『野球狂の詩』可憐な花・・、だけではないメッセージ
レジェンドアイドル・木之内みどりさんが、唯一の主演映画として残してくれた作品 『野球狂の詩(1977年)』 。
なぜかアマゾン・プライムにアップされているのを発見し、深く考えずに 視聴しましたが、視聴後も何か気になり、繰り返し観てしまいました。
もちろん、木之内みどりさんの魅力は、今見てもなお印象的です。ですが この映画には、それだけではない、今だからこそ、心にささるものを感じましたので、思いついたことをシェアさせて頂きました。
『野球狂の詩』(やきゅうきょうのうた)は、1970年代に『週刊少年マガジン』に掲載された水島新司の野球漫画で、リアルタイム・ファンの方からはウンチクが聞こえてきそうですが、今回はその説明は省きます。
この映画はその実写版ですが、“プロ野球史上初の女性投手・水原勇気”という挑戦者の役柄を、木之内みどりさんが独特なキャラクターで見事に演じています。
木之内みどりさんといえば、「刑事犬カール」などで、清純派アイドルというイメージを持つ人が多いと思いますが、今回はそれに ”勝負魂” が加わり、深いメッセージに気づかせてくれました。
今回は、ご期待を察し、写真を多めに、説明を凝縮してお届けします。
もともと動物学者になることを夢見ていた女子高校生、水原勇気(木之内みどり)は、女子野球部のエースでもありましたが、53歳でなお東京メッツの現役投手、岩田鉄五郎にその才能を見出され、ドラフト指名の後、ついに プロ野球入りを決意します。
昔は、“野球は男の世界”=偏屈で排他的な世界ですから、水原への風当たりはきつく、彼女は実力を見せる以外に方法はありませんでした。残念ながら先駆者というのは、どうしても人一倍のエネルギーが要求されるようです。(でも近年は、あらゆる面でそうしたハードルは低くなりつつあることは確かですが)
水原のスゴい点・その1:いったん覚悟を決めたら淡々とやる。
いよいよ水原の初マウンドの瞬間が来ました。 大接戦の中、ピッチャー交代のアナウンスが流れます。こういう時、どんな選手も心に葛藤があり、チームの勝利の為とか、複雑な思いを胸にします。
しかし、水原には全く気負いがありません。一度覚悟を決めたら勝負に集中し、余計なことは考えないのですね。
まるで “そよ風” に吹かれているような気分にさせてくれます。
私などはこの切り替えが下手で、水原のような存在に救われる気持ちになる瞬間がよくあります。
水原のスゴい点・その2:チームメートと思いを共有する。
2アウト2-3、一打逆転という切羽詰まった場面で、水原はキャッチャーを呼び、未完成の決め球、「ドリームボール」を投げたいと告げる。 どうなるかわからないが、「やってみよう」と覚悟を決めるバッテリー。
男も女もヘチマもないワケですが、支え合うことで、力が倍増することを 知っているのですね。全力で立ち向かう思いを共有する。もはや結果は 関係なく、それだけで十分なのです。
水原のスゴい点・その3:魂で通じ合う協力者がいる。
この映画にはノムさんこと、故・野村克也さんも共演しています。
ノムさんは水原の前に三振するのですが、その直後、彼女の球界入りを後押しします。“魂のぶつかり合い” を、本物の勝負師は求めているのでしょう。
話しが前後しますが、ノムさんとの対決は、水原がメッツに入団する決定的な要因となりました。
水原のスゴい点・その4:しぶとい。
初マウンドの接戦は、水原の粘りの好投で勝利します。ですが、展開は意外に泥臭く、粘り強さが要求されましたが、水原はその点も踏ん張りました。あっさり勝利していたら、チームの信頼感は勝ち得なかったでしょう。
水原の必死さが、皆の協力と運をも呼び込んだのです。 この点もこの映画はよくできていました。
最後に。
『野球狂の詩』 は、映画やドラマ、テレビアニメなど、様々なかたちで放映されました。単行本は全17巻ありますが、実は、水原勇気が登場するのは 10巻の第四話からです。
つまり、水原勇気も、たくさんいる野球狂の1人だったということなのですが、この映画のメッセージとして、下記でまとめたいと思います。
プロ野球という勝負の世界に、水原勇気という独特な投手がいた。 その勝負魂と実力は誰もが認めるものとなり、チームはその選手を 仲間として受け入れ、次第に支え合うことを覚えた。
だがその選手は、可憐な花のようで、優しい心を持った女性だった。
ものごとは、逆さまに考えると偏見がなくなることがあります。
多くの場合、何が肝心かを先に考えれば、男女の差というのは忘れてしまうほど小さなことだったりするのですね。
おまけショット。木之内みどりさん、ありがとうございました。
(おわり)