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弱い体験が、その人らしいウェルビーイングをつくる
森美術館のMAMCメンバーと、アカデミーヒルズのライブラリーメンバーを対象にしたイベント「森美術館鑑賞+アフタートーク」を開催しました。
このイベントは、展覧会の企画者のひとりである熊倉晴子さん(森美術館アシスタント・キュレーター)に解説していただきながらの展覧会の鑑賞と、参加された皆さんと感想などをシェアするアフタートークの2部構成です。今回はゲストとして、予防医学研究者の石川善樹さんが特別に参加してくださいました。
そして、アフタートークでは石川さんが、ウェルビーイングと体験の強弱の関係について、とても興味深いお話をしてくださいました。
ウェルビーイングは体験か記憶か?
ウェルビーイングは感覚的なものになりますが、それを作り上げているのは体験なのか?記憶なのか?という問題になるそうです。結論は「記憶」なんだそうです。
あえて言うならば、体験はリアルで記憶はフェイクです。今回の「展覧会を鑑賞する」という体験は皆さん同じです。しかし、それに対する記憶は人それぞれです。そして、何を記憶したのかが、その人が将来どのような感情を持つかに影響しているそうです。言い換えるならば、ウェルビーイングは記憶の積み重ねになります。
強い体験と弱い体験
次に、何を記憶するか?が問題になってきます。
強い体験は記憶として残りやすいところですが、その人らしさが表れるのは弱い体験からの記憶です。そして、その記憶でその人らしいウェルビーイングがつくられるそうです。
例えば「小学生のときに、校長先生がおやじギャグを言った」という出来事は弱い体験です。しかし数年後にふと思い出すという経験をした方は多いと思います。それはその人の記憶の癖で、それがその人のウェルビーイングの癖とも言えます。
アートとエンタメの関係
その話から、キュレーターの熊倉さんは「それはアートとエンタメの関係にも似ていますね」とお話ししてくれました。
アートは、小さな感動や感情、弱い記憶から作品が作られることも多いですが、一方エンタメは、誰の記憶にも残る強い感動、記憶が求められるという点において、違いがあるのかもしれないとのことでした。
時代は弱い体験へシフトか?
ところで、若年層を中心に「映え疲れ」という現象が起こっています。
石川さんは、「強い体験は強い刺激が必要で、刺激は強くなると個性がなくなる。しかし、弱さにはバリエーションがあり、自分らしさの表現につながる」と映え疲れを読み解かれていました。
今回のアフタートークでは、ウェルビーイングをキーワードに幅広くトークが展開されました。
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右:アフタートークで感想などをシェアする参加者の皆さん。
森美術館の「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」の会期中(6月29日~11月6日)に、「森美術館鑑賞+アフタートーク」を3回ほど開催しました。
今後も森美術館の展覧会ごとに開催したいと思います。
また、今回の解説を担当くださったキュレーターの熊倉さんのアートへの想いは、下記の記事をお読みください!
アカデミーヒルズ 熊田ふみ子