第172回直木賞予想

本日15日(水)に発表される第172回直木賞。
いつものとおり候補作全作読んで予想してみます。

◎:伊与原新「藍を継ぐ海」(新潮社)
山口、奈良、長崎、北海道、徳島、五つの街を舞台にした短編集

○:木下昌輝「秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚」(徳間書店)
阿波徳島藩で藩政改革に取り組んだ武士たちの物語

●:朝倉かすみ「よむよむかたる」(文藝春秋)
北海道小樽で喫茶店に集まって読書会を楽しむ高齢者たちのお話

▲:荻堂顕「飽くなき地景」(KADOKAWA)
戦後、高度経済成長にを過ごしてきたある大企業の御曹司の生涯

△:月村了衛「虚の伽藍」(新潮社)
京都の坊さんが闇社会の力などを味方につけてのし上がっていく物語

今回の候補作の中で、僕がいちばん好きだと思えたのは、伊与原新「藍を継ぐ海」でした。以前に伊予原さんの作品で読んだ「八月の銀の雪」と同様、深い理系的知識を活かした短編集です。地層を扱った「夢化けの島」、オオカミの生態を追った「狼犬ダイアリー」、長崎の原爆がテーマの「祈りの破片」、北海道に落ちた隕石について書かれた「星隕つ駅逓」、ウミガメの生態に迫った「藍を継ぐ海」、どれも良かったです

次に推すのが、「秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚」です。藩の将来を憂いた若い藩士たちが、若い藩主を外から引っ張ってきて、倹約を実施し、藩を支える商品となる愛を奨励し藩を立て直そうとする物語です。江戸時代のビジネス小説です。

「よむよむかたる」「飽くなき地景」もいい作品ですがそこまで強く推せないなという感じがしています。「よむよむかたる」は穏やかな感じで淡々と進んでいき最後に盛り上がりはあるもののそれほど僕には刺さる感じはなかったし、「飽くなき地景」は昭和の企業の裏側を読めた感じがしたけど、あまり登場人物にのめり込めなかったので、この個人的には評価です。

「虚の伽藍」は僕としてはいろんな登場人物が都合良く配置されている感じがして(実際の京都はこういった複雑な人間関係の上に成り立っているんだろうけど)、あまり推せませんでした。

今回の候補作5作品を見たら、僕は直木賞の受賞は、「藍を継ぐ海」か「秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚」のどちらかだと思っています。ですが、「平場の月」でファンになった朝倉かすみさんには、ご自身の出身地の話を書いた作品で取れたら美しいなと思っているので、ここまでが受賞の可能性がある範囲かなと思っています。

以上が僕の予想です。
さてどうなるのでしょう?

いいなと思ったら応援しよう!