解き放つということ

晴れた日だった。
パートナーと私はその何ヶ月か前から家に閉じこもっていた。
仕事を辞め、逃げるようにして遠いところへ住まいを構えた。
しかし、以前その土地で仕事をしていたパートナーは誰かに会うことを極端に恐れ、私もパートナー以外の人間と会うことが恐ろしかったので、ずっと2人きりでひっそりと暮らしていた。

しあわせだった。

しかしある夜、私は大量の睡眠薬と抗不安薬を飲み、腕の大きな血管を思い切り切った。

ぼたぼたと血が流れるリビングの床を見ながら、涙が止まらなくなった。
そして薬が効いていき、意識が朦朧としていった。

どのくらいの時間が経ったのかは憶えていないが、私が寝室に来ないのでリビングに様子を見に来たパートナーが、血まみれで意識の無い私を見つけて救急車を呼んだ。

前後のことは憶えていない。

だが、この人を私から解放してあけないと、というどうしようもない焦燥感から、私は死ぬことを選んだ。

しばらくは真っ直ぐ歩けず、目眩と嘔気に苦しむ日々を送った。

私は、いつの日か、この人を私から解き放ってあげなければならないと思っている。

彼のより良き人生に、私は足枷にしかならない。
笑っていきていてほしい。

重い精神病の私と暮らした何年かのことは、どうか忘れてほしい。

私を、死なせてください。
どうか、お願いですから。

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