特捜戦隊デカレンジャー Episode "n"「デート・クライシス」
宇宙警察地球署署長ドギー・クルーガーは多忙である。7年前の銀河連邦警察の宇宙刑事と協力して解決したマッドギャランの事件以降、地球で大きな事件こそ無かったものの、犯罪が無くなったわけではない。地球署のデカたちは日々犯罪と戦い続けている。そしてそれは署長であるドギーとて同じであり、寧ろそれを束ねる立場にあるため想像を絶する多忙さに日々追われている。
そんな彼に久しぶりの長期休暇が与えられた。初めは自分が穴を空けるわけにはいかないと拒んでいたが、副署長のテツたちデカレンジャーの面々の後押しもあり、ありがたく休暇を貰うことにした。しかし、彼にはもうひとつ休暇を取った理由があった。
「お待たせ、ドゥギー!」
地球署前で着慣れない黒いロングコートを身に纏いソワソワと待っていたドギーに向かって1人の女性が手を振りながらやってくる。白鳥スワンである。
「いやー新しいメカの開発が昨日の夜遅くまであって!目覚ましいっぱいかけたはずなんだけど、もう爆睡!」
「それは大変だな。俺も今来たところだ、気にすることはない」
スワンは息を切らしながら、ドギーと同じタイプの白いロングコートの裾で汗を拭う。スワンもドギーと同じくなかなか休暇を取らないため、半ば強制的にヌマ・O長官から「久しぶりに2人で羽を休めるといい」と休暇を与えられたのだった。
「それで?どうする?プランなんて全く考えてなかったんだけど」
「それがだな…いや、偶々だぞ…偶々最近ダイナ星の惑星にできた評判のいいレストランの予約が取れてな…もし良かったらそこにでも…」
それを聞いたスワンは目を輝かせ、食い気味に
「ダイナ星って予約の取れない人気レストランがいくつもある惑星じゃないの?ドゥギー凄いわね!!」
と答えた。ドギーはスワンの二つ返事に安心した表情を浮かべた。
「それじゃあ行こうか」
「でも待って。惑星が違うんじゃ宇宙船が必要でしょ?今シーズンだし宇宙旅行用の宇宙船なんて予約でいっぱいなんじゃない?」
スワンの疑問にドギーは頭を掻いた。
「そう、それについてなんだが…」
「おーい!!」
上から降ってくる大声に2人が向くと、ひとつの宇宙船が降りて来た。
「久しぶりだな、元気にしていたか?」
「ブンター!」
宇宙船から出て来たのは2人の旧友であるトート星人ブンターであった。
「まあ中でゆっくり話そう。とりあえず出発するぞ!」
ブンターはドギーたちを艦内へ案内し、宇宙船を出発させた。宇宙船は地球の大気圏を突破し、あっという間に宇宙空間へと飛び出した。
「なるほど、ブンターも休暇だったのね」
「そうだ。俺やお前らのような休暇を取りたがらない"仕事バカ"たちに長官は半強制で休暇を与えてるところなんだ」
ブンターはありがた迷惑かのように話した。
「まだまだしごいてやりたいクズ共は大勢いるんだがな。まあだがせっかく貰った機会だ、同じく休暇を与えられた奴らとちょっと遠くの店で温泉に行ってパーっと飲もうかという話になってな。そんでこいつもスワンと近くの星まで出かけるっていうんで通り道にある惑星だったから乗っけてやることにしたんだ」
「そうだったのね!助かるわ〜」
スワンは手を合わせてながら礼を言った。
「すまないな、ブンター。無理を言ってしまって」
「文字通り通りかかった船、というやつだ。気にするな!まあ上手く行ってよかったじゃないか!ドギーの野郎、レストランの予約なり当日のプランなり必死に考えてたんだぜ!俺にまで相談してくるぐらいだったからな!ガッハッハ!!」
「え、そうなの?」
スワンが目を丸くしてドギーの方を見る。
「よ、余計なことを言うなブンター!」
艦内は笑い声で包まれた。3人を乗せた宇宙船はあっという間に太陽系を後にして、目的地に迫っていた。
「なかなか早い宇宙船なのね」
「ああ、奮発してカスタマイズしたからな。最新型のワープドライブシステムも搭載してある。とはいえ地球に来るまでに数十回のワープをしたから流石にこれ以上するとオーバーヒートの可能性がある。直前まではこのまま運転して、最後にワープする」
「最新型とはいえワープする回数には限界があるんだな」
そう言ったドギーにスワンは答える。
「そうね、どれだけ高性能なワープドライブシステムでも100回以上連続して使用すれば限界が来てしまうわ」
「流石天才スワンだな」
ブンターは関心したように話す。そう話してる間に宇宙船はブンターが話していたワープポイントに到着し、ワープをした。
「見えたぞ、ダイナ星だ」
ダイナ星。別名「宇宙の台所」と言われ、腕利きの料理人たちが多種多様なレストランを経営するまさにグルメ群雄割拠の惑星である。3人が乗った宇宙船はダイナ星の宇宙船の停留所に降りた。
「明日の夜には迎えに来る!まあせいぜい水入らずの時間を楽しむんだな!」
「助かった!」
「ありがとう〜ブンターも楽しんで〜」
ブンターは手を振り、ダイナ星を後にした。
「ちょうどいい時間だ。予約してあるレストランに向かおう」
「ええ!」
スワンはドギーの腕に手を回した。ドギーは「恥ずかしい」と言いながらも振り払うことなく歩き出した。街のどこを見てもレストランばかりだ。2人は近況報告や部下の話をしていた。
「この前もホージーとジャスミンが行方不明の事件を…そういえばダイナ星でもここ最近行方不明の事件があるみたいだったな」
ドギーは難しい顔をし始めた。スワンは口を尖らせる。
「もう!せっかくの休みなんだから!」
「ハハ、そうだな…職業病、というやつだな」
2人が話しているうちに、少し街から離れたこぢんまりしたレストランに到着した。
「ここだ、最近人気らしいぞ…ん?」
レストランの入り口でスペシャルポリスと思われる2人組が誰かと話していた。
「そうですか…ありがとうございました。ニャガーさんもお気をつけて」
「そうですね…従業員にも伝えておきます」
スペシャルポリスの2人組はその場を離れようと振り返った時に、ドギーとスワンを見かけ、驚きながら敬礼して去っていった。先程ニャガーと呼ばれた猫型の宇宙人がドギーたちに声をかける。
「いらっしゃいませ。ひょっとしてお客様方もスペシャルポリスの…?」
「ええ、一応」
ドギーの返事を聞いたニャガーはなるほど、という表情をした。ドギーは改めてニャガーと話し始めた。
「何かあったんですか?」
「いえ、我々がというわけではないのですが、最近ここら辺で行方不明事件が起きているらしくて。事情聴取を兼ねて注意をしてくださいにいらっしゃったそうです」
先程話していた話題が再び浮上し、ドギーとスワンは顔を見合わせる。
「ああ、申し訳ありません。ご予約されていたお客様でしょうか」
「ああ、そうです。ドギー・クルーガーで」
「ドギー・クルーガー様…2名様ですね、ご案内します」
ニャガーは2人をレストランの中に招き入れた。入り口を通ると長い廊下が見えた。店内は装飾も施され、質素ながらもなかなか綺麗だ。店内の様子を見ていた2人の前に屈強な男が現れた。
「あ、そう。当店、万が一のために武器になり得るものは入り口でお預かりさせていただいておりまして…」
ドギーたちは「ああ」とSPライセンスを男に手渡した。レストランでの立てこもり事件なども少なくない話だ。高級レストランでは武器を店内に持ち込まさせないシステムのところも多い。中には空港の金属探知機レベルのものを用いてるところもあるほどだ。
「申し遅れました。私、当店オーナーのバステト星人ニャガーでございます。本日は腕によりをかけ、お客様にとって最高の夜になるよう努めてまいります。それでは私は先に厨房に向かいますので、奥の扉からお進みください」
そういうとニャガーと男は近くにある従業員用の扉に入っていった。ドギーたちは指示通り奥の扉の中に入った。
しかし、その扉の中にはまた同じような長い廊下が続いており、奥には扉があった。
「外見はかなり小さく見えたが、なかなか大きいのか?」
「うーん、そうみたいね…」
2人は若干の疑問を抱きながらも廊下の奥にある扉に向かって進んだ。
扉のドアノブに手をかけようとした時にふと壁に張り紙があることに気づいた。張り紙には「当店はドレスコードは採用しておりませんが、身だしなみにはご配慮願っております。お手数ですがそちらに置いてある櫛とタオルで髪や毛並みを整えて、靴の泥を落としてください」と書いてある。
「最近の店はこんなお願いまであるのか」
「まあちょっと厳しめのお店なのかもね」
納得はしたものの2人の疑問は大きくなるばかりだった。とはいえここまで来て引き返すのも惜しかったため、2人は櫛を使って髪と毛並みをとかし、靴の泥を払い、扉を開けた。
しかしどうだろう、先にはまだ先程までと同じ構成の廊下が続いていた。
「…流石におかしいな」
「ええ、一度引き返した方が良さそうね」
2人は扉の中に入らずに、来た道を戻った。そして初めに通って来た扉を開けて違和感に気づく。入り口がない。そこには先程と同じ廊下が続いていた。
2人が店の入り口から入って、通った扉の数はひとつ。なので扉をひとつ戻れば、最初のエントランスに辿り着くはずである。しかしそこにエントランスはなく、廊下になっている。2人は確信した。何か不味いことが起きている。
「おいおい、ちょっと気づくのが早いぜ…まだ工程が残ってるのによお…」
廊下に声が響く。それは間違いなくニャガーの声だった。
「どういう意味だ!」
「まあそりゃそうなるよな。いいぜ教えてやる。その先の扉を開けな」
ドギーとスワンは罠の可能性も考えたが、他に手段がない。2人は警戒しながらも本来店の入り口だったはずの扉を開けた。中には荘厳な装飾があしらわれた豪華な部屋が広がっていた。備えられた机や椅子も、その上に並ぶ食器も高級品だと一眼で分かる。
「ようこそ!我がレストランへ!」
部屋の中央にはニャガーと入り口にいた屈強な男が立っていた。
「お前は何者だ!ここはどこなんだ!」
ドギーは啖呵を切る。
「まあそう焦るな。順番に話してやる」
ニャガーは後ろで手を組み、部屋の中で歩きながら話し始めた。
「宇宙にはいろんな奴らがいるんだ。例えば知的生命体の人肉を好んで食べたがる美食家の奴ら…とかな」
ドギーとスワンは顔を見合わせる。
「俺はそういう奴らに料理を振る舞うシェフってわけだ。結構評判いいんだぜ?」
余裕があるのかニャガーはニヤニヤ笑いながら話を続ける。
「まあただ知的生命体の人肉は入手困難なんだ。まあ分かるよな、人殺すしか手に入れられねえし。闇市で売られてるのも高えし。だから考えたんだよ。自給自足が1番コスパいいんじゃね?ってな」
「この店に入って来た人たちを…ということか…!」
ニャガーは指を鳴らした。
「ビンゴ!…って、まあこれだけ説明すれば誰でも分かるか。この店には時空を歪める装置が備わってる。建物の構成も、部屋の数も自由に変えられる。まあ入って来たやつに取っては迷宮みたいなもんさ。そんで迷宮に閉じ込められた奴らをサクッとやっちまえば人肉ゲット…って感じ。お手軽だろ?まあ毎回やってりゃ流石にバレるから何人かは見逃してたけど」
ドギーとスワンはまんまと敵の術中に陥ってしまっていた。しかし彼ら2人の胸の中に渦巻いていた感情は後悔や恐怖などではなかった。怒り。命を弄ぶ者への、犠牲になった人たちがいたという事実への強い怒りだった。
「…貴様、ただで済むと思っているのか…?」
「ああ、思ってるね。だってSPライセンスも武器もない丸腰のお前らなんて怖くないし」
屈強な男は2人のSPライセンスを出して見せた。ニャガーは手を2回叩いた。そうするとどこに隠れていたのか、ドギー達の周りに大量のドロイドが現れた。中にはバーツロイドやイーガロイドも数体いる。
「スペシャルポリスの肉なんて高く売れんだろうなあ。本当はいい状態の肉が欲しいんだけど、まあ仕方ないな。こいつらの肉ゲットしたらここからはおさらばしよう。そろそろ怪しまれそうだし」
流石に分が悪すぎる。こちらには戦える手段がない。
「ドゥギー…」
スワンの目にも流石に不安が窺える。ドギーはスワンを自分の後ろに立たせグルル…と唸る。どうにもならないのか…
「やれ」
ババババキューン!ニャガーの合図でドロイド達が一斉に攻撃を放つ…
よりも先にどこからか放たれた攻撃が複数のドロイドを破壊した。
「誰だあ!?」
ニャガーは驚いた様子で扉に目を向ける。ドギー達も扉に目を向けるとそこには屈強な影があった。
「よお!忘れもん届けに来たぜ」
「ブンター!」
そこにいたのはブンターとその愛犬クラレンスだった。
「お前がサングラスを宇宙船に忘れてたもんでな、この星にわざわざ届けに来てやったらクラレンスの様子がおかしくてよ。突然走り出したんだ。今思えばお前らの危機を察知したんだろうな」
クラレンスは誇らしげに「ワン!」とひと吠えした。
「何やら複雑な構成の店だが、こいつの鼻は騙せねえ。お前らの居場所をまさに当てたってわけだ」
ニャガーは非常に不機嫌な様子だった。
「だからなんだってんだよ…テメェ1人に何ができんだよ…!」
ブンターはフンッ!と鼻で笑うと
「悪いな、来たのは俺だけじゃねえんだ。助っ人…来てもらってるぜ」
そういったブンターの脇からふたつの影が飛び出した。飛び出してきたふたつの影はドロイドを蹴散らし、ニャガーの横にいた屈強な男にも攻撃を与えた。不意打ちを受けた男は2人のSPライセンスを離した。そのライセンスを掴んだ2人はドギー達に近寄った。
「お久しぶりです、ボス」
「地球署は何かとピンチが多いですね」
「ギョク!リサ!」
ドギーは2人の名前を呼んだ。ファイヤースクワッド所属のレオン星人ギョク・ロウ、特キョウ1班チーフのリュミエル星人リサ・ティーゲル。2人はSPライセンスをドギー達に返した。
「来てくれたのね!」
「ブンターさんと温泉と飯の約束をしてまして。俺たちと合流した後にボスのサングラスの忘れ物にブンターさんが気づいてそれについて来た…って感じです」
「ギョク、足は大丈夫なのか?」
ギョクの足は昔の事件に追った傷を負っており、それによって前線を退いていた。
「いや治ってはないんですが、スワンさんに戦闘用のサポーターを貰ったので、戦いには参加できるようになりました」
「そう!ギョクちゃんのためのオーダーメイドなのよ!」
スワンは胸を張る。久しぶりの再会に湧いている3人にリサが声をかける。
「再会を楽しむのもその程度にしましょうか。まずは敵を」
ニャガーは怒りに震えていた。
「…テメェら…全員ミンチにしてやる…」
ドギー達には大勢の敵の前に対峙する。ブンターがドギーに声をかける。
「奴さん相当キレてるぜ。どうするつもりだ、地獄の番犬さんよ?」
「決まってる!行くぞみんな、チェンジだ!!」
「「「「ロジャー!」」」」
5人はSPライセンスを構える。
「「「「「エマージェンシー!」」」」」
「デカマスター!」
「デカスワン!」
「デカブライト!」
「デカクリムゾン!」
「デカコマンダー!」
コールを受けたデカベースから、形状記憶宇宙金属デカメタルが微粒子状に分解され、送信される。そして彼らの体の表面に定着し、デカスーツとなるのだ!
「「「「「フェイスオン!」」」」」
現れたのは5人のデカレンジャーだ。お馴染みのデカマスター、デカスワン、デカブライト。そしてギョクが変身した真紅のデカクリムゾン、ブンターが変身した迷彩模様のデカコマンダー。
「ねえちょっとちょっと!5人いるんだから、"アレ"!できるんじゃない?」
スワンが嬉々として皆んなに言う。
「"アレ"か…」
「"アレ"って…まさかアイツらと同じようなのをやるつもりか!?ああいうのは若さの特権というやつで…」
「私もできればやりたくは…」
「いいじゃないですか!"アレ"やってみたかったんですよ!それに伴番ももう若くないですけど、まだやってますよ」
やいのやいの言い合っている5人にニャガーが痺れを切らす。
「お前ら…いい加減にしろよ!!」
「不味いな…よし、やるぞ!」
ドギーが先陣を切る。
「百鬼夜行をぶった斬る!地獄の番犬!デカマスター!!」
「真白き癒しのエトワール!デカスワン!!」
「並いる悪を白日の下に暴き出す!光の刑事!デカブライト!!」
「怯まぬ正義で悪を打ち砕く!赤き流星!デカクリムゾン!!」
「苦厄を撃ち抜き、恐怖をぶっ飛ばす!鬼の猿猴!デカコマンダー!!」
「「「「「特捜戦隊!デカレンジャー!!」」」」」
惑星を超えた百戦錬磨のドリームデカレンジャーの誕生だ。
「所詮老いぼれの集まりだ!やれ!」
ニャガーの号令でドロイドが一斉に5人に襲いかかる。
「ディソードベガ!」
デカマスターの構えた名刀ディーソードベガの刀身が蒼く光る。
「行くぞ!」
デカレンジャー5人も一斉に走り出す。流石は数多の死線を乗り越えた歴戦のベテラン刑事達、次々とドロイドを撃破していく。
「くっ…!だがイーガロイドなら!」
5人の前に5体のイーガロイドが立ち塞がる。
「イーガロイドか…」
「こんなもんで俺たちが止められると思ってんのか?」
デカマスターはイーガロイドの攻撃に合わせてカウンターを決める。上からの斬撃を受け止めたデカマスターはそのまま返し胴の要領で、イーガロイドの腰に刃を当てる。
「ディソードベガ…ベガスラッシュ!!」
銀河一刀流の必殺技が炸裂し、イーガロイドは一刀両断、大爆発する。
「ちょっと…私1人で…この子の相手は…荷が重いんじゃないかしら!」
デカスワンがイーガロイドの攻撃をいなしながら訴えるが誰からも返事はない。
「もう…!いいわよ!」
デカスワンは後ろ方向に飛び立った。
「スワンイリュージョン!」
デカスワンの両手から大量に放たれた白鳥の羽のようなカッターは、イーガロイドの機体を傷つけながら視界を遮る。視界が元に戻ると、デカスワンの姿が見当たらない。
「こっちよ!」
イーガロイドの足元に低い姿勢で身を隠していたデカスワンはスライディングの姿勢でローキックを繰り出す。死角からの攻撃にイーガロイドの体制は大きく崩れ、そのまま前のめりに倒れる。
「スワンステップ!」
倒れたイーガロイドにそのまま強烈な踵落としを喰らわせる。大ダメージを喰らったイーガロイドは大破する。
「よし!」
デカブライトは洗練された技で一撃ずつ的確にダメージを与えていく。イーガロイドも反撃を試みるがその攻撃をデカブライトが低い姿勢で避ける。デカブライトがその姿勢から戻ってくるところに目掛けてイーガロイドは起死回生の突きを放つ。
「甘い!」
その動きを予測していたデカブライトは体をやや斜めに向けてその一撃を最小限の動きで躱した。そして突きのために伸ばしていたイーガロイドの腕を右脇で挟み込み、素早く左腕についたブレスロットルのグリップを捻る。
「電撃拳!サンダーフィスト!!」
イーガロイドの頭部を左手で掴む。掌から放出される超高圧の電撃がイーガロイドを襲う。機体の内外部共に大きな損傷を受けたイーガロイドはそのまま爆発する。
「ウオオオオー!!」
雄叫びと共にデカクリムゾンは装備した2丁拳銃のディーマグナムを連射しながらイーガロイド目掛けて突撃する。
「ムーンサルトシュート!」
そのままの勢いで、デカレッドのムーンサルトショットの様に前方宙返りでイーガロイドを飛び越えながら、ディーマグナムを連射する。そして前周りで着地しながら2丁の銃を合体させ、ハイブリットマグナムを完成させる。イーガロイドの方に振り向いたデカクリムゾンは銃口を向ける
「チェックメイトだ!ストライクアウト!!」
デカクリムゾンの猛攻の前にイーガロイドはなす術もなく撃破される。
「オラ!どうしたあ!」
デカコマンダーが手に装備したディーナックルで容赦なくイーガロイドに強烈なパンチの猛攻を喰らわせる。イーガロイドも負けじと縦に一刀両断するが如く大きく振りかぶって斬りつけた。
…が全力の一撃はデカコマンダーの肩で止まってしまう。
「フンッ…どうしようもないクズ…いやクズ以下だな」
デカコマンダーは動揺するイーガロイドの刃と後頭部を掴んだ。そのまま大きく自身の頭を後ろに下げて強烈なヘッドバットを喰らわせ、イーガロイドを大きく怯ませる。
「お前には指導する価値もないな」
デカコマンダーはディーナックルを装備した手を腰に構える。
「鉄拳制裁…!キングコングナックル!!」
ブンターの怪力から炸裂する必殺パンチはイーガロイドを粉々にした。
「バカな…!俺の軍隊を…!」
取り巻きを全て倒されたニャガーは驚きを隠せていなかった。
「こうなれば切り札を使うしかない…行け!」
ニャガーの指示で隣の屈強な男は変装を解く。その正体は通常より一回り大きく、片腕を巨大な銃に改造されたイーガロイドだった。
「こいつは…!」
「俺がカスタマイズした超攻撃特化のイーガロイドだ!その出力は実に通常のマッスルギアの100倍!!こいつに相手をしてもらうんだな」
「待て!」
奥に駆けていくニャガーを追おうとする5人の前にE.C(イーガロイド・カスタム)が立ち塞がる。
「ドギーとスワンであいつを追え!」
「ここは俺たちに任せてください!」
「迅速に排除して合流します」
デカコマンダー、デカクリムゾン、デカブライトが前に出る。
「わかった、頼んだぞ!」
「くれぐれも気をつけてね!」
デカマスターとデカスワンはE.Cを飛び越えてニャガーの後を追う。それを追おうとするE.Cの前に残りの3人が出る。
「こんなお人形に手間取ってる暇などないぞ!分かってるな!」
「言われなくても!」
「承知しています」
レストランを飛び出したニャガーは近くの開けた採掘場まで逃げた。ここで"常連客"の救援を呼ぶことにしたのだ。
「逃さんぞ!」
ニャガーが振り返るとデカマスターとデカスワンが追いついてきていた。
「追い詰めたわよ!」
「チッ…仕方ない、やるしかないか」
ニャガーは両手を挙げて自身の爪を光らせてみせ、威嚇のポーズを取った。
「子猫ちゃんには俺たちの相手は務まらないぜ?」
「ハハハ!今すぐ地面に深〜くお座りさせてやるよ!」
走り出したデカマスターとデカスワンは2人同時に仕掛ける。デカマスターの一撃必殺の斬撃とデカスワンの強力な蹴り。並のアリエナイザーならひとたまりもないはずだ。
…が、ニャガーはびくともしない。
「ん?なんかしたか?」
ニャガーはニヤニヤと笑いながら挑発する。2人は違和感を覚えながらも次々と攻撃を繰り出す。だが、2人の攻撃はまるでニャガーに効いていない。
ニャガーは欠伸をした後、2人の体を爪で引き裂いた。
「うおわ!」
「キャー!」
強烈な一撃に2人は大きなダメージを喰らう。
「不思議だよな?並のアリエナイザーなら倒せるはずの攻撃を受けて、なぜ俺がピンピンしてるかって。冥土の土産に教えてやるよ!」
ニャガーはそういうと、自身のコック服を脱ぎ捨てる。その下から現れたのはマッスルギアの様な機械仕掛けの鎧だった。
「こいつは俺が改造した特性マッスルギアだ。あのレストランで使用していたものと同じ時空を歪める装置を搭載してるんだ。それによって外部からの衝撃をワープさせている。だからお前たちの攻撃は俺には届かない!」
「そんなバカな…!」
「すごい科学力ね…」
確かに先程のE.Cといい、この特別なマッスルギアといい恐ろしい科学力だ。
「まあ俺の科学力じゃないんだがな。金さえ払えば幾らでも優秀な奴は買えんだ。俺の凄さはこの画期的なビジネススタイルを確立したことさ!ハハハ!」
その言葉が2人の動揺した心に再び火をつけた。デカマスターとデカスワンは立ち上がり、再び走り出す。
「貴様のその薄汚れた金のために犠牲になった人々の無念は、俺たちが晴らす!!」
一歩その頃、E.Cの相手をしている3人も相手の想像以上の強さに手こずっていた。
「確かに…マッスルギアの100倍というだけはありますね…」
「弱音を吐くなギョク!後でたっぷりしごき直してやろうか!?」
「2人とも…来ますよ!」
3人にE.Cが剣を振り回しながら襲いかかる。3人はその攻撃を避けて、3方向から同時に攻撃を仕掛ける。しかし、その攻撃はE.Cの厚い装甲にダメージを入れるには至らず、E.Cの回転切りで3人は吹き飛ばされてしまう。
E.Cはすかさず銃になった腕を3人の方に向け、チャージを始める。
「くっ!防御拳!バリアフィスト!!」
デカブライトの掌からバリアが作り出される。チャージし終えたE.Cは強力なエネルギー弾を撃ち込む。デカブライトのバリアがエネルギー弾を食い止めるが、あまりの衝撃にデカブライトは吹き飛ばされそうになる。
「うわ!」
「堪えろ、リサ!」
デカコマンダーとデカクリムゾンがデカブライトの背中を抑える。しかし3人がかりでの防御も虚しく、E.Cの放ったエネルギー弾が3人を弾き飛ばした。
「「「うわああ!!」」」
防御していたとはいえ、大きなダメージを3人は喰らってしまった。
「こいつは…マズイな…」
「あれ…?ブンターさん、弱音吐くんですか?ファイヤースクワッドで鍛え直してあげてもいいですよ?」
「お2人とも纏めて特キョウに来ていただいても結構ですよ…?」
しかし3人は軽口を叩き合っていた。
「そいつはどちらもお断りだな…」
「ハハ、リサさんも冗談言うんですね」
「…私をなんだと思ってるんですか?」
3人は立ち上がり、呼吸を整えて、再びE.Cと向き合う。
「そろそろ本気で行くぞ!」
「「ロジャー!」」
「スワットモード!オン!!」
「ファイヤースクワッド!オン!!」
「超光速必殺拳!ライトニングモード!!」
デカコマンダーとデカクリムゾンは自身のSPライセンスを高く掲げ、デカブライトはブレスロットルのグリップを何度も捻る。
転送されたスワットモードの装備がデカコマンダーを、そしてファイヤースクワッドの装備がデカクリムゾンの身を包む。そしてデカブライトはその身に黄金の光を纏う。
「まずは私が隙を作ります」
そう言ったデカブライトの姿は消えた。その瞬間、E.Cの機体が大きく破損した。
デカブライト、リサのみに許された正拳アクセルブローの秘技「超光速必殺拳ライトニングモード」は、本来ブレスロットルを装備した腕を光速で動かせるようになるライトニングフィストのパワーを全身に纏い、完全な光速での戦闘を可能にする超高等技術なのだ。
「これが"光の刑事"と呼ばれる所以か…」
「俺たちも行きますよ!」
デカクリムゾンは先程まで装備していたハイブリッドマグナムとディーリボルバーの2つを構え、デカコマンダーはディーリボルバーを構える。
「リサさん、行きますよ!」
光速でラッシュを仕掛けていたデカブライトは一旦E.Cから離れる。
それを見届けたデカクリムゾンは構えた2つの大型銃を連射する。絶対な威力を発揮し、その分大きな反動を伴う大型銃2つを連射するなど、並のスペシャルポリスでは到底再現できない芸当だ。しかし鍛え抜かれたギョクの強靭な肉体がそれを可能にするのである。
そしてその威力でE.Cが大きなダメージを負っている隙に、デカコマンダーは透視システムで弱点を探る。
「なかなか無茶な改造をしたんだな、その綻びが見えるぞ」
デカコマンダーはディーリボルバーを発射する。ブンターの怪力もとてつもないものだが、ブンターにはもうひとつの武器がある。それは数百キロ離れた先にある米粒を正確に打ち抜ける程の精密射撃である。
デカコマンダーから放たれた弾丸の数々は的確にE.Cの弱点を撃ち抜く。最早E.Cは機能停止寸前だ。
「一斉に攻撃だ!」
「「SPライセンスセット!ディーリボルバー、マックスパワー!」」
「正拳アクセルブロー奥義!」
デカコマンダーがSPライセンスをセットしたディーリボルバーを構え、同じくSPライセンスをセットしたディーリボルバーとチャージされたハイブリッドマグナムをデカクリムゾンが構える。デカブライトはブレスロットルを装備した腕を引き、力を貯める。
「ストライクアウトォォォ!!」
「ツインストライクアウト!!」
「超至高拳!スーパーハイエストハンマー!!」
放たれた3つの必殺技に対抗してE.Cもエネルギー弾を放つが、競り負ける。
3人の同時必殺技はE.Cを大きな爆発と共に跡形もなく消し去った。
「よし!急いで2人の元に向かうぞ!」
再び場面は戻り、デカマスターとデカスワンのコンビVSニャガーの戦闘へ…
「うわあ!!」
一切の攻撃を通さないニャガーの特製マッスルギアに2人は苦戦を強いられる。倒れ込んだデカマスターをニャガーが踏みつける。
「ほれ"おすわり"だ。…いやこれじゃ"おねんね"、か!ハハハ!」
ニャガーはデカマスターを踏みつけている足を執拗にぐりぐりと動かす。
「諦めな。お前たちの攻撃がどれだけ強力だろうと、何回繰り出そうと無駄だ。ワープして無効化されるんだからな!」
何かこいつを倒す手段は無いのか…その時ドギーの脳裏に先程のニャガーの声が過ぎる。攻撃…何回…ワープ…ドギーはハッとする。
「スワン!」
スワンはドギーの作戦を悟った。
「スワンイリュージョン!」
デカスワンの両手から羽状のカッターが放出される。ニャガーの視界は大量の白い羽でホワイトアウトする。
「ディーソードベガ…!」
ニャガーは背後から殺気を感じて振り返る。
「ベガスラッシュ百式!!」
デカマスターはベガスラッシュを目にも止まらぬスピードで連続で叩き込む。
「だから無駄だと言って…ん!?」
ニャガーの特製マッスルギアがバチバチと火花を散らしたかと思うと、突然爆発した。
「ぬおおわあ!!」
ニャガーにデカマスターの連撃のダメージが入るようになる。そしてデカマスターの連続攻撃のフィニッシュがニャガーを吹き飛ばす。
「バ、バカな!お前たちの攻撃は効かないはず!」
「普通はな。だが俺のベガスラッシュ百式は1秒間に100回のベガスラッシュを叩き込む」
「どれだけ高性能なワープシステムも、短い間に100回ものワープには耐えられずオーバーヒートするのよ!」
行きのブンターの宇宙船内での会話が打開策となった。デカマスターは再び斬りかかる。
「クソ老いぼれ共めが!俺の邪魔をしやがって!老いぼれは老いぼれらしく大人しく引っ込んでろ!」
「生憎俺たちは"仕事バカ"でな。まだまだ前線を退くつもりはない!」
ダメージが通るようになったニャガーにデカマスターの一撃が炸裂する。
「クソ…こうなりゃ奥の手だ!」
ニャガーのマッスルギアの掌の部分にブラックホールのようなものが現れる。これは空間圧縮装置で、様々な武器などを仕込んでいるのだ。そしてそこから刀を取り出す。それは…
「まさか…!」
「ソード…アルタイル!!」
ニャガーが叫ぶとそのソードアルタイルの刀身が光る。
「こいつは宇宙の闇オークションで売り捌かれていた名刀だ!こいつでお前を叩き斬る!」
ニャガーはデカマスターに斬りかかる。しかし所詮はヤケクソの剣技。どれだけの名刀を持っていても、本人の技術が伴わなければ宝の持ち腐れだ。ニャガーの太刀筋を受け止めたデカマスターはそのまま刀を下に押し付ける。
「その刀は俺の物というわけではない…だが、少なくともお前が持っていい物でもない!」
怒るデカマスターはニャガーが持つソードアルタイルをディーソードベガの刀身を使って巻き上げる。ニャガーの手元を離れたソードアルタイルは宙を舞い、それをデカスワンがキャッチする。そしてそのまま振り下ろして、ニャガーにダメージを与える。
「バカなあ!!」
デカスワンはソードアルタイルをデカマスターに手渡す。
「行くわよ、ドゥギー!」
「ああ!」
デカマスターは2本の刀を巧みに扱い、怒涛の連続攻撃を仕掛ける。デカスワンもその攻撃の切れ目に華麗な攻撃を繰り出す。2人のコンビネーションに隙はない。
「ドゥギー、二刀流もできるのね!」
「これは二刀流ではない…銀河一刀流2つ分の力だ!」
デカマスターとデカスワンは2人で横並びになり、必殺の構えをとる。デカマスターは2本の刀を振り上げる。
「ツインソード…!ベガアルタイルインパルス!!」
「スワンレインボー!!」
2本の刀身から伸びたエネルギーの刃が振り下ろされ、さらにそこにデカスワン必殺の回転キックが加わる。
「ぐわああー!!」
規格外のダメージを与えられた特製マッスルギアは破壊され、生身のニャガーが現れる。そしてそこに遅れてデカコマンダー、デカクリムゾン、デカブライトの3人が駆けつける。
「観念しろ、ニャガー!」
そう言うデカマスターをニャガーが睨みつける。
「まだだ…俺には…金がある…金があるんだ…お前らを倒せるだけの…金という力が…」
ブツブツのうわ言を言いながら、ニャガーは懐から大量の注射器を出す。
「それは…!」
「メガゲストリン!」
デカクリムゾンとデカブライトが気づいたその薬品は暴力衝動や筋肉増強をもたらす禁止薬物のメガゲストリンだった。
「うおおおお!!」
ニャガーは大量のメガゲストリンを自身に打ち込む。そうするとみるみるニャガーの筋肉は肥大化し、醜いモンスターへと姿を変えた。
「ウガァァァァ!!」
「金の亡者…愚かな男だ」
デカコマンダーは吐き捨てる。
「哀れだが、奴は多くの犠牲者を出している。同情の余地はない。皆んな、一気に叩くぞ!」
「「「「ロジャー!!」」」」
デカマスターの号令で5人は一斉にニャガーに攻撃を仕掛ける。
「「ハアッ!」」
デカスワンとデカブライトは2人で同時に蹴りを浴びせる。2人の同時攻撃にニャガーは大きく下がる。
「シャル・ウィ・ダンス?」
「フッ…」
デカスワンが差し出した手をデカブライトが掴む。2人はさながら2人組のバレリーナのように舞いながら華麗なコンビネーション技を放つ。2人はお互いを回転させながら連続で蹴りを喰らわせる。
その猛攻に吹き飛ばされた先に、2つの大型銃を構えたデカクリムゾンが立ち塞がる。
「2人とも行きますよ!」
デカクリムゾンは銃を乱射して隙を作りだす。その脇からデカマスターとデカコマンダーが飛び出す。
「合わせるぞ、ブンター!」
「お前が仕切るな!」
デカコマンダーはディーリボルバーを連射しながらニャガーに突撃する。そしてその肩を利用してデカマスターが飛び上がり、そのまま2つの刀を振り下ろす。デカマスターの2つの刀から繰り出される連撃にニャガーは翻弄される。そこにデカコマンダーもインファイトで追撃する。トドメの2人の攻撃がニャガーを大きく吹き飛ばす。
怯んだニャガーにデカマスターはSPライセンスを突き出す。
「バステト星人ニャガー!薬物取締違反及び大量の誘拐と殺人の容疑で…ジャッジメント!!」
アリエナイザーに対しては、スペシャルポリスの要請により、遥か銀河系の彼方にある宇宙最高裁判所から判決が下される。○と×で明滅する画面に最終的に表示されたのは×の記号だった。
「デリート許可!」
デカコマンダーは懐から骨型の特殊アイテム、キーボーンを取り出す。
「クラレンス!」
デカコマンダーが上空に放り投げたキーボーンをブンターの愛犬クラレンスが咥える。するとクラレンスの姿が変形し、巨大な必殺バズーカー、ディーバズーカーが完成する。
「「「「「ディーバズーカー!!」」」」」
「真ん中は譲ってやるよ」
「フッ…ターゲットロック!」
デカマスターがニャガーに狙いを定める。
「「「「「ストライクアウト!!」」」」」
ディーバズーカーから放たれた必殺の一撃がニャガーに撃ち込まれる。
「ウワァァァァ!!」
ニャガーの断末魔の声が響き渡り、大爆発が起きる。
「Got you!」
戦いを終えた5人はダイナ星のスペシャルポリスに職務を引き継いだ。ニャガーが経営していたレストランは取り壊され、そしてそこから発見された顧客リストから違法と知りながらサービスを受けていた常連客も芋蔓式に逮捕できるらしい。一息ついた5人は近況報告に花を咲かせた。
「ギョク、バンの様子はどうだ?」
「ファイヤースクワッドの隊長として頼もしくなってますよ。でも最近入ってきた新人を後継者として育てる…とかとも言ってましたね」
それを聞いたドギーとスワンは少し驚いたような様子だった。
「バンが後継者育成か…なんだかあいつも大人になったんだな」
「ホージーが聞いたら、なんて言うだろうね!」
ギョクも逆に質問する。
「そのホージーやジャスミンはどんな様子です?」
「ああ、アイツらも変わらずやってるよ。"心は熱く、頭は冷静に"…お前の教えを守って今や宇宙警察の中でも指折りのスペシャルポリスだ」
それを聞いたブンターも質問を投げかける。
「江成仙一と胡堂小梅はどうしてる?」
「あの2人はもう結婚7年目だけど、相変わらず仲良くやってるわよ〜もちろんスペシャルポリスとしての実力にもますます磨きがかかっているわ」
続けてリサもドギーに聞く。
「鉄幹はどうしていますか?」
「アイツも副署長としてよくやってくれている。俺の自慢の部下だ。最近は地球の地域創生にも力を入れているらしい」
「そうですか…」
皆、元部下や教え子の近況を知り、それに思いを馳せた。
「あ、そういえば私たちのプラン台無しになっちゃったわね」
「あ〜そういえばそうだな」
元々はデートとしてここに訪れたドギーとスワン。事件に巻き込まれてしまって、予定は崩れてしまった。
「それなら良い場所があるぞ!」
ブンターがニヤリと笑う…
「いい場所だろう!飯もうまい、酒もうまい!あ、おかわりいただけますか?」
「あ、俺たちのことは気にせずに!2人で仲良くやってくださいよ〜」
少し離れた席からブンターとギョクが声をかける。トート星。ブンターの地元の惑星である。ドギーとスワンは元々ブンター達が飲もうとしていたブンター行きつけの居酒屋に連れてこられていた。
「あ〜でも〜お2人ってやっぱり…"なんかイイ"…じゃないですかあ〜馴れ初めとかぐらいは聞いてもいいですか〜?」
「リ、リサ…君ちょっとキャラが違うくないか…?」
リサは顔を真っ赤にしてベロベロになってドギーとスワンの席に着く。
「ああ、リサさんって酔うとめちゃくちゃキャラ変わるんですよ!」
ギョクが大きな声で答える。ドギーは大きなため息を吐く。
「はぁ…こんなつもりではなかったんだが…」
「まあ…これもいいんじゃない?楽しいし」
優雅なデートのはずが、事件に巻き込まれ騒がしいものになってしまった。とはいえ確かに久しぶりに会う旧知の仲間達と楽しむ夜も悪くないと2人は思うのであった。
そしてこれから数日後、地球と地球署を揺るがす大きな事件が起こり、バンが新たな戦士と共に帰還することになるのだが…それはまた別の話。何はともあれ宇宙には未だ犯罪は多い。だが頼もしい宇宙警察たちが人々の平和と人々の安全を守ってくれるはずだ。
捜査せよ、デカレンジャー。戦え!デカレンジャー!!