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SDGOは何故失敗したのか?

SDガンダム カプセルファイターオンラインというゲームを覚えているだろうか。かつて私もゲームの魅力に取り憑かれ、大学生の時期に多くの年月を費やしたゲームだ。

ゲーム自体は韓国のソフトマックス という会社が開発し、
バンダイコリアを中心に韓国、日本、台湾、中国と世界に広がった。

ゲームシステム自体は主に4vs4の固有のアビリティや属性を持つSDのMSを動かすTPSで、極めて高いポテンシャルを秘めたゲームだった。
ちなみに今ではエミュ鯖が存在するらしい。気になる人はググってみて欲しい。

2015年6月12日、正式にサービスが終了した。本記事では個人的に何故ゲームが終了したのか考察してみたいと思う。欲を言えば、当時の運営の目に届けば幸いだ。

ちなみに私がクラン戦をやっていた頃のクランの勝率は60%程度の中堅で、当時3つくらいあった勝率70%以上の上位クランにいつも挑むが、5回に1回くらいしか勝てない感じ。私自身の野良勝率も実際に測ってないのでわからないが、60%いくか行かない程度に集約されたと思う。

後述するランダム要素が影響しているのだが、野良試合では実力がバラバラにマッチングするので、確か誰かが3hitだけして、放置しても3,4割は勝てるというデータが過去に出てた記憶があるので、逆に言うと何もしなくても3,4割は勝てるし、どんなに頑張っても、4割くらいは負けるということになる。

よって、ごく一部の数十名の伝説的なプレイヤーを除き、一般的なプレイヤーの勝率は45%から65%程度に長期的に見ると集約されると思う。前置きが長くなったが、その程度の目線から見た人間の一意見ということで、前提を持って読んでいただければ幸いだ。
(ちなみに筆者はnoteの投稿が初めてなので、見苦しい文章なのは許して欲しい)

※クラン戦時代はGND、ザメル、ボールK、トールギス2の組み合わせが中心の頃。最近のエミュ鯖の固定をやっているSDGOメンバーは総入れ替えされていてびっくりした。

私から見る失敗原因

1) 根本的に本来のゲームが出来ない

このゲームには、機体において役割やコスト、属性といった特性がある。それらの特性を持った機体を組み合わせて戦術とセットで初めてチーム戦は成り立つものであり、ゲームシステム自体も特性があることを前提に組まれている。

しかしながら、ゲームシステムとマッチングシステムに考え方の乖離が起きている。

本ゲームは、リリース初期は各機体に固有の属性が存在し、それぞれの属性によって相性や得意距離属性があった。
具体的には近距離機体(ライン維持) > 中距離機体(火力職カウンター) > 遠距離機体(火力) > 近距離機体 と言った具合。

この絶妙な駆け引きがゲームとしての醍醐味で流行りの要素を先取りしていて、非常に面白そうなゲームだ。

具体的なゲームシステムはこちら。わかってる人は点線部分は飛ばしてしまってください。

▼ゲームについて紹介

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近距離機体(ソードインパルス) > 中距離機体(フォースインパルス) > 遠距離機体(ブラストインパルス) >近距離機体(ソードインパルス)みたいな。ダメージに補正がつくので、基本は属性が悪い相手とは戦ってはいけない。

ちなみに、属性が悪い機体に同じ腕で対面すれば、絶対に勝てないと思って良い。限定環境で近距離機体は無類の強さがあるが、あくまでも限定環境。基本は相性が悪い機体には勝てないし、ダメージ効率が悪いので、同じ属性か相性の良い属性を狙う立ち回りが求められる。

試合の流れだが、具体的に書くとキリがないのでざっくり書く。

ここでは

ソードインパルス*2 フォースインパルス*1 ブラストインパルス*1


vs

ソードストライク*2 エールストライク*1 ランチャーストライク*1

の試合を想定して欲しい。

ソードインパルスはソードストライクと睨み合いながら、戦場のラインを押し上げ敵中距離機(エールストライク)を抑え、後続の中距離、遠距離機体の安全を確保する。

フォースインパルスは前線で闘うソードインパルスが押し上げたラインを上手く使い、天敵であるランチャーストライクを抑える。

ブラストインパルスはソードインパルスと睨み合っているソードストライクを重い一撃で押さえ、フォースインパルスを守る。

といった具合。

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▲ここまで

だが現実は冷たい。

残念ながらマッチングシステムが糞過ぎて駆け引きが成り立つことはほぼなかった。

完全ランダムでチーム分けされるので、属性がめちゃくちゃになる。ソードインパルス*4 vs エールストライク*4 みたいなことが多々発生する。こうなってしまうと、もう立ち回りもクソもないただのクソゲーと化す。

ちなみにこの状況を運営も見かねたのか、予想を斜め上にいくアプローチでこの問題を解決しようとした。得意距離属性の撤廃である。ゲームバランスを根本的に変える革命は、多くのプレイヤーの離脱をもたらした。これはこれでダメージ効率差は無くなったので、良い面もあったとは言えるが、属性を撤廃したところで、各機体における役割は変わることはなかった。
近距離機体は相性の悪い機体がいなくなり、ラインが上げやすくなった。

その他中遠距離機体は単純にダメージトレードして、DPSが高い機体が強機体と言ったカテゴリ化がされた。実は属性撤廃前は、中距離機体は必然的に数の多く、相性の悪い近距離機体を相手にする可能性が高かったため、不利があったのだが、近距離機体が減ったことにより、高火力をばら負けるようになり、上方修正がされた。要するにゲームシステムが簡単になったということだ。

とはいえ当然と言えば当然なのだが、チーム構成がランダムで決まることは変わらないので、野良試合でまともなゲームが成り立つ確率は相変わらず低いままだ。

分かる人は既に思い浮かべていると思うが、実はクラン戦と言うシステムがこのゲームには存在し、クラン戦であれば大量の機体の中から、チームの特性にあった機体をpickして、MAPごとの戦略を考えたりしてまともなゲームをすることが出来たのだが、そもそもクラン戦自体が4人人を集める必要があり、それなりに敷居が高いものであったことに加え、レベルが高いので、ゲームを理解せずにノリで飛び込んだりすると、間違いなく10戦10敗するだろう。敷居が高いこともあり、98%のプレイヤーは未経験で終わったのではないだろうか。ちなみに私の所属していたクランは野良試合に萎えたコアプレイヤーがLOLに移住したことでゲームが終了した。

何が言いたいかと言うと、"本来開発者が想定したゲームが行われない"事実こそが、SDGO最大の悲劇であり、改善しなければならないことだった。

本来は近距離機体が激しい陣取り合戦をしている中で、射撃機が有利な位置を確保していく・・・と言った熱いゲームを期待していたはずが、残念ながらそんなことにはならなかった。

ちなみにクラン戦において、属性撤廃後近距離機体と言うカテゴリーが激減したらしい。ダメージの相性が消えたので、中距離機体で普通にラインをあげられるようになったからだ。

言うなれば、野球というルールを考え、スタジアムとバットとグローブとボールを提供したら、野球のルールを知らずに鬼ごっこを98%の人間が行ってしまったと。
で、野球のルールが難しいから、草野球にマイルド化してユーザー爆増!と思いきや、まだ鬼ごっこを続けていた というわけだ。

まぁこんな状況なので、野良は基本的には連携はできない。頼ることがナンセンスである。故に野良試合は"どれだけ火力を出すか"、"誰を即落ちさせるか" といったゲームになった。一応火力を出す優秀なプレイヤーがいるなら、その人をフォローしていれば基本的に勝てるのだが、優秀なプレイヤーと組める確率はそうそうないので、勝率を上げるには、キルを取りまくって、火力を出して即落ちさせるのが手取り早い。つまり、どんな状況で何を使っていたとしても、全員が火力職になることを強いられるゲームである。

また、上手い人ほと速攻でリス狩りをしてゲームメイクしていくので、動画で学ぶにもジュニア層やミドル層に立ち回りの観点が欠如してしまった。上位勢も雑魚の味方をアテにしているよりかは、NTのようにさっさと敵陣に切り込んで、有利な位置を確保してリス狩りをしてしまった方が勝率が高いと思う。逆に味方をアテにすると、固定やクラン戦をやっていない人が98%なので、意味不明な動きによって迷うことがあったのでは無いだろうか。

実例だと、BeserkD氏やnapier氏のようなプレイを思い浮かべて欲しい。彼らは当然プレイをしながら立ち回りを考えているのだが、固定戦よりも遥かに個人技に比重をおいたプレイを野良ではやっている。よって、立ち回りという点ではあまり参考にはならない。突き抜けたPSが前提としてあって、あの動きができると思った方がいい。

※やったことある人なら分かると思うが、勝率の高いプレイヤーは総じてキルレートとダメージレートが高い。

2) ユーザーの差別化が出来なかった

このゲームは実力によるマッチング差別化が出来ない。と言うかする気がなかった。

超越したNTのようなプレイヤースキルを持つプレイヤー以外はストレスを感じることが多かったのではないか。

冒頭で述べたが、このゲームの野良試合は長期的にプレイすればするほど勝率が45%-60%に集約される。これはつまり、一定の確率で味方が弱くなり、一定の確率で味方が強くなるので、バランスが取れたチーム分けはほとんど起こらない。

通常こういったゲームは、プレイヤーのランクによってチームが別れたり、マッチングが決まるものだが、そういったプレイヤーの差別化を運営が支援せずに、最後までユーザー自身に委ねた。

※一応階級制限と言う機能は存在したが、階級はプレイ期間に直結するものであり、イロレーティングのように決まるものではない。長い時間プレイしていれば、階級は勝手に上がるが、プレイスタイルや環境、センスセンスによって、プレイヤースキルは大きく振れ幅がある。よって、階級=強さではない。

結果、ユーザーは仕方がなく、初心者部屋や、下手くそ禁止などを部屋のタイトルにつけて自身で制限するしかなかった。自己申告制なのだから、当然のように初心者狩りが必ず初心者部屋には混ざり、勘違いしたプレイヤーがクラン戦常連などの猛者部屋に入りこむ始末であった。

こうした状況が一切改善されなかったことから、徐々にモラルが崩壊し、また同時期にLOLやガンダムオンラインといったメジャーゲームが多々出てきたことにより、プレイヤー人口は減少の一途を辿った。

+α 3) バグが多すぎる

この辺は大きな要因ではなかったとは思うが、一応挙げておくと、このゲームは、バグを探せばキリがない。ざっと考えるだけで・・・

・変形するとSA(スペシャルアタック)が撃てなくなる。

・ゲーム中に徐々に文字化けしていき、突如ゲームが終了する(通称ZOA)

・変形状況にズレが生じて、相手と自身の動きが狂う

と、TPSのチームバトルゲームにおいて、致命的な不具合が散見された。そして驚くことにこのバグはゲーム黎明期からゲーム終了まで放置され、最後まで改善されることはなかった。

後から聞いた話だが、初期開発メンバーが抜けたことにより、ゲームエンジン(zoaエンジン)の修正が出来なくなり、内部がブラックボックス化し、修正ができなくなったことが原因と言われている。

打ち手

いろいろと問題点を上げたが、どうすれば良かったのか。個人的な見解を述べる。

1) チーム分けと機体選択のプロセスを逆転させる。

LOLは非常に良く考えられた良ゲーで、野良試合でも、最低限の連携が取れるように設計されており、腕が上がれば上がるほど、野良試合における連携が取れやすくなる。

これは、チーム分け後→キャラPick といった流れを通しているから。

SDGOも同じで、キャラPick→チーム分け ではなく、チーム分け後→キャラPick といった流れを通すことで、考える時間が生まれる。ソードインパルス×4 vs エールストライク×4が生まれなくなる。pickする機体ごとに機体される役割が生まれ、初めてバランスが崩壊しないチームが組むことができるようになる。一試合終わったらチームをリセットすれば良い。

この時点で、まずゲームが始まった瞬間に「あ・・・終わった」を無くすことができるはずだ。

ちなみに当然の如く課題はある。

「使いたい機体が使えないんですが〜〜」

→これはまぁ、従来のモードを用意してやれば良かっただろう。

「試合の密度は上がるが、試合開始までの時間が長いんですが〜」

→これもまぁ、従来のモードを用意してやれば良かっただろう。

「責任重いよ!だるい!名人様と遊びたくないわ」

→この辺が日本人的には1番ネックなのかもしれない。ゲーム開始前に作戦会議するので、期待された役割を担えなかったりすると、責任追及が発生するかもしれない。この辺は、後述する解決策で対応できればいいのかもしれない。

2) イロレーティングを導入すべき。

イロレーティングとは

通常のモードはそのままにして、機械的に実力によってマッチングを分けるのである。分かりやすいアナロジーだと、exvsシリーズの階級制だ。勝てば上がる。負ければ下がる。シンプルである。身内部屋を除き、部屋にレーティングの制限なり、レーティングでチームを別ければ、極端に部屋の中で実力が上下することはなかったはずだ。実は最後の最後にラダーと言う仕組みが導入されたようだが、その頃は時すでに遅しで人口は激減していたようだ。ちなみに私は既に引退していた。

課題としては、身内数人と野良部屋で遊びたい時に、遊べなくなる弊害があると思われるが、これは身内数人でやる場合、集まったメンバーの平均値+αのレーティング相手をぶつければ良いだけの話である。

同レベルのメンバーで、戦術を考え、持てるカードの中から機体を選び試合に挑む。どうだろう。考えるだけでワクワクしてこないだろうか?

3) 荒らし行為の徹底排除

まぁこれは言わずもがなだろう。単純に運営の怠慢。聞いた話では、狂ったプレイヤーが大量発生していたらしい。

+a 4) バグの改善

これはまぁ、技術力があるならやった方が良い。とはいえ致命的な理由にはならない。

最後に

最後にクラン戦を過去に経験した身としては、多くのプレイヤーがこのゲームの持つポテンシャルを知らないまま引退してしまったことはとても悲しい。

このゲームはおそらくもっと戦術の研究ができただろうし、機体の組み合わせも無限大にある。こういった遊び方をほとんどの方がすることができなかった。

中華のエミュ鯖で一年前に固定戦をやらせていただいたが、あれほど面白いゲームは過去において無い。これを体験できないのは非常に残念だ。

ゲーム自体の運要素が強すぎるので、通常対戦ゲームでは一般的な最後までwikiでまともにマップごとの立ち回りのテンプレを書く人もいなかった。

(書く人もいなかったというよりかは、運要素が強すぎるので書きようがない)

願わくば、これからリリースされるゲームは、ゲームシステムはもちろん、"根本的に本来のゲームが成り立たない"状況が発生しているのだとすれば、早急に改善を試みることを願うばかりである。


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