「出来るか / 出来ないか」ではなく「するか / しないか」-竹中平蔵アカデミーヒルズ理事長からの学び-
竹中先生は、2006年12月にアカデミーヒルズ理事長へ就任いただいて以来、17年以上、理事長を務めてくださり、その期間に多くのプロジェクトをご一緒させていただきました。
こちらは、理事長就任時の竹中先生のメッセージです。
このメッセージの中には、都市の魅力や新しいライフスタイルについて記載がされています(以下が抜粋です)。
アカデミーヒルズを舞台に展開した様々なプロジェクトの根底には、「多様な人と交わり、新しいライフスタイルを創り体現しよう」という竹中先生の想いがあったのだと思います。
アカデミーヒルズで開催した竹中先生とご一緒したプロジェクトを紹介します。
ライフスタイルサロン
2007年にスタートしたプロジェクトです。
1年目は竹中先生にモデレーターを務めていただき、1冊の本をテーマにその著者をお招きして対談いただきました。
記念すべき第1回には、『ぼくの複線人生』の著者、福原義春氏(当時:資生堂名誉会長)をお招きしました。
福原氏の言葉、「20世紀はいかに早く走るかが重要だったが、21世紀はいかに美しく走るかが大切になる」がとても印象的でした。
2年目は「編集力シリーズ」として、安藤礼二氏(当時:評論家/多摩美術大学准教授)にモデレーターを務めていただき、竹中先生とゲストの対談の進行役を務めていただきました。
ゲストには、デザイナーの佐藤可士和氏をはじめ魅力的な方々にお越しいただきました。
六本木アートカレッジ
次は、2011年にスタートした六本木アートカレッジです。
自分らしいライフスタイルを送るためには、自分軸を持つことが大切ではないか、という考え方からスタートしたプロジェクトです。
アートに触れ、アート的視点を持つことにより自分の軸を創り、自分らしく生きる個人を育む、それが六本木アートカレッジの目的です。
(竹中先生のコメントはこちら)
Innovative City Forum
そして、六本木ヒルズ10周年を記念して、2013年にスタートしたのが、森記念財団都市戦略研究所、森美術館、アカデミーヒルズが企画するInnovative CIty Forumです。
「20年後の私たちはどのように生きるのか?」という問いを持って、「都市とライフスタイルの未来を描く」を議論する国際会議です。
2013年から2022年まで毎年秋に開催されましたが、この10年間にご登壇いただいた人数は400名以上で、その3割以上が海外からの登壇で、その国数は31ヵ国にも及びました。
2024年6月30日のアカデミーヒルズの施設(六本木ヒルズ森タワー49階)の閉館に伴い、竹中先生の理事長任期も終了いたしますが、多くのプロジェクトをご一緒させていただきました。
その活動の中、私個人が印象に残っている竹中先生の言葉をご紹介したいと思います。
1か月に1回なんてケチ臭い、1週間に1回にしましょう!
2007年春に開催した、ライブラリーメンバーと竹中先生の交流イベント「竹中理事長と語る会」での出来事です。
司会をしていた私が、「2007年度からライブラリーメンバー対象のイベント『ライブラリートーク』をスタートします。是非皆さん参加してくださいね」と紹介したところ、竹中先生が「それは良いことですね。開催頻度は?」と尋ねられたので、私が「月に1回程度を予定しています!」と答えたところ、竹中先生から「え!月1回? そんなケチ臭いこと言わずに、週に1回開催したらいいじゃない!」とのコメントに続いて、「メンバーの皆さんも月1回じゃなくて、週1回の方がいいよね!」という竹中先生の呼びかけに拍手が止まらない状態に…。
私は頭の中が真っ白になりつつ、「え、え、え、では週1回開催出来るようにがんばります!!」とその場の雰囲気に飲み込まれて宣言してしまいました。
企画するのは大変でしたが、「1週間に1回開催する」と目標を定めると、それが当たり前のように動き始めて、1年間でほぼ50回開催することができました。
その当時は、メンバーから「お疲れ様、約束が守れて良かったね!」と労いの言葉を頂きました。
そして、この竹中先生の一言がきっかけになり、2007年以降コロナ禍になるまでは、ほぼ1週間に1回の頻度でライブラリーメンバー対象のイベントを開催してきました。
竹中先生の一言で目線を高くしてもらったと思います。
大変なことは分かった。どうしたら出来るかを考えよう!
また、ある時、竹中先生より「●月●日にイベントを開催したい。登壇者がその日しか都合が合わず、会場を調整して欲しい」との連絡がありました。
あいにく49階の会場は予約で一杯でした。六本木ヒルズクラブ等の六本木ヒルズ内にあるイベントが開催出来そうな場所を確認しましたが、全てNGでした。
そこで、竹中先生へ「49階だけではなくヒルズ内の会場を確認しましたが、どこも予約で一杯でその日の開催は難しいです」とお伝えしたら、「そう、色々調べてくれてありがとう。ではどうしたらこの日に開催できるかを考えましょう!」とのコメント。
正直なところ、私は言葉を失ってしまいましたが、色々な可能性について検討した結果、20時30分スタートで21時50分終了(時間厳守)ということで、49階の会場でイベントを開催したことを覚えています。
私が言葉を失った原因は、私の思考回路が「出来ない」からスタートしていることを竹中先生は見抜いていらっしゃったのだと感じたからです。
「出来ない」からスタートすると、当たり前ですが出来ません。だからこそ「どうしたら出来るか?」からスタートしなければならないことを体験させてもらいました。
このような経験を積んできた私の教訓は、
「課題に対して、これは『出来る / 出来ない』と判断している段階で、既に自分の能力に制約をかけているのではないか。選択肢は『するか / しないか』ではないか!」ということです。
もっと言うと、『するか / しないか』ではなく、本当に自分が「やりたい」と思っているかが基準になります。「どこまで真剣に自分はこれをやりたいと思っているか!」を自分に問うことなのだと思います。
これは、六本木アートカレッジが目指していた自分軸につながると思います。
今振り返ってみて、竹中先生から多くのことを学んだ17年間だったと思います。
アカデミーヒルズの事務局として、そして個人的にも竹中先生へ感謝をしています。
本当にありがとうございました。
アカデミーヒルズ 熊田ふみ子
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