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チャリダーアキの自転車世界旅行 オーストラリア一周編(11)


ハットリバー王国(2)


 入国手続きを終えた僕は、おばあさんと一緒に王国の郵便局へと向った。その郵便局では王国のはがきと切手が販売されていた。
 “はがき”は分かる。“はがき”は間違いなく使用できるはず。問題は“切手”だ。王国の“切手”が本当に使用できるのか心配だ。そして、郵便局前にあるポストはどうなっているのだろうか?オーストラリア連邦の郵便局員が砂に囲まれた辺境の地まで回収にくるとでもいうのだろうか?色々と気になり試してみたくなった僕は、この国のポストにはがきを投函してみようと思い、はがきと切手を購入したのだった。
 
 おばあさんは郵便局での買い物を終えた僕を、小さなチャペルへと案内してくれた。このチャペルは小さいながらもちゃんとしたもので、内部も美しいものだった。イミグレーションオフィス(入国管理局)、郵便局、チャペル、この3つが独立国に必要な施設であるのかも知れない。よく分からないけど、たぶん……。
 
「このチャペルはローマ法王にも認められている、ちゃんとしたチャペルなの。」
 
 おばあさんは、そう説明し、
 
「フッ、フッ、フッ。」
 
 と、ちょっと自嘲気味に笑うのだった。話した後に小さく笑う癖のある、かわいらしいおばあさんだ。
 
 次に案内されたお土産屋で、スッテカー、コースター、バッジ等を購入する。オーストラリアはお土産になるような物が何もない(個人の感想です)ので、ハットリバー王国の小物はとてもありがたかった。
不思議なことに、なぜかこの国の物価は安い。コーラ1缶1ドルなんて、西オーストラリアに入ってから初めて見たくらいなのだ。そういう訳で、結構な数のお土産を買っていて、あることに気が付いた。大抵のお土産は国王レナードと王女シャーリーの若かりし頃の写真であるのだが、何処かで見覚えのある女性なのだ。
 
 僕は、目の前のお土産屋のおばあさんに尋ねた。
 
「あなた、シャーリー?」
 
「はい。私がシャーリーです。フフフッ。」
 
 ある時は入国管理局の事務員、ある時は郵便局員、ある時はお土産屋のおばあさんとして、ハットリバー王国を丁寧に案内してくれていた女性こそ、王女シャーリーだったのであった。
 
(いやー、どうりで押し殺したような笑い声に品があると思ったぁ。初めから、たぶん高貴な人だろうと思っていたんだよねぇ。)
 
「レナードは何処?」
 
「パースの病院に行っているわ。フフフッ。」
 

国王 レナードの石像


 残念ながら国王には会えなかった。自転車で訪れるには大変な場所だったけれど、何も後悔は無い。一見の価値ある独立国であることに間違いないのだから。
 ところで、この国の医療制度や保険ってどうなっているのだろう?
 
 余談であるがハットリバー王国は、あるウィルスが世界中で猛威を振るった頃、解散(滅亡?)している。観光客の激減と国民の高齢化が原因だと言われている。
 

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