たくさんのキミへ
これまで、キミが笑顔で退院していく姿をたくさん見送ってきた。
ハグしてくれたキミ、何度も振り返って手を振ってくれたキミ、感謝を伝えてくれたキミのお母さん。
入院生活を共にしてきたキミの友達や、ママ友パパ友たちの絆を感じる瞬間でもある。
全国各地から患者さんが集まっているから、中には5時間も6時間もかけて家に帰る家族もいる。
どんな入院生活だったかな。
キミはこれからどんな風に生きていくのかな。
勝手に想像しながら、ウルウルする。
一方で、残り数日もしくは残り数時間の命になったキミも見送ってきた。
我が子がもうすぐ亡くなるというのに、手を合わせ、涙を流しながら、病院スタッフ一人ひとりに深々と感謝を伝えるキミのご両親の姿を見てきた。
多くの患者さんは、生きているうちに家に帰り、最期の時間を家族と過ごす。
キミにとって、人生の終盤を過ごした入院生活はどんな思い出になったかな。
残された親、きょうだい、親戚は、これからの人生をどのように歩んでいくんだろう。
キミを乗せ、病院を去る車を見ながらグッと感情を堪える。
今、ボクが直接キミと関わることができるのは、病院の中でだけ。
制限された環境下で辛い治療をしないといけない、入院生活の中でだけ。
それでも変わらずに見せてくれるキミの笑顔に、ボクは救われる。
じゃあ、キミにとってボクはどんな存在になれたらいいのかな。
いち病院として、キミと伴走する体制をどうやって整えていこうかな。
キミをサポートしてくれる周りの人や社会を、どうやって巻き込んでいけるかな。
そんなことを考える。
幸せな生き方・逝き方って何だろう。
ねえ、ちょっとくらいアドバイスちょうだいよ。
人のため、子どものために行動していて偉いね、凄いね、と言われることもあるけれど。
でもそれは、ボクがただ好きなことをやっているだけなんだよ。
大好きだから毎日続けることができている。
大好きだから、キミが大好きだから、どうしたらキミがもっと笑えるか、自然と考える。
本当にただそれだけ。
これから先、辛いことや傷つくことがあった時、ボクはキミの笑顔を思い出すと思う。
キミも、これから先、壁にぶつかった時、頭の片隅にでもボクの顔が出てきて、
「ま、もうひと踏ん張りしてみるか。のんびりいこか!」
なんて気持ちになってくれたら、嬉しいな。
ごめん、ちょっとおこがましいか。
キミと一緒に過ごす時間が大好きだった。
キミの家族の温かさが大好きだった。
まっすぐなキミからたくさんのことを教わった。
日々の楽しみ方、幸せの見つけ方、気持ちの伝え方、大人にばれないイタズラのやり方。
純粋でキラキラした笑顔も、ちょっと悪いことを考えていそうな笑顔も、涙を流しながら見せてくれた笑顔も、全部大好きだった。
キミに出会って、キミの家族に出会って、ボクはとても救われた。
出会ってくれて、ありがとう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?