「発達障害」だった場合にも、
「育てにくさ」という問題がありますが…
いずれにしても、その子、その人が、
どのように育ってきたか、
どのような人生を歩んできたか、
という視点は、心理学をかじった人間には
当たり前すぎる発想です。

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三次元化してみる

そこで、この「三つ組の障害」のモデルに
足りない「生育」要するに「時間軸」を足してみます。
三角形を三角柱に三次元化(立体化)します。

例えば、生まれてすぐに、お母さんの入院がありました、
離婚がありました、死別がありました、
悲しくも虐待を受けてしまいました、
虐待と言わないまでも、好ましくない育てられ方でした、
これらはすべて「愛着」に関わる問題です。

大きな病気をしました、事故に巻き込まれました…
クラスに馴染めませんでした、いじめの標的になりました…
これらも含めてすべて「トラウマ」です。

どこかの年齢で決定的なダメージを受けていたら、
小さなダメージでも蓄積し続けていれば、
その人の「こころの世界」は「環境」が主となって
つくられています。
これは「発達障害」とは別のものとして区別すべきです。

こうして、「三つ組の障害」に「時間軸」を足して
三次元にすると「発達障害」のモデルは「穴だらけ」になります。
まるでチーズのようになります。

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誰もかれも「発達障害」としてしまうまえに、
その子の、その人の
「過去」に、「育ち」に、「人生」に
焦点を当ててほしい。
そんな願いがこの「CHEESE」という名前には込められています。

続く…

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