一度も話したことのない親友の話。

「一度も話したことのない、親友がいます。」
記憶が確かなら、skyの広告に、こんなキャッチコピーがあったように思います。
キャッチコピーになるくらい、この世界ではきっと、珍しくはない光景。
けれど、言うまでもないこと。
お互いにとっては唯一の、かけがえのない関係です。

https://adventar.org/calendars/8533

このページはskyアドカレ2023参加記事です。


私は、sky関連ワードでパブサするのが好きだ。
「捨て地」みたいな、何気ないけど星の子しか使わないようなワードで検索すると、何気ないskyの日常ツイートが見られて楽しい。

……ん?

A:
チャット未開放の野良フレちゃんと遊んできた❤️捨て地探索旅!
ランタン助かった!ありがと〜! ここでいっても届かないけど💦

それは、知らないAさんという人の、本当に何気ないツイート。
そのツイートが私の目に止まったのは……

B:
フレンドさんと捨て地をあちこちお散歩しました。
チャット未開放なんですが、ランタンへの感謝がエモートから溢れてて笑いました。滅多に使わないけど買ってよかった。

「このツイート、なんかさっき見たな」
と思ったからだ。検索欄を遡ると、先ほど読み流したBさんのツイートが見つかった。これも、本当に何気ない、skyの日常ツイート。

・捨てられた地を探索
・チャット未開放
・ランタンを持ってきてもらった/持って行った
・投稿がほぼ同時刻

ん〜〜〜!!?!???

……ていうか……

・お互いのスクショにお互いの星の子

あれ〜〜〜〜〜!?!?!?!??!??



登場人物

A子@skyと日常さん
おそらく学生。フレンドが多く、sky内チャットも多用してわいわいするタイプの様子。
フォローフォロワー数二桁くらいの、skyと日常をつぶやく身内アカウント。
Bとフレンド。Bとチャットは未開放で、Twitterアカウントも知らない。

星の子Bさん
社会人らしき雰囲気。基本ソロプレイの様子。フレンドもチャット未開放の野良が中心っぽい。
ツイートは少なく、イラスト中心。skyのツイートも多くはない。日常は皆無。フォロワーが多め。
Aとフレンド。Aとチャットは未開放で、Twitterアカウントも知らない。

末広
筆者。ツイ廃。
AさんともBさんともフレンドじゃないしフォロワーでもない。誰? 何……?

以上のプロフィールはフェイクです。また、このエピソードそのものも、すべてがフェイクです。事実を元に、10割嘘で構成し直しています。例えば「捨て地でパブサしていた」ところから嘘です。ご承知おきください。その上で問題のある場合は削除しますのでご連絡ください。

Bさんのことはフォローしてしまった。いい絵だったから……。
Aさんのことは……身内同士のアカウントだ、急に知らんツイ廃がフォローしてきたら怖いだろう。そっとしておく。
というか、双方そっとしておけという話である。公開アカウント同士とはいえ、他人同士の関係を必要以上に覗きこむものではない。筆者は彼らの相互でもフレンドでも知り合いですらない。なんか……何? どういう立ち位置、これ?
まあでも、純粋に、Bさんのイラストとツイートの雰囲気が好きでフォローしただけだから……
Aさんとの関係が気になるとかじゃないから……

B:
昔から仲良しのチャット未開放フレンドさんとまた遊べた。フレンドの多い人なんだけど、最近しょっちゅう遊びにきてくれて嬉しい。

アッ!!Aさんの話してる!!!!
へえ……昔からの付き合いなんだ……。

他人の関係を必要以上に覗いたりしない──
その決意をよそに、記憶にはしっかりとAさんのIDが刻まれている。
ツイッター廃人は、ツイッターに関しては記憶力が跳ね上がるのだ。自分のn年前のツイートとかかなり的確に検索で掘り出せるからな。この記憶力他に使いたいな。
……さて。AさんのアカウントにID直入力で飛ぶ。

A:
野良フレちゃんのとこに最近押しかけがちだけど迷惑がられてないかな〜て思っちゃう💦
みんなもワープしてくれたのにごめんね! ありがと! また遊んでね!

あら〜〜お互いの話してるじゃないの迷惑だなんてむしろ喜ばれてるわよ自信持ちなさいッ!
Aさんのフォロワーさんたちも、理解ある様子でリプライしている。チャット未開放の子に気を使わせちゃうもんねーとか。別に気にしてないけど次は遊んでねーとか。仲のいい、けれど礼儀を忘れない間柄に、Aさんの人柄が滲み出る。仲間内でも人気者、中心的存在のようだ。
とてもいい関係だ。素敵なふたりに、こっそり癒されてしまった。

それからも、Bさんはときどき、Aさんの話をしていた。
BさんがAさんの話をするたび、私はつい、Aさんのアカウントを見てしまう。すると毎回、AさんもBさんの話をしていた。ほんとうに、毎回毎回、欠かさずだ。互いと遊ぶたびに、互いの話をしている。遊べて嬉しかった話をしている。お互いが見ていないのに、いや、だからこそかもしれない。素直に、会えて嬉しかったという感情を書き綴っている。

私が見てるんですけどね……!

誰?

彼らの書くそれは、私には素直な気持ちに思えた。楽しかったこと、それを書き綴りたいという素直な気持ち。相手と仲良くなるためとか、関係を維持するためとか、あるいは共通の知り合いへの仲良しアピールみたいな……そういった、ほかの意図を、持たない文章。持ちようがない文章。そういった意図が悪いものだと言いたいのではない。ただ、そういった意図が介在しないものを、心地よく思ってしまうのは自然なことではないだろうか。その、素直さ、そのものを。相手と関係のない場所で書き綴るからこその、素直な気持ちを。
よくないと思いつつ、彼らを覗き込んでしまう。公開アカウントのみなさんは、インターネットにはこういう怪物がいるということをよくよく承知しておいてください。全世界に向けて公開しているんだから、意外と見られてるよ。怖いね。
そんな感じで、ふたりを見守るようになった。ふたりはちょくちょく、お互いの話をしていた。

Aさん
いつもの野良フレちゃんが、エモートで「今はバグが起きててそのクエストは進められないみたいだから他のことしよう」って教えてくれた。チャット未開放だよ!? エモートうますぎ!

Bさん
チャット未開放のフレンドさんが、バグのあるクエストに何度も行こうとするので、バグが起きてるから他のことしようって誘ってみた。でもエモートだけだったし、うまく伝わったか不安。クエストの邪魔してるって思われてないといいな……

伝わってるよ〜!!!!!!!
びっくりするほど伝わってるよ。完全に伝わってるよ。
そんな複雑な意図を、エモートのみで、ひとつも違えることなく伝えられるものなのか。え。凄。伝える側もすごいし受け取る側もすごいな。以心伝心、文字通り言葉もなしに、こうして通じ合えるのか。
私にもチャット未開放で仲のいいフレンドはいるけれど、エモートで意思疎通するにしても単純なことばかりだ。複雑な要件があればチャットテーブルとか使ってしまいがちだ。チャットしたくない相手なら、伝えるのを諦めてしまったりとかする。誤解も怖いし。これはちょっと、真似できない。感心する以上に、感動した。
言葉もなしに、こうして通じ合える人たちがいるということ。伝えるためにも頑張って伝わりやすいよう工夫しただろうし、受け取るためにも込められた意図を頑張って考えただろう。伝えようと、受け取ろうと、いっぱいに手を伸ばしあう関係。諦めずに。すごい。すごいふたりだ。
ちょっと、呆然としてしまった。

その後、skyも色々と変化があった。イベント通貨の実装とか。私はキャンドル集めという目標がなくなってskyから離れ気味になった。嫌だったのではなく、単にアイテムをほぼ集め終えてるのでやることが減っちゃったのだ。ふたりも、ひょっとするとそうだったのかもしれない。ふたりがお互いの話を……skyの話をするのを、見かけることはしばらくなかった。
けど、ふたりの以心伝心ぶりは私の心に色濃く刻み込まれた。
所詮他人だ(本当にな)。いずれ彼らのことも忘れるのだろう。けど、忘れかけても、その感動だけは残るような気がした。ささやかな希望のように。
それは、ひととひとが言葉もなしに、お互いを想い合えるという、夢みたいな希望だ。

ふたりの話を見かけたのは、ずいぶん後になってからだ。

B:
久々にインが被ったので我慢できなくて、チャット未開放のフレンドさんのとこワープしてみたら、一緒に来てくれた。
フレンドさんたちと遊んでるとこって分かってたのに、悪いことしちゃったな……

A:
野良フレちゃん、大人数苦手っぽくてあちらからは滅多に来ないんだけど、今日は飛んできてくれた! 嬉しい! 最近会えてなかったから!

迷惑だなんてむしろ喜ばれてるわよッ!!!(2回目)
うーん。癒されるっていうか、もはや、苦しい。君と好きな人が百年続きますようにって感じだ。百年っていうか、お互いの望むかぎり、お互いの望む関係で在れますようにって感じだ。何者とても、彼らを引き裂かないでほしい。永遠はなく、彼らの関係が変わるとしても終わるとしても進むとしても、それが彼らが望んだもので、望んだかたちであってほしい。他人のくせに抱く感情がデカすぎる。デカすぎてもう一人で抱えきれないので記事にしました。すみません。

繰り返しますが、このエピソードは全てフェイクです。万一にでもこのページがAさんかBさんの目に留まり、「あれ? これ、私とあのフレンドの話……?」と思ってしまうのを防ぐためです。唯一無二の彼らの話を、「skyでは珍しくない」かたちになるように、フェイクで仕立て直しました。彼らが、望む関係のままであれるように。彼らの関係が変わる時は、彼らが望んだ時であるように。
一度も話したことのない、親友たちの話。skyではきっと、珍しくはない話。もしかしたら、さっきすれ違った二人組を。あるいは共通のフレンドの、あの子たちを。もしくは、あなたと、あのフレンドを。ひょんなことから見守り、彼らの幸せを祈るようになってしまった私のお話でした。ちゃんちゃん。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?