謙虚であること

パートナーが転職して2ヶ月が経った。
帰宅した彼のお弁当と水筒を洗うのが私の日課となっている。
その間、彼は私の背後をうろうろしながら、その日あった出来事を延々と話す。

彼は、会社の様々な人をよく観察している。
そして、その人の良いところを必ず1つは見つけて話してくれる。

パートナーは同じ業界で30年仕事をし、以前勤めていた会社では社会的にも認められる地位にいた。
大企業で出世街道まっしぐらの人だった。

今日、寝る前に彼がぽつりと言った。
「俺、自惚れてたのかもしれない。」

以前、上司と部下であった頃、彼はとても厳しいが正しい上司だった。
私にとって、いや、当時の所属部門では絶対的な存在だった。

彼の言うことは正しかった。
仕事で悩んだ時、間違えてしまった時、その業界と会社の正解に導いてくれた。
そのおかげで私は少しだけ大きな仕事を任せてもらえるようにもなった。

彼は、私の道標だった。
みんな、行き詰まると彼に相談し、その案件は必ずwin-winで着地した。

しかし、彼は転職した先で、以前の会社での立場など餮にも出さない。
いつも謙虚で、親子ほど歳の離れた若い社員のことも、「彼の細やかな気遣いは見習わないといけないと思ったよ。」などと言う。

謙虚であること。
経験も知識もあり、一度社会的な地位を持った人間が、こんなにも謙虚でいられるものかと、私はただただ尊敬する。

私も、彼のような人間で在りたい。
彼は昔も今も、私の道標に変わりはないということだ。


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