滋賀県最強の温泉宿:尾上温泉 旅館紅鮎
※タイトルを「関西最強」にするか迷ったが、あまりにも釣りタイトルっぽくなってしまうので控えめにした
はじめに:滋賀の魅力と唯一足りないもの
はじめに、滋賀県の魅力について布教したい。
// 琵琶湖の地理的魅力を端的に示したアスキーアート
琵琶湖
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田んぼ
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│平和堂│
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=====[ 駅 ]====
都道府県魅力度ランキングという(クソ)指標では毎年下位に甘んじる滋賀県だが、非常に魅力的な県である。
まず、滋賀といえばなんといっても琵琶湖である。琵琶湖の広大な水域では四季折々の自然美を堪能でき、春の桜や秋の紅葉と湖が織りなす景色はまさに絶景だ。
また、琵琶湖は古くから交通の要衝として栄え、周辺の町々は湖上輸送を支える港町として発展してきた。今でもその歴史的な街並みが数多く残り、まちあるきがとても楽しい。
そして、琵琶湖の豊かな湖魚資源を活かした独自の湖魚料理や、古くから続く漁業文化が今も根付いている。海なし県でありながら、滋賀県は多様な魚介類の「漁獲高」を誇る食の宝庫である。
滋賀の食文化の中で、とくに注目すべきは独自の発酵食文化だ。中でも鮒寿司は、湖魚であるニゴロブナを塩と米で漬け込み、独特の酸味と旨味を引き出す伝統的な保存食で、日本最古の寿司の形態とも言われる。
また、地元産の米や大豆を使用した味噌や醤油、さらには酒造りも非常に盛んであり、これらの発酵食品は長い年月をかけて育まれた深い味わいが自慢である。
酒文化についても国内トップクラスの充実度を誇り、日本酒はもちろん、ビール、ワイン、クラフトサケ、ウイスキーやラム、さらにはミードに至るまで、多様な選択肢が揃っている。
そんな優れまくり県の雄である滋賀県であるが、唯一欠けているものが温泉だ。環境省のデータによれば、温泉地の数や湧出量、浴場数などいずれの指標も全国最下位水準であり、温泉資源は貧弱と言わざるを得ない。
雄琴温泉は知られているものの、文化面はともかく泉質・湧出量について特筆すべき点には乏しい。
私は常々「滋賀によい温泉があれば最強なんだけどなあ…」と感じていた。
そしてついに、今年になって滋賀県で優れた温泉、そして優れた温泉宿を見つけることができた。それが旅館紅鮎である。
今年5月に宿泊し、非常に優れていたので7月にも再訪した。年明けに3度目の再訪をする予定である。
温泉:滋賀県最強の泉質
尾上温泉は琵琶湖畔に掘削自噴する冷泉であり、300L/minの豊富な湯量を近隣の旅館と紅鮎の2軒で利用しているようだ。
この温泉は、泉質名のつかない 温泉法上の温泉 である。
「温泉」として認められるための細かい条件は割愛するが、泉温が25℃以上あれば単純温泉の泉名がつくこともあり、むしろ泉質としては希少なものである。
尾上温泉は重炭酸そうだ:340mgの条件を満たしており、成分的にはナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉に近い。また、若干の鉄分も含むのも特徴だ。
紅鮎では加温循環の大浴場のほか、全部屋に源泉100%かけ流し&セルフ加温式の半露天風呂が設置されている。
まず、大浴場は循環と塩素消毒により温泉の個性が失われており、泉質面での魅力は乏しい。
もっとも、浴場からの景色はすばらしく清潔なサウナも完備されている。
なお、部屋露天も同様なのであるが、絶景であるがゆえに外からまる見えであり、その旨は紅鮎をおすすめできないかもしれない23の理由にも記載されている。
白眉は各部屋に備えられた半露天風呂だ。
蛇口からは21℃の冷泉が100%かけ流しで供給され、鉄分由来と思われる赤茶色の薄濁りと豊富な湯の花が特徴的だ。
そのまま入るには冷たすぎるように思えるが、追い焚き機能で自分好みの温度に加温できるのが素晴らしい。
一般に鉱泉を加温した湯は鮮度が鈍りがちだが、ここではその場で最低限度の加温を行うため新鮮なままだ。
湯はしっかりとした金気臭があり、強い泡付きも感じられる。
蛇口を最大までひねれば投入量も非常に多く、ドバドバのぬる湯を存分に楽しめる。
常時追い焚き、蛇口全開であれば湯温は29~30℃前後で均衡し、これは夏場の露天としてはベストの湯温だ。
冬場であっても、少し蛇口を絞って34℃程度に調整すれば最高だろう。
さらにありがたいことに、部屋のアメニティとしてひよこ温度計が設置されている。こちらで湯温を調整可能である。
宿としてもぬるゆが推奨されていて嬉しいかぎりだ。
(もっとも、ぬるゆと言っても39~40℃程度を想定しているようだが)
滞在:絶景を眺める湖畔リゾート
紅鮎は湖畔リゾートを謳う宿であり、全室温泉半露天風呂付で水準としてはハイクラスと言ってよい宿である。
内装のクオリティやホスピタリティも期待を裏切らないもので、ゆったりとした滞在を楽しめる。
客室は基本的にはおまかせだが、すべての部屋がレイクビューで琵琶湖に沈む夕陽を望むことができる。
和室、洋室それぞれに宿泊したが、いずれも快適な滞在ができた。
アメニティも充実しており、日系シティホテルと同程度の水準が整っている。また、バードウォッチングが推奨されており、ロビーや各部屋には望遠鏡が備え付けられている。
チェックインは14:00(送迎の場合は14:30)、チェックアウトは11:00と余裕のある設定なので、ゆっくりした滞在が可能だ。
食事:滋賀食材を堪能する食事
前述のとおり、滋賀といえば豊富な食文化が特長である。そして日本料理の本場である京都・大阪都市圏でもある。
ここ紅鮎でも、地元の食材を多数使った京風会席を楽しむことができる。
「発酵」という観点ではもう一歩踏み込みが欲しいところだが、万人受けが求められる旅館会席としてはよく工夫されているし、十分に満足できる内容だと思う。
夕食
5月はスタンダードプランに別注で鮎料理を追加し、7月は3段階のグレードの中間である「贅沢」会席を選択した。
その他にも「特選」グレードや近江牛づくしプラン、季節限定の鮎づくしプランなど、さまざまな選択肢が用意されている。
酒
地元長浜の銘酒 七本槍 を中心に地元の銘柄が複数取り揃えられており、利き酒セットも楽しめる。
またオリジナルラベルの焼酎や居酒屋メニューのような「カクテル」も豊富であり、選択肢に困ることはない。小ビールがあるのも嬉しい。
また、比較的手頃な価格でボトルワインも提供されている。
朝食
朝食は2回ともほぼ同様の内容だったが、こちらも質・量ともに十分に満足できるものである。
えび豆、赤こんにゃく煮など滋賀の郷土料理が味わえるのが嬉しい。
おわりに
紅鮎は古くよりの名宿であり、先代は名物女将として広く名が知られていたようだ。また、「湖畔リゾート」として、関西圏の旅行雑誌など各メディアで取り上げられることも珍しくはなかった。
しかしながら、これまでその泉質に着目される機会はあまりなかったのではないかと思う。
紅鮎は「泉質派」「ぬるゆ派」が大満足できる湯を満喫できる宿なので、ぜひ一度訪れてほしい。
私自身も、2025年最初の温泉宿としてこちらを選ぶ予定だ。
施設の情報
予約方法
主要OTAで予約可能。
一人泊可能なのは平日のみ。
私は大阪からのアクセスの良さを活かして金曜に宿泊することが多い。
予約プラン・料金
基本的には1泊2食付で、食事のグレードにより値段が変わる。
スタンダードでも充分だが、グレードアップの価値もあり。部屋を指定する場合は追加料金が必要。基本的にはランダムに割り当て。
1名1泊、スタンダートプランで\33,000~。
1名宿泊の割増料金は15~20%程度で良心的。
アクセス
JR高月駅から送迎あり。
ダイヤ改正で本数は減少したが、新快速が1時間に1本以上運行しており、関西圏からのアクセスは抜群。