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貧富の格差が、イノベーションを産み出す
一般的に、どの国においても、貧富の格差は、悪であり、是正されねばならないという論調が、主であると思います。
しかし、約100年前に実在したヨーゼフ・シュンペーターと呼ばれる経済学者は、"イノベーションによってのみ、経済成長は起こり得る"という主張を行い、その主張は、世界的にも、正しい主張であると見做されております。
そして、シュンペーターの主張を紐解いてみれば、"イノベーションは、貧富の格差がなければ、起こり得ない"という命題が、成り立ち得る訳です。
実際、近代史上、数々のイノベーションを巻き起こしてきたアメリカは、その事を、如実に証明しております。
なので、今回は、"貧富の格差こそが、イノベーションを起こす"という事が正しい事であると確認した後、"如何にすれば、日本においても、イノベーションを起こす事が出来るのか?"という考察を、述べさせていただこうと思います。
1.イノベーションの基本原理
まず、一般的に、イノベーションが起きるためには、"膨大な量の試行錯誤"が必要不可欠であるとされております。
なので、そもそも、余剰な資金が無ければ、新しい事にチャレンジする事自体が、不可能でありますので、富の集約こそが、イノベーションに必要であると言える訳です。
そして、具体的に、イノベーションが起こるためには、ある程度の富を持つ企業、あるいは、ある程度の富を持つ資本家のいずれかの存在が必要であるとされております。
前者については、GAFAM等の大企業の方が、潤沢な資金を用いて、研究開発を率先的に行っている事からも、想像し易いと思います。
更に、後者で言えば、裕福な資本家も、ベンチャーキャピタルとして、資本を持たない起業家に投資を行い、後々リターンを得るという事を行う訳ですから、イノベーター達の富の集約を図るという目的を果たす上において、一役を担う訳です。
つまり、簡単に言えば、イノベーションというのは、イノベーションを起こし得るような、潜在的なイノベーターに、富を集約させる事によってのみ起こすことが出来るという事です。
2.誰がイノベーションを起こすのか?
次に、一般的に、"アントレプレナーシップ(起業家精神)が高い人々というのは、親の所得が高い、子供の頃から知能が高い、若い男性であるという特徴があるとされております。
特に、その中でも、親の所得が高い事は最も重要で、子供の頃から知能が高い人々であっても、親の所得が高いという条件を満たさなければ、イノベーターとなる可能性は落ちてしまうという事です。
そして、性別で言えば、女性よりは、圧倒的に、男性の方が、イノベーターに成りやすいとされております。
最後に、若ければ若い程、アントレプレナーシップが高くなり、加齢に伴って、アントレプレナーシップは減退し続けるという事も言われております。
3.イノベーションが起こらない場合の対処法
ただし、無作為に、貧富の格差を拡大し続ければ、イノベーションの創出に貢献しない富裕層や大企業の元に、富が集約してしまう事も考えられます。
なので、そういった状態に陥った場合は、そういった富裕層や企業に対し、発破を掛けるという意味で、富裕層や大企業に対する課税を強化したり、赤字国債を発行するという事を介し、富の再分配を行う事が需要となる訳です。
そして、富の再分配を行う事は、競合を増やし、競争を促すという事にも繋がりますから、そういう側面においても、イノベーションを促す効果があると言える訳です。
4.大学や企業の統合は、重要である
しかし、競合相手が多すぎれば、過当競争が起き、競合者一人当たりに蓄積される富が減ってしまいます。
そう考えれば、数少ない学生を奪い合って、過当競争状態にある日本の大学が、年々、各方面で、衰退してしまっている事にも説明が付きます。
ですから、日本の大学が、よりイノベーションを起こし得る存在であるためには、統合を行い、富の集約化を図る必要があると言える訳です。
そして、企業についても、同様に、企業の経営統合が起こった方が、イノベーションは促進され得ると考える事が出来ます。
5.先進国と少子化のジレンマ
前述の内容を踏まえれば、国民一人当たりの持ち得る富を増やすという事が、イノベーションを起こすためには重要であると言える訳で、そう考えれば、先進国において、少子化が進んでしまう事は必然であるとも考えられる訳です。
何故なら、子持ち世帯においては、子供一人に対し、膨大な教育費やその他資金を投じる事こそが、将来、その子供が、イノベーションを起こし、成功者となるためには必要である訳で、そう考えると、自ずと、一世帯当たりの子供の数は減ってしまうと考えられます。
更に、家庭や子供を持つという事は、自身の所得を分配するという事に等しい訳ですから、非正規雇用労働者等、所得の少ない人々にとっては、元々の保有する富が少ない訳ですから、イノベーションを起こせる存在であり続けるためには、家庭や子供を持つ事を諦めて、独身であり続ける事を選択する他ないという訳です。
まとめ.
日本において、解りやすく、イノベーターの具体例を挙げるとすれば、Youtuberが、それに該当すると思っております。
今存在する大人気Youtuberというのは、富の集約が成されているからこそ、活気的で、面白い動画を作り続ける事が出来る訳です。
仮に、貧富の格差が是正され、全てのYoutuber間で、貧富の格差が完全に公平な状態になってしまえば、トップYoutuberの方々は、面白い動画を作る事が出来なくなってしまい、結果的に、Youtubeという文化自体が廃れ、Youtuberという職業自体も、消失してしまう事でしょう。
ですから、それと同様に、実社会においても、潜在的なイノベーター達に、富を集約させる事によって、イノベーションを起こさせるという事は、投資家やイノベーターのみに恩恵があるのではなく、様々な面において、日本人全体にメリットがあると言える訳です。
また、5章でも述べた通り、私は、人間は誰しも、イノベーションを起こしたがるという性質を持っているのではないかと思っております。
一般的なイノベーションというのは、全世界の人々に、普遍的に、認知されるような事を指す訳ですが、我々一般庶民一人一人の日々の中にも、大衆に認知されないような些細なイノベーションが、山のように存在しているはずです。
そして、そういったイノベーションを起こし、個々の人生を唯意義にするためには、やはり、富の集約化が必要不可欠となってしまい、それ故、先進国においては、総じて、少子高齢化の宿命からは逃れられないのではないかと考えております。
ただ、同時に、所得の低い若者に対し、手取りを増やすような政策を実施すれば、多少、少子化は改善し得るという事も言えると思っております。
最後に、本記事を通して、最も伝えたかった事というのは、"貧富の格差は、悪ではない"と言う事です。
確かに、今後の日本は、経済成長の見込みが少なく、自然に、所得が向上する見込みは皆無であるため、富裕層や大企業に課税し、それを原資に、労働者に分配するという事は、重要であると言えます。
ですが、その一方で、貧富の格差の格差というのは、日本人全体の利益に繋がり、個々個人の利益にも繋がり得る側面もあるという事は事実ですので、一概に、貧富の格差の是正が正しいとは、言い切れるものではないという事です。
参考文献.
・イノベーションの科学 創造する人・破壊される人 (中公新書)
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