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多様な研究資金の戦略的獲得が若手研究者の研究費不足を解決する鍵となるか? #博士の選択

※記事の内容は「博士の選択」掲載当時(2017年)のものです。

研究者を取り巻く研究費事情

『研究費』は研究者に無くてはならないものであり、個人にとっても組織にとっても、常 に悩みのタネかと思います。研究費獲得のために短期的に成果が出やすい規模の研究や、社会的なインパクトが期待される応用研究を選択する方もいらっしゃる でしょう。しかし長い年月をかけて進められる基礎研究は研究助成金の競合も多く、特に博士学生やポスドクの多くは必然的に大きなプロジェクトの中で少しず つ成果を上げていくことになるのではないでしょうか。

昨年11月には研究費について衆議院議員の河野太郎議員が研究者に向けて意見を募り話題となり、改めて全体として研究へ投資される金額は増加し続けていることが認識されました。しかし競争的資金である以上、全体の金額が増えても全ての研究 者が必要なだけ研究費を獲得できるわけではありません。必ず研究費不足に苦しむ個人や組織が出てきますし、研究プロジェクトに紐付けられている有期雇用の 特任教員の割合が徐々に増えてきていることから、研究へ専念することを阻む経済的・心理的な不安も付き纏います。

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)による主要な11の研究大学(RU11)を対象とする調査結果をまとめた岡本・岡本(2015)に よると、平成19年から平成25年にかけて大学教員のポストは全体として増加していることが明らかです。しかし任期無し教員は実数・割合ともに減少してお り、任期付き教員の増加が全体のポスト増加に繋がっていることが分かります(下図を参照)。例え数字が出ていなくとも大学院生や若手研究者は日常的にこう
いったネガティブな話を耳にしていることでしょう。任期付きの教員はポスドクとほぼ同義であり、数年経てば新たなポストを獲得する必要があるため、そもそ も生活するための経済的基盤に不安が残ります。

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RU11における任期付き・任期無し教員数の推移(出典:岡本・岡本(2015: 6, 図4))

また文部科学省が公開している「平成28年度科学研究費助成事業の配分について」 を確認すると、近年は科研費1件あたりの平均配分額は減少傾向にあり、平成24年度の平均額が約241万円なのに対して、平成28年度の平均額は平均 214万円と、最近5年間で平均約27万円も減っていることが分かります。さらに同資料は39歳以下の「若手研究者」(注:科研費における年齢による定 義)は応募資格者の減少とともに全体に対する採択率も微減してきていることも報告しています(下図を参照/出典:同報告11ページ図9-2)。採択件数で 見ると極端な増減は見られませんが、1件あたりの金額が減少していることを加味すると「若手研究者」に分配されている研究費は確実に減少し続けています。

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