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つながるためのコミュニケーション

ちょうど4か月前に「リアルとオンライン、何が違うのか?」という記事を書きました。

この記事では、ライブラリー会員の青木高夫さんと、リアルで開催するイベント(対面)とオンラインによるイベント(非対面)では、何が違うのか?について話をしたことを書いています。

久しぶりに、青木さんからメールをいただきました。
「最近、偶然にも『リモートのみ』と『リアル+リモート』の研修講義を、別々の企業で並行して行うことになり、面白い比較実験が出来ました。『リモートのみ』では相手との隔意が拭いきれなかった気がします。」という内容でした。

私も前の記事を書いて以来、「リアルとオンライン、何が違うのか?」を見つけるための手掛かりとして、何冊が本を読みました。その中で、とても気になった本が、岡ノ谷一夫氏の本でした。

気になった箇所を引用します。


文化人類学者ダン・スペルベルは、1986年『関連性理論』という著作の中で、コミュニケーションには「伝達意図」と「伝達内容」があるといいました。つまり、情報を伝達することだけがコミュニケーションなのではなく、伝達したいという意図それ自体もコミュニケーションの大切な部分だということです。(257ページからの引用)


コミュニケーションは、集団をつながらせる、くっつけておく機能をもっている。つながることは、信頼と、親和性を維持させるという機能がある。
(中略)
コミュニケーションは、「つながること+情報を与えること」で成り立っていて、つながることが線路だとしたら、情報はそこを行き来する電車のようなものかもしれない。(260ページからの引用)


また、岡野氏はこの著書の中で、人間は言葉を持つことで、感情情報言語情報が乖離していき、遠隔コミュニケーションによってその乖離は広がっていると記されていますが、遠隔コミュニケーションでどこまで感情情報が伝えられるかを試みていらっしゃいます。
しかし限界もあると言われます。それは「場の共有」です。場を共有することで、相手を殴ったり、抱きしめたりできる、そんな究極的な感情表現が可能だからと説明されています。

冒頭の青木さんからのメールの「『リモートのみ』では相手との隔意が拭いきれなかった気がします」というのは、リモートのみでは感情情報の伝達には限界があったのかではないかと推測します。

アカデミーヒルズでは、4月から少人数によるリアルイベントを開催し始めています。そこで感じるのは、一緒にいる(場を共有している)ことの安心感です。
「メラビアンの法則」では、話し手が聞き手に与える影響として、話の内容などの言語情報が7%、口調などの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%だと言われます。場を共有することで、聴覚・視覚の情報を共有しやすくなるのだと思います。その点で、オンラインでも感情情報を伝えることは可能だと思いますが、ハードルがぐっと高くなるのではないでしょうか。

一方で、テクノロジーの進化によりコミュニケーションの方法はどんどん多様化しています。
2021年の夏ごろに、“分身ロボットカフェ”で、遠隔コミュニケーションによるサービスを受けたことがあります。
リアルにいるのはロボットですが、なぜかその人がそばにいてくれるような不思議な感覚がありました。

そして、2022年は「web3元年」と言われ、メタバースの世界で身体性から解放されて複数の自己を使いこなす時代が、すぐそこまで来ています。
テクノロジーの進化によって、私たちの感性も進化・拡張されるのでしょうか?
そのときに、人間がコミュニケーションに求める本質である「つながること+情報を与えること」は変わるのか、変わらないのか?
本質は変わらないとしても、「つながる」という意味合いは変化するかもしれないなと思いました。

※青木さんが始められたブログ「当世事業人気質(とうせいじぎょうじんかたぎ)」はこちらです。

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ  #「つながり」の進化生物学 #岡ノ谷一夫 #コミュニケーション #分身ロボット #web3 #メタバース #アバター #メラビアンの法則 #青木高夫


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