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初日の出と白くてでけー鳥

夜行バスで早朝に仙台駅に着いて、迎えに来てくれた家族と共にそのまま初日の出を見に行った。
日の出の1時間前に仙台城跡に着いたので、日は全然昇っていなかった。
仕方ないから車の中でバウンディを聴きながら空が白むのを待って、人が集まる前に良いポジションをゲットした。
結構若い集団もいて、そいつらにせっかくゲットしたベストポジションを横取りされないように注意を払っていた。
そうこうしているうちに、空はどんどん明るくなり、人はどんどん集まり始めた。100人から150人くらいはいたんじゃないだろうか。
早朝の仙台城跡にわざわざこれほど人が集まるんだなと思いながら、私はその集団の中でも結構良い位置にいるのである。
人々は背伸びをしたり、おしゃべりをしたり、ベンチに昇ってはやっぱりマナーが悪いからとすぐ降りたりして、日の出を今か今かと待っている。日の出まであと数分である。
雲の稜線がだんだんとオレンジ色のハイライトに縁取られていく様をみんなが固唾を飲んで見守っている中、白くてでけー鳥がみんなの視界を悠々と、左から右に横切って消えていった。
日の出などに目もくれず、まっすぐに森の中に消えていったその鳥を見て、あいつにとっては、今日も昨日と変わらない同じ毎日であることに気がついた。あの鳥は、ここで私たちが集まっていることを不思議にも思わず、自分が100人超の人間に見られていることも気にせず、今日が新年であり、一年に一回しかないおめでたい日であることも気にせずに、いつもと同じように飛んでいるだけである。
ふと、自分の行動が全て、とんでもなく無駄なことに思えてきた。
日が昇った。
みんなが歓声をあげて、スマホやカメラを空に掲げる。
私も負けじと、買ったばかりのフィルムカメラのシャッターを切った。
だが、昇った朝日を綺麗だとは、もう思えなかった。
騒いだ若者の集団が近寄ってきたので、おとなしく場所を空けた。
隣で見ていた弟も何も言わなかった。
この朝日は明日も昇る。
何も変わりはしない。
変わるのは私たちの心情だけである。

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