空に浮かぶ川:樹冠の遠慮が教えてくれたこと
「上を見て!空に川ができてるよ!!」
公園の木々の下で、一緒に歩いていた子どもが突然叫びました。
驚いて空を見上げると、そこにはまるで川が蛇行するような曲線を描いた青い空が広がっていました。
枝葉の隙間が、まるで川の流れのように見えるのです。
子どもの言葉は、その光景を見事に表現していました。
これは、「樹冠の遠慮」(じゅかんのえんりょ、crown shyness)と呼ばれる現象です。
木々の枝葉が、お互いに重ならないように遠慮し合いながら成長する様子を表しています。
林床から見上げると、枝葉とその隙間が織り成す独特な模様に心を奪われます。
この現象には、日常生活で感じる"遠慮”の感覚が重なるため、特に惹かれるのかもしれません。
なぜ枝葉は遠慮し合いながら成長するのでしょうか。
それは、光などの資源をすべての枝葉に行き渡らせるためだと言われています。
ひとつの枝葉が資源を独占してしまうと、他の枝葉が資源を受け取れなくなり、樹木全体の成長効率が落ちてしまいます。
すべての枝葉に満遍なく資源が行き渡ることで、樹木全体としてバランスよく成長でき、豊かな森林が生まれるのです。
資源の独占的な奪い合いは良い結果を生まない…これは自然の摂理なのかもしれません。
これは樹木に限らず、どの生き物にも当てはまる仮説だと思います。
もちろん、人間にも。
格差社会、戦争、差別…日常的な人間トラブルも含め、生きづらさを助長する状況は、特定の人の優位を保つことから派生しているように感じられます。
ある枝葉ばかりに光が当たって成長しすぎると、他の枝葉の成長が阻害され、豊かな森林が生まれません。
これは「木を見て森を見ず」どころか、もはや木さえも見えていない状態と言えるかもしれません。
「樹冠の遠慮」を自分に当てはめるなら、枝葉が自分、森林が人類社会に例えられます。
自分の成長に必要な分の資源は受け取る。ただし、他者が必要とする資源を奪い取らない。
バランスよく、他者とともに生きていく。
こんなふうに生きていけたら、私も豊かな人類社会の一部として貢献できるのかもしれません。
子どもと公園の木々は、何か本質的に大切なことを教えてくれた気がします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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