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厚労省が2004年に発表した精神疾患の「入院医療中心から地域生活中心へ」。現状は…?

2021年ごろまで、習い事でお世話になっていた先生は、地域の自治会長を長年務めているだけでなく、民生委員もしてらっしゃいました。災害時に避難指示が出たときは、地域の障害がある方の家を訪問し、避難の支援などしていると聞き、「立派な方だな」と思っていました。

その先生がある日、雑談の中でこう言い始めました。

「この間、近くのスーパーにいったら、変な声を出しながら口を半開きで歩いている男がいたのよ。付き添いがいて、腕をつかんで勝手に動き回らないようにしてたけど、言うことを聞かなくって、手を振り払ってあれこれ触りまくってるのよ。『ウォ~』って気味悪い声を出して。

『何でこんな気持ち悪いのを公共の場に連れてくるんだろう』と思って、ツレを睨みつけてやったわ。スーパーの店員も呼んで、『あんなのがいたら迷惑よ!おタクも客に不快な思いをさせたくないでしょう?さっさといって店から追い出しなさいよ!』って注意してやったわ。病院にぶちこんで出てこられないようにするか、家から勝手に出ないように家族がしっかり見張るかしないとダメよね~!」

私は一瞬、言葉を失いました。この人は私に同意を求めているんだろうか?私はその後、自分の体験を踏まえてこう言ってました。

「買い物するのに自宅に一人おいておけなかったのかもしれないですね。気分転換に外出させてあげようと思ったかもしれないし。うちも子どもが小さいころ、他の子となかなかうまくできなくて、こども会で孤立したことがありましたけど、あのころはとてもツラかったですね。結局、別の地域の小学校に転校せざるを得なかったんですよね」

それを聞いて、その先生はハッとした顔をされ、話題を変えました。私はその後、その先生と話す時間が苦痛になり、習い事をやめてしまいました。

厚生労働省が2004年に発表した『精神保健医療福祉の改革ビジョン』には、今後10年間の目標として「精神疾患は生活習慣病と同じく誰もがかかりうる病気であることにつ いての認知度を90%以上とする」と明記してあります。

当時2021年。10年以上経過しても、自治会長や民生委員をする人ですら、認識が変わっていないということでしょうね。

同ビジョンでは「受け入れが整えば退院可能な者」は入院治療から地域生活への移行を促進することが定められています。

ですが、地域社会で受け入れが進まなければ、結局は家族の負担が増してしまいかねません。実際、押川剛(2015)「『子どもを殺してください』という親たち」では、やっとの思いで入院させた精神疾患のある患者が、まだ症状の改善がみられないうちに退院を迫られて、家族がうろたえるシーンが何度も登場します。

私たちは変わることができるのでしょうか?今の社会を変えるにはどうしたらいいのでしょうか?

「変えたい」「変わりたい」と考える人を一人でも増やしていけたらいいですね。

厚生労働省(2004)『精神保健医療福祉の改革ビジョン

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