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チャリダーアキの自転車世界旅行 オーストラリア一周編(27)


リオンとベジマイト
 
 ナラボー横断を終えた翌日も自転車で先へと進む。次の目的地はMelbourne(メルボルン)、そこからタスマニア島へ渡りたいと考えている。
 
 セドゥナから36km走った頃、後方からリオンが追いついてきた。10km先の休憩所で一緒に昼食を取る約束をすると、彼はいつものように猛スピードで去っていった。彼のスピードは速すぎるので10kmといえども別行動と決まっている。お互いにストレスにならないための暗黙の了解といったところであろうか。
 
 休憩所に辿り着くと、僕はいつものように食パンにピーナツバターを塗って食べ始める。リオンが荷物から取り出したのは食パンとチーズ、そして…、ベジマイトだ。
 ベジマイトだけはどうしても食べられない。今までに何度も食べたけれども、うんこだと思っている。
 
(彼はベジタリアンで旅行中に食べられる物が少ないから、しかたなく食しているに違いない。)
 
 暫くするとリオンが僕にベジマイトを食すことを勧めてきた。
 
(なんでなんだろう?なんでベジマイトを食べる人は周囲の人にベジマイトを勧めてくるのだろう?「自分はヘンテコな味の食べ物を食べられるんだぜ。」というアピールなのか?だとしたら、そんなアピール迷惑なだけなんだよなぁ。)
 
 訝しげに彼が勧めてきたパンとチーズとベジマイトをしばし眺める。手は伸びることはない。味は分かっているのだ。彼はしきりに、
 
「チーズとベジマイトを一緒に食べてみろ。」
 
と勧めてくる。ついに根負けして僕はパンにチーズを載せて、ちょっとだけベジマイトを塗り、恐る恐る口へと運んだ。
 
(あれ?以外と食べられる味だ。どうやらチーズには合うようだ。)
 
 ベジマイトを食べる僕を見てリオンは満足げだ。組み合わせによってベジマイトは食べることは可能であるということが分かり、ちょっと大人になった気分だ。だがしかし、自分でお金を出して買うことはきっと一生無いだろう。
 
 昼食後、再び別々に東に向かって走り始める。しかし、結局2人とも考えていることは同じで、116km走ったところにある休憩所で一緒に野宿。
 
 昨日買った醤油を使って野菜炒めでも作ろうと思う。
 


(ちょっとだけベジマイト入れたら美味いかもなぁ。)

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