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チャリダーアキの自転車世界旅行 オーストラリア一周編(28)
フミさんと再会
Pt Augusta(ポートオーガスタ)の町までは、リオンと毎日顔を合わせながら楽しく走った。町を出る日、パッキングを早く済ませたリオンは、僕よりも30分早く出発した。
(どうせ、また会うでしょう。)
いつものようにそう思っていた。彼が何処を目指して旅をしているのかも知らないが、Adelaide(アデレード)くらいまでは顔を合わせるのだろうと漠然と感じていた。
結局、この日の朝が彼を見た最後の日となってしまった。20日間、毎日のように一緒にいたけれど、最後にろくな挨拶もできなかったことをちょっと残念に感じる。
昼前頃、反対車線の方から僕の名前を呼ぶ声が聞こえ、驚いて自転車を止めて振り返る。一目瞭然。大きなリヤカーの横にフミさんが立っていた。僕はボーッとしながら自転車を漕いでいたので、フミさんが声を掛けてくれなければ間違いなく通り過ぎてしまうところだった。
以前、パースの町に滞在中の時、僕とフミさんがもう一度すれ違う可能性があるかどうかを計算してみたことがあったのだが、どう考えても僕の方が先に進んでいて会うことは無いだろうと思っていた。ナラボーの向かい風が僕のスピードを大幅に遅らせたことと、フミさんが予想以上に頑張って歩いたのが重なり、予想外の再会となった。
正直に言って、
(オーストラリアでフミさんと再会することは、もう二度と無いだろう。)
と確信していたので、本当に驚いた。旅ならではの偶然。何度か書いてきたが、僕はこの種の偶然を敢えて必然であると言う。偶然にしてはあまりにもあり得ないことが、旅の最中にだけ度々起こる。これはもう必然としか言い様がない。
フミさんは1時間前にリオンに会っていて、僕がこの道を通ることは知っていたらしい。そう言えば、リオンにリヤカーを押してスチュワート・ハイウェイを縦断している日本人の話をしたことあったなぁ。彼が導いてくれた再会かな。
(リオンありがとう。)
僕とフミさんは3km先にあるキャラバンパークまで歩いた。そこは限りなく廃墟のような場所で受付に誰もいなかったが、飲み水とシャワーがありさえすればどんな場所でも充分だ。しばらくすると、お爺さんオーナーがやってきたので宿泊費の5ドルを払うと、僕達を畑に案内してくれてブロッコリーとセロリを下さった。僕達は夕食に、野菜盛り沢山のトムヤムクンと、ベーコンとセロリとブロッコリーの炒め物を作り、お互いの旅の話を延々と語り合った。
夕食後にフミさんがディジュリドゥを吹いていると、今日、たった今このキャラバンパークを購入したという、先程のオーナーとは別のお婆さんオーナーが来てお茶をご馳走して下さった。そのお礼にと、フミさんは折り紙を折り始める。我々の片言英語でのコミュニケーションには限度がある。こんな時、彼は折り紙を折る。一枚の紙から見事な天使を折り上げてオーナーにプレゼントする彼と、彼の折り紙を見て感心してしまった。時には大きな紙から見事な恐竜(トリケラトプス)を折る彼の姿を見て
(頭の中どうなってるの?)
と思うのだった。
それにしても、おばあさんオーナー、
(こんな場末のキャラバンパークを購入して大丈夫なのだろうか?)
心配してしまう。