ERP導入成功の鍵
成功と失敗の客観的な判断基準
勝負ごとでは、勝てば成功、負ければ失敗であり、その勝ち負けを判定する客観的判断基準やルールがあります。
一方で、ERP導入プロジェクトなどの成功・失敗には、勝負ごとのような明確な客観的判断基準やルールがあるわけではありません。
あるとすれば、お客様視点ではRFPなどに記載された要求仕様書が基準となり、その要求仕様を満たしているか否かで評価されます。
我々のようなERP導入ベンダー視点では、QCD、特にコストやプロジェクト採算が成功の基準として用いられがちです。
ただ、立場の違う両者にとって共通的に言えることは、ERP導入プロジェクトなどの結果について、満足であれば成功、不満であれば失敗だということです。
なお、QCDのうち、いずれを重視すべきか、またどのようにQCDをコントロールして行くかについては、別途投稿することにします。
成功の鍵
では、ERP導入における成功の鍵としては、実際のERP導入工程の進め方が最重要であることは言うまでもありませんが、提案依頼や提案のフェーズにフォーカスしてみると、実はこの時点で成功か失敗かが決まると言っても過言ではありません。
ERP導入を検討しているお客様は、ERPに求める要求仕様を取り纏め、RFP(提案依頼書)を作成します。これは、お客様自らで作成することもあれば、我々のようなコンサルタントの支援を受けて作成することもあります。
また、RFPを作成しないまでも、我々のようなERP導入ベンダーに対して、要求仕様を伝えて提案を依頼します。
この時点で、ERPや基幹システムに求める要求仕様はもちろんのこと、その要求仕様を満たすことでお客様のどのような経営課題やシステム課題がクリアになるのかが明確にならなければ、いくら素晴らしいERPや基幹システムを導入しようとしたところで、ステークホルダーの誰もが満足することはなく、最後は必ず失敗することになります。
RFPはお客様の力量を知る最良の材料
私もこれまで数多くのRFPを受領して提案してきましたが、RFPを拝見したり、お客様の要求仕様を伺った時点で、お客様やそのお客様を支援するコンサルタントの力量が手に取るように分かるものです。
読んでいて楽しくなるほどの素晴らしいRFPに出会うことはそうそうありませんが、そうした素晴らしいRFPを基にERP導入に至ったプロジェクトで失敗したことがないのも事実としてあります。
一方で、大量ページのRFPに加え、500項目に渡る機能要件や非機能要件なども提示され、場合によっては画面や帳票の項目有無までを確認するような資料まで提示されることもあります。
それを読み込まないと適切な提案ができないため、気合を入れて読み込み始めるも、RFPの全体構成が分かりにくかったり、記載されている内容が不明確でお客様やコンサルタントとのQAやり取りが頻発したり…。
こうなった時点で魂の込もった適切な提案が難しくなったり、最終的には提案辞退となることもあります。
それほどまでに、RFPや要求仕様が、ERP導入プロジェクトなどのスタートであり、その成功を左右するものなのです。
セールス・プリセールスこそコンサルタントたれ
お客様視点では、経営課題やシステム課題とその課題解決に向けてERPに求める要求仕様を明確にすることが重要です。
また、我々のようなERP導入ベンダー視点では、その経営課題やシステム課題と要求仕様を正しく理解することが重要であり、仮にRFPや要求仕様が不明確な場合には、お客様に寄り添い、その要求仕様を引き出して明確化するセールス・プリセールスとしての活動に力を注ぐべきです。
その課題や要求仕様の明確化の活動においては、コンサルタントとしての立ち振舞も求められます。つまり、セールス・プリセールスこそ、コンサルタントであるべきなのです。
仮にそうしたコンサルタント的なアプローチでも要求仕様が不明確な箇所については仮置きして、その前提条件を明示することでリスクヘッジする必要があります。
次回は、セールス・プリセールスの提案現場について整理して行きたいと思います。
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