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NIPPYスカイミニの漉き性能は実際のところどうなのか

こんにちは、あっちです。

Twitterアカウントを開設した当日に、私は何となくスカイミニユーザーであることを紹介しました。

ただ、紹介してみたものの実はまだまだ使い込めているわけではありません。

なので、せっかくだからこの機会にいろんな革を漉いてみて、
「スカイミニの漉き性能」についてレビューしてみようと思います。

※前提として私は本職の方が使用されるようなフルサイズの漉き機を使用したことがないため比較はできません。あくまで趣味のレザークラフターが手漉きからスカイミニに移行してみた感想的なレビューになります。

前置き:漉き機について

レザークラフト沼にどっぷりはまり、革も工具も一通り揃えてしまった方が次に欲しくなってくるのは工業用ミシンか漉き機のどちらかでしょう。

今回のテーマは漉き機なので漉き機について取り上げますが、
私のように本職ではなく自宅かつ趣味でレザークラフトを楽しんでいる者が手を出しやすい漉き機の選択肢として、
中古を除いた場合には大きく2つ(※)あると思っています。
(※2020/07/31時点の個人調べ)

● ZIT TOOLSのフルサイズ漉き機『TK-801BL
● NIPPYの省スペース漉き機『スカイミニ

作業場のスペースに余裕がある方は迷わず前者を購入すると思います。

それでは作業場のスペースにあまり余裕はない方は ”迷わず" 後者を購入するでしょうか?

否、恐らくすべての人が即答で "YES" とは言えないと思っています。

なぜそう思っているのか?

それはズバリ「漉き性能に対する懸念」、更に言うならば「金額に対するパフォーマンスに納得できるかどうか」に不安を覚えるからだと思っています。

正直私はそうでした。

考えてもみてください。
フルサイズマシンのTK-801BLと省スペースマシンのスカイミニを金額で比較した場合、実は前者よりも、後者のスカイミニのほうが少しだけ高くなります。
しかもこれは本体価格だけの話で、スカイミニにフットペダルや抑え金ハンドルをオプションで付けた場合にはさらに金額差が広がり結果として20万円をオーバーするなかなか高い買い物になります。

その結果、

「同じ値段を出せばフルサイズの漉き機を買えるのに・・・」

「それでもスペースには代えられないからやっぱりスカイミニかな・・・」

「いやでも万が一スカイミニの性能が期待通りじゃなかったら・・・」

(以下ループ)

みたいなジレンマに悩み、購入に踏み出せなくなっていることと思います。

そこで

上記のような悩みを持ち、レビュー記事はないかとググりまくり、YouTubeで使用動画を見ては安心と不安に駆られてる方に向けて、

スカイミニユーザー374人(※)のうちの1人である私が、
購入を検討する際の大きな障壁である「漉き性能への懸念」について実際どうだったのかレビューを書くことで、購入するか迷っている方の悩みを解決するのに多少は役立てるのではないかと考えています。

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(※NIPPYスカイミニ公式サイトの当時の販売台数)

前置きが大変長くなりましたが、いよいよ本編に入ります。

検証環境

使用する機材はもちろんNIPPYスカイミニ

セットアップは初期状態からほとんど弄っておらず、
刃も高級刃ではなく普通の替え刃です。

ただ、抑え金だけは【NIPPY公式】家庭用革漉き機をお探しの方必見!スカイミニお問い合わせ事例集~ご購入者様編~という記事より、
「Q.革がうまく漉けない!漉き方を教えてほしい!」
の項目を参考にテフロンテープを張っています。


今回検証に使用する革はこんな感じです。

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 | 厚さ   | 質感
ーーーーーーーーーー
A | 2.2mm | しっかり
ーーーーーーーーーー
B | 1.5mm | 超しっかり
ーーーーーーーーーー
C | 1.8mm | しっとり
ーーーーーーーーーー
D | 1.2mm | やわらか
ーーーーーーーーーー

家にあった革の中で出来る限りバリエーションが豊かになるように構成してます。革の種類は覚えてなかったので質感(主観)を記載してみました。

検証項目はシンプルに
段漉き・斜め漉き・ベタ漉きの3項目でやっていこうと思います。
本当はもっと細かく段階を分けて漉いてみるとか、何ミリに漉くか指定して~とかやったほうがいいと思うのですが、面倒なのでやりません。
「普段手作業で漉くとき大体これくらいに漉いてたなぁ」くらいの温度感でやっていきます。

Aの革(2.2mm, しっかり)

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分厚くしっかりとした革です。
こちらの革は革包丁でもサクッとした感触で漉きやすいので、
スカイミニでも上手く漉けると予想してます。

段漉き

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今回使用した革の中で最も分厚いものでしたが難なく送れました。
漉き上りも綺麗で厚さも1.1mmと1/2の厚さドンピシャで漉くことが出来ました。

斜め漉き

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セットアップが悪くて若干段漉きとの差が分かりづらいですが、
斜め漉き(写真右側)もいい感じに漉けていそうです。

Bの革(1.5mm, 超しっかり)

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たしかキップのガラス仕上げです。
きめが細かくて密っ!て感じの革です。
これも比較的革包丁でも漉きやすい部類に入るのですが、固さの違う層が何段階かあり、癖があるため漉くには少しコツがいるような印象です。

段漉き

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今回使用した革の中では最も固い部類に入る革でしたが、こちらも問題なく漉けました。
漉きあがりも多少ムラがあるものの許容の範囲内で、厚さも7.5mmとこれまた1/2ドンピシャで漉くことが出来ました。

斜め漉き

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斜め漉きも無難な感じで仕上がりました。
・・・が、そもそもの話斜め漉きのセットアップ自体がかなり難しいです。
こればかりは自分が慣れていないからだと思いますが、段漉きと違って革の厚みに合わせて抑えの角度を微妙に変える必要があるので、段差を付けずに綺麗な斜め漉きをするにはかなりの練習が必要そうだなとこの時思ってました。

Cの革(1.8mm, しっとり)

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貰いものの革なので何の革か詳しく分かってないですが、オイルたっぷりめなブルハイド的な感じがします。
こちらはこれまでのAやBと違って革がしっとりと柔らかい印象で、
革包丁を入れるとヌッとした感触で漉けなくはないですが、切れ味が悪いと革が伸びるので個人的には難しい分類に入ります。

段漉き

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漉きすぎました。1/3くらいの薄さになっちゃった。
でも、仕上がり自体は悪くなく柔らかめな革でもしっかりと薄く漉けることが分かったので検証としては成功でした。

斜め漉き

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漉けました。
ただ、セットアップが甘いのか段漉きとあまり見た目が変わらなくなっちゃいました。

Dの革(1.2mm, やわらか)

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こちらの革はクロム鞣しではなかったと思いますがかなりスムースでソフトな質感です。
今回使用した革の中では一番薄い革ですが、床面は意外としっかりしているので切れ味のいい革包丁だと漉けます。ちょっとでも切れ味が悪いと伸びるので注意が必要です。

段漉き

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0.77mmくらいまでの厚さに漉きましたが、大事には至らなかったものの漉き始めに少しシワが寄るくらい引っかかっちゃいました。手で引っ張りながら送れば安定しましたが、薄くて柔らかい目の革は漉き始めに少し工夫が必要そうです。

斜め漉き

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失敗しました。
後半のほうが綺麗に漉けず、その部分だけ何度か漉きなおしてみましたが上手くいきませんでした。
スカイミニの刃の切れ味はそこまで悪い状態ではなかったので、抑え金のセットアップ具合や革との相性とうまく噛み合わなかったんだと思います。

べた漉き

最後にべた漉きです。
べた漉き用に革を用意するのが面倒だったので、コバ漉きに使った革を再利用しました。

結果がまとめてご覧ください。

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Cのしっとり革だけ盛大に失敗しました。
部分的にちぎれるとかじゃなくて全体的にきれいに持っていかれてたので、スカイミニが悪いのではなくセットアップに問題がありました。

その他の革は画像ではわかりにくいかもですが、割といい感じに漉けています。特に左二つ。やはり革包丁でも漉きやすい革は漉き機も得意なようです。

ちなみに、今回は失敗してしまったCのしっとり革ですが、
以前に同じ革をハーフウォレットの外装用にも使用したことがあって、その時にベタ漉きをしてみたら結構いい感じにできたので、今回の失敗はスカイミニのせいじゃないんだよ!っていう点だけご留意ください。

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ちなみにこちらが実際のべた漉きした外装用に裁断した革ですが、漉くのが下手で境界線が出ちゃったものの革包丁でそこだけ均せば問題ない品質になりました。

おまけ:漉き跡

段漉き直後の革の銀面ですが、どうでしょうか?
Aの革が若干跡が分かりますが、それ以外は特に気にならないように思います。
これもテフロンテープの効果でしょうか。

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まとめ

先に結論だけ書いておきます。

● スカイミニはちゃんとセットアップ出来れば十分な漉き性能がある
● べた漉きも思ったよりできる
● それでもちょっと高いなと思うのでどうしてもスペースを確保できない人向け

スカイミニ、結構やれます。
得意不得意はあるものの、そこは革包丁やフルサイズの漉き機も苦手な箇所だったりするのでスカイミニに限った弱点ではないと思っています。

ただ、値段に対してパフォーマンスが低いという印象は多少は薄れたものの、それでも、ちょっと高いな~・・・というのが正直なところです。

省スペース性能なんかを考慮すれば(趣味で使う分には)十分な性能があると思うのですが、せめてオプション含めて20万以下に収まっていて欲しいなと思ってしまいます。

また、「スカイミニは替え刃式だからランニングコストがかかるんじゃないの?」みたいな問題もあるんですが、そこはさんた屋さんの包丁研ぎサポーター+スカイミニ替え刃研ぎアタッチメントが一定解決してくれています。
スカイミニを買う方はセットで買いましょう。

スカイミニが家に来て作業環境が大きく変わったのは紛れもない事実です。
今まであんなに手間だった漉き作業が明らかに楽になりました。
べた漉きみたいな革包丁じゃ(技術的に)ほぼ不可能だった作業も出来るようになりました。

購入するには少し高いなと思う代物でも、すでに購入してしまった私からすれば何も問題ではありません。どんどん使い倒して作品を作っていこうと思います。

以上、もしこの記事が何かしら参考になりましたら幸いです。


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