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負債10億の会社社長になった話 第1話

引き継ぎは判子と通帳だけ


タイトルの通り、数年前に負債10億を抱える会社の社長に就任しました。
就任した翌日、前任の実父から投げるように渡された、会社の実印と通帳。

「月末に銀行リースの120万円と社葬費用300万円払っとけよ」

引き継ぎは、それだけでした。

手元にある通帳を開いて残高を確認すると、残高はたったの30万円。

「What???」

「一体どうやって払えばいいんじゃー!!!」

この時のことを、今でも鮮明に覚えています。

それから数ヶ月の間にあったことは、必死すぎてうろ覚えなこともしばしば。

せっかくのこの貴重な体験を、私一人の頭の中に置いておくのはもったいないし、
そうあることではないとは思うけれど、悩んだり迷ったり、苦しんでいる人の何かしらのヒントになれば、この時の自分が成仏できそうなので、物語として残していこうと思います。

社長を承継することになった経緯

簡単に私の生い立ちをお話しします。
今はまだ、会社精算の途中で、色々と関係各所にご迷惑をおかけしてはいけないので、具体的地名や会社名の記載は避けて書きますね。

約40年前とある地方都市で、複数の会社を経営する一家に産まれました。
戦後の高度経済成長期を勢いよく駆け抜けてきた祖父が立ち上げた会社を元に大きくしていき、拡大していったのです。

しかし、バブル崩壊からデフレーションの世の中に、売り上げは減少していき、ついに父の代で経営していた1つの会社の継続危機が訪れます。

今までイケイケどんどんで融資をしていた銀行から貸し渋りを受け、2回目の不渡を出す前に事業停止をしたのです。

そう、事実上の倒産です。

その会社も負債額は十数億円。個人で借入の保証人にもなっていた父は、自己破産するしかなく、唯一残った会社を私が継承することとなりました。

自己破産していても、株式会社の代表者にはなれるけれど、借入の保証人にはなれないからね。法人で借入があれば、基本的に代表者保証をつけないといけなかった(当時は。今は確か、個人保証はつけないように国から指導があったと思う)

もちろん、その時新婚だった私は夫の収入で生活することも可能だったので、継承しない、という選択肢もあったんです。

だけど、それはできなかった。

なぜなら、収入もなく自己破産するしかない父、専業主婦で一度も働いたことのない母、うつ病の持病を持ち働かない姉。という、とてつもなく重たいものがのしかかっていたのです。

自己破産なので、資産として父の名義のものは全て返済原資となります。
その時両親が住んでいた実家も借入の根抵当に入っていたわけで。
ということは、両親の住む家もないわけです。
そんな家族を放っておくことは出来ませんでした。

何より、一生懸命勤めてくれている社員さんやサービスを利用してくれている人がいるのに「私関係ないから!じゃ!」とは30そこそこの小娘には出来なかったですよ。

今考えれば、甘いことをしたな。とも思うのですが、当時そんなこと考える時間的余裕もなく、倒産決定から継承まで約3日という、あまりにもスピーディーな代表就任でした。

このどん底からどうやって這い上がっていったか。
ゆるりと書いていきたいと思います。



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