超短編:みつあみまつげ
いまでこそ、まつ毛は長い方が美人、というのは定番だが、その昔、長すぎるまつ毛をもつ魔女がいた。彼女は本当のところ魔女ではなかったのだが、街の人から魔女だと思われ、蔑まれていた。
なぜかって?長すぎるまつげは前から見ても髪の毛のように見えていて、首が前後逆についているように見えていたし、本人も睫毛で前だ見えないのでしょっちゅう誰もいない壁に向かって話しかけていたから。
そんな彼女と友達になったのは、嫌われ者の小さなハリネズミだった。
ハリネズミは体が小さくて、長い睫毛の下から彼女の顔を覗くことができた。
ハリネズミは前が見えない彼女ために、まつ毛を高く結い上げて世界が見えるようにしてやった。
世界が見えるようになった彼女が最初に見たものは、街の人の自分への冷たい視線。
人々を見ないように目をそらすと、足下の道は街の門を超え、はるかかなたの大地まで続いていることに気づいた。
彼女はハリネズミをつれて、この街を出ると決めた。
三つ編みまつ毛の騎士が誕生するのは、もうすこし先のお話。