もしも謎解きイベント参加歴12年の人間がIMMORTALに参加したら(ネタバレなし)
※これはタンブルウィード「IMMORTAL」の感想記事なのですが、ほとんどは個人的な思い出です。そうでないと感想を書けない作品なので。あらかじめご了承ください。
「歴だけは長い」
よく、謎解きイベントで同卓のかたへの自己紹介でそう言ってしまいます。
はじめて参加したのは「終わらない学級会からの脱出」。といってもリモート版や再演ではなく初演。当時は当然まだ謎解きイベントというものの概念すらなく、京都のよくわからんフリーペーパー作ってる団体が脱出ゲームを現実に遊べるものにしたらしいぞ、というくらいの情報をネットで偶然見つけたのでした。
自分のツイートを検索したら2009年11月8日!もう12年以上前だ。
この日の興奮ったらなくって、脱出には失敗したものの解説を聞きながら全力で一喜一憂し、その日はあやうく終電を逃しかけました。
それからは次のリアル脱出ゲームを漏らさずチェックし参加する日々。日常に突如として現れる非日常に心を奪われていました。チームメイトに恵まれなかった「廃倉庫」、初めて脱出できた「マジックショー」、ミステリーナイトとのコラボだった「二重密室」、その場でチーム組むことを会場で知らされ最後までソロで戦った「夜の遊園地」、一緒に参加した知人がはぐれたと思ったら一人で脱出してた「あるスタジアム」、初めて大阪遠征をした「人狼村」、初対面の夫婦と挑んだ「あるドーム」……。
規模がどんどん大きくなっていき、非日常にも急速に慣れていった自分がすべてを追わなくなるのは自然なことだったのかもしれません。ただ、初めて参加したリアル脱出ゲームで感じた高揚感、興奮、体験は忘れられるわけもなく、もともと頭の体操的なものは好きだったということもあり、その後も「あの謎はよかったな」「あんまりだったな」程度の感情しか抱かなくなっても参加してはがっかりするゾンビのような人間になってしまいました。
2019年初頭に病気の関係で長い歩行が困難になったため東京に遊びに行く回数は激減。最後に謎解きイベントに参加したのは2018年10月、このころすでに歩行がつらかったので一気に3公演詰め込んだのでした。
この時もあんましポジティブな感想は残してませんね。
そんなこんなで2020年。世界的にも外出が困難になりリモートで楽しめるコンテンツが増えたのは不幸中の幸いでした。謎解きもリモートや持ち帰りで楽しむのがすっかりメインになり、イベントとしての体験というよりも謎そのものを主軸に楽しんでいました。
そんな中でもIMMORTALの噂はTwitterでよく目にしていました。謎解きで知り合った人やラボクイズ界隈の人がタイムラインに多くいるので面白い公演やコンテンツの口コミは自然と目に入ってきます。東京で開催されるイベントなんてもう行くことないしな、と参加者の異常なまでの評判の高さでさえもう羨ましく感じることもなく初演時はスルーしていました。
そして2022年4月、もう2年半も東京に行けず、その他にもさまざまあり精神状態もかなり悪化していた頃。
なんとなく、謎解きイベントに行きたいなという気持ちが強くなっていました。Web謎とかLINE謎とかMystery for Youとか細々と遊んでいたからなのか、もしくは、心の底から非日常を求めていたのかもしれません。
そんな機運が高まっている時に、たまたま目にしたのがIMMORTALの再演の情報でした。
ゴールデンウィークだし、タンブルウィードは持ち帰りやYouTubeの動画で存在は知っているものの公演は初めてなので迷いましたが、せっかく行くならこういう未知のものの方がいいよな、と思い切ってチケットを購入したのでした。
一週間前から天気予報を細かくチェックし(雨で地面が濡れてると転倒しやすいため)、あまりに久しぶりなのでLINE謎やWeb謎に積極的に参加し、体調に気を遣って当日を迎えました。
下北沢自体もかなり久しぶりなので、まずはずっと行きたかったカレー屋パンニャに。
マハーカツカレーで整えた後はナゾベースへ。マジで駅周辺の様子が知ってる頃と違いすぎるので戸惑いながらも到着。駅からの近さにびっくりしました。なにしろ下北沢の謎解き施設っつったらSCRAPの下北沢ナゾビルしか知らなかったので。これはもう完全に余談なんですが今調べたらナゾビルって名前じゃないんですね。謎解き業界の動向を何も知らなすぎて泣いちゃった。
MONSTERのちっちゃいやつをぶち込んでから入場。ひさびさの謎解きイベントの空気に触れる。会場内の仄暗さ、各チームがひしめき合う感じ。とにかく懐かしい。
ソロ参加なのでチームメイトがどんな人なのかを探り探り会話することさえ久しぶりでした。まあ220分の公演に参加するくらいなのだから基本的なリテラシーはあるだろうと思っていましたが、ちゃんと全員タンブルの公演にも参加済みだったので結果的に自分のほうがリテラシーないだろと不安になってしまった。
そして14時になり、公演がスタート。
220分後によみがえったのは2009年11月8日に感じた、あのときの興奮。
なんという体験をしてしまったんだ。なんというものを知ってしまったんだ。そこには間違いなくあの時見つけた非日常が存在していました。手のひらの痛みを感じ、拍手に力が入りすぎていたことに気付くのは会場を出てからしばらくのこと。
おそらくこのIMMORTALは、初めて謎解きイベントに参加したときの感動が忘れられず、作る側に回って最前線で戦いながらもさらにまったく新しいゲームを作った人達の全力のラブレターなのでしょう。
うっかりそれを読んでしまった自分も、期せずして同じ気持ちになり、長らく忘れていた初期衝動、感動、興奮が一気によみがえってしまったんだと思います。
そんなことを参加した翌日にIMMORTAL X-FILESの制作者コメントを何度も読み返しながらしみじみと思いました。3年半ぶりに参加した謎解きイベントがこれで本当によかった、と心の底からそう思いました。
この記事が公開されているころにはもう公演は終了していますし、次の再演も未定とのことではありますが、個人的にはもう、下北沢にもう一ヶ所借りてIMMORTAL専用の劇場を作るべきとすら思っています。
この作品を一人でも多くの人に体験してほしい。特に、謎解きイベントに食傷気味の人や初参加の感動が忘れられず惰性で参加してしまってるような人たちに。
それに、それを抜きにしたって間違いなく謎解きイベントのひとつの発明であり到達点なので。
本当だったらどうすごいのか、なぜ感動したのかを自分なりに解説したいのですが、当然ネタバレ全面禁止ですので漠然として感情に依りきった感想になってしまいますね。読み返せばそれこそラブレターのように恥ずかしい気持ちになるのかもしれませんが、こういうのは勢いで送るのがいちばんなのでそのままにします。
唯一良くなかった部分を挙げるとすれば、アドレナリンが出すぎてその日の夜まともに眠れなかったことでしょうか。