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【会社にドローンがやってきた:21】 READY INSPIRE ONE
【前回のあらすじ】ドローンスクールで多くのことを学ぶ。次は包括申請。
(2023年4月)
さあ、次は包括申請だ。それはわかっている。
しかしドローンスクール受講終了の翌日、僕はとてもウズウズしていた。
「inspire1を飛ばしたい。」
inspire1のプロポはスクールで使用したphantom4とよく似ており、iPadで使うアプリも同じ。飛ばすなら操縦感覚が残っている今がベストだ。
しかしinspire1は、その風貌から発する威圧感がハンパではない。飛ばすには、許しを乞わねば。
その日の仕事がひと段落した後、事務所の奥から3ヶ月ぶりに漆黒のスーツケースを広間へと運び出す。
慎重に開けると、ほのかに漂うオイルと金属の匂いが、その存在感をさらに引き立てる。
そして「本体」と対峙した。今の僕は以前とは違う。扱い方は既に知っている。周辺の付属品は、昨日まで似たようなものを触っている。
「飛ばしてもよろしいでしょうか?」
「・・・オォ、エエヨ」
どこかで聞いたことのある一言だが、テレパシーでそう聞こえた気がした。「お許し」が出た。
これは本社の機体だ。社長の魂が乗り移っていても不思議ではない。丁重に扱わねば。
早速プロペラを取り付け、カメラを設置。すると前触れなく、胴体からモーターの音が。
こいつ・・・動くぞ!
ガンダム第1話が頭をよぎる。
そう、inspire1は収納形態・着陸形態・飛行形態に変形するのだ。
実にすばらしい。僕らの世代は「変形」に、めっぽう弱い。この瞬間、僕のお気に入りドローンランキングで、一気に首位に躍り出た。
周辺に障害物のない床は、オフィスの広間でもせいぜい横幅3m。いざinspire1のプロペラが回れば、離陸時の空間の猶予は左右に約1m。当然、屋内ではGPSは効かない。スクールの実技試験よりもはるかに慎重に、プロペラ始動。
「ブヴゥーン」という今までで一番の低音を発し、inspire1が宙に浮く。多少の調整は必要だが、ホバリングも安定している。
ほどなくして機体は自動で「飛行形態」に変形。純粋にカッコイイ。約10年前の機体とは思えないほど、新鮮な魅力に溢れている。
飛行は約1分で終了。とてもじゃないが、この場所では「浮上・降下」以外のことをする気は全く起きなかった。旋回でもしようものなら、あらゆる書類が行方不明になるのは明らかだ。
inspire1を無事に飛ばせたことは、大きな自信と収穫となった。次からは、もう怖がらなくていい。
包括申請の手続きはいつでも開始できるが、仕事でのドローン撮影の話はまだない。
時間に余裕がありそうなので、先にinspire1の機体登録をすることにした。いつ出番が来るとも限らない。仕事で使えるようにしておいて損はないはず。
inspire1は古い機体のため、機体登録に必要なリモートIDが付いていない。そのため、別途購入して「外付け」する必要がある。
本社に許可を得て購入し、申請書類にも記載。あとはいつもと同じだ。
3回目の機体登録も滞りなく完了。
次こそ包括申請だ。