ある日、娘から…(ついに来た)
娘に新しいiPhoneを買ってあげたんですYO! メディア王(自称)の娘としては、常に最新モデルを使ってほしいという完全に押し付けなんですけど、私に似て新しいもの好きで、いつも楽しみにしてました。
そしたら、なんかひと月以上も受け取りに来ない。それでなくても、このところすっかりつれない。そりゃ社会人2年目、ほかに優先すべきことがたくさんあるよね。そもそも父親がまだケータイ買ってあげてるのもどーかという声が聞こえてきそうですが、だから押し付けなんですってば。なんなら通信費も払ってますが何か?
なかなか既読にならないLINEにようやく返信あったと思ったら、タイトル画像のメッセージです。
──なるほど。来たね。
由緒正しく忌々しい矢崎家の血が流れるとは思えぬほどまともに育った24の娘が、宗教入れとか壺買えとか、いかがわしい勧誘の人を連れてくることはあり得ないので、まぁ、そういうことでしょうな。
「うん、いーよー」
別に平静装ってませんよ。まったく想定してなかったわけでもないし。
“その日”は、まず2人で会ってiPhoneのデータ移行を済ませてから夕食へ行くタイミングで、その“紹介したい人”を娘が召喚しました。
会いましたよ。
実直そうな青年でした。私くらいのスーパーお父さんになると娘の選択すべてを肯定できる自信ありますが、彼なら昭和の頑固オヤジでもたぶん取り乱さないでしょう。話してみても、まともな方だった。5歳年上のサラリーマン。あ、娘より、ですよ私じゃなく。
お付き合いしていますと。近々、籍を入れますと。
そうなんだ、よろしくねと伝え、後はありふれた会話をして過ごしました。みんなたちが期待する第2砲「新しい知的生命体の話」はないから。
2人を見てると、とても安心できた。荷物持ってーとか、次Netflixで何見よーとか、他愛もない会話を目の当たりにし、「あ、幸せなんだな」って。
娘が幸せなら、私も幸せ。
正直、やり直したい過ちはあるよ。まぁまぁたくさん(笑)。でも、娘が今幸せなら、私は過去のどのポイントにも戻りたいと思わない。このままでいい。このままがいい。
誰もがそうであるように、親子で過ごす日々が徐々に減るのは自然の摂理。いずれ親は先に逝く。父・泰久は死をもって私に多くを悟らせた。
親にとって子は日常の中心だから、成長は喜ばしくも、変化への戸惑いは必ず起こる。その日の出来事すべて話してくれていた子が、年に数回会えるかどうかになり、LINEの既読も簡単にはつかない。私も親に対してまったく同じだ。思えば母・陽子の瞳にも複雑な感情が宿っていた気がする。
私も同じ感情を抱く人生のフェーズに来たのだな。思わず、母に「元気?」と、唐突なLINEを送ってしまった(なお、母・陽子はまだ本件を知らない。初孫で特に思い入れ強いので、またいろんな思いが渦巻くこととなるでしょうなぁ……はぁ)。
小学校に入る直前に離婚した当時、私は娘とのつながりが切れることを恐れた。娘の母親(元妻)は理解ある人物で、その危惧は無用だったわけですが、正直、依存もあったと思う。なかなか子離れできないことを大人になってから本人に詫びた。情けないけど、常に何かしてあげていないと不安だった。
だから、自分がしてやれることは何でもしたし、何でも買ってあげた。小さいころは、くだらないガラクタで喜んでくれてたけど、いつしかiPhoneになり、とうとうジョブズの神通力を借りても太刀打ちできない領域へ到達してしまった……。
ふと、小さい頃の写真を見て、この子はどこへ行ってしまったのだろうと考えることがある。過去には戻りたくないと書いたけれど、もしこの子にもう一度会えたなら、私は抱きしめて離さないだろな。そして、絶対泣いちゃうんだ(でも、生成AI+VRで体験できるようになるかもしれませんよね)。
娘が幸せな人生を送って21xx年に天寿を全うするなら、私はいつただの灰になっても構わない。健康で、幸せでいてくれれば、もう何でもいい。信じてるけど、たまに恐ろしいニュースとか耳にすると、切に願ってしまう。
でも、信じる(しかないよねー)
娘に素敵な出会いがあって、本当に嬉しい。ただ、覚悟していた以上の寂しさもありましたという、中年ハタチ心の葛藤のご報告でございました。
メインシナリオはここまでです。サブは有料です。イトー君は、払ってくれるよねという意味で、おとももち以外の方におもしろコンテンツはございません。いただいたお金は、娘夫婦へのお祝いに使わせていただきます。
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