『スベらない同盟』を読んでみた
※まず、ネタバレ注意でお願いします。
久しぶりに、小説でも読もうかと、手に取ったら面白い本と出会いました。『スベらない同盟』はにかいどう青さんが書いた小説です。
ぱっと見、YA小説(ヤングアダルト)的な中学生が織りなす青春的な話になってます。
まあ、どういう話かというと、顔が良くて、コミュ力もあって、頭が良くてクラスメイトに人気な主人公レオが、クラスで孤立して、本ばかり読んでる陰キャのケイをいじめから守ろうと奔走する話なんですね。
いじめとは言っても、そこまでシリアスな内容ではなくて、少しちょっかい出されていて、その前兆的な感じです。
レオは所属する軽音部の顧問に、彼をいじめのターゲットから外すように支援しろとお願いされ、しぶしぶ、彼にアプローチを取る。戸惑うケイだが、お互いに不器用ながら、心を開き、やがて、文化祭に向けて落語を2人でやってみようと話になる。
でも、ここで大きな落とし穴が…。彼を庇ったせいで、ターゲットがレオになってしまうんですね。本格的ないじめに逢い、人生で経験したことのない、スクールカースト最下位に転落…。今まで築き上げてきた自信や哲学はズタズタに破壊される。でも、彼は軽音部の親友や顧問から助け舟を出されても、頑として認めず、意地を張って耐えてしまう。でも、メンタルはどんどん削られ、ついには、あらゆる繋がりを切ってしまう。家に帰って、気づくと泣いていたということも…。クールで澄ましたリア充なレオが、一気に転落していく様はかわいそうなのですが、なかなか現実では見られない光景に、ボクはワクワクしてしまいました(笑)。
しかも、文化祭直前に、相棒のケイからも、「自分は落語なんて本当はしたくない」と、なぜかこのタイミングで縁を切られ、さらに窮地に追い込まれるレオ。さて、レオは文化祭の落語をどう乗り切るのか、それとも逃げ出すのか…。
ちなみに、ここはかなりネタバレになるのですが、主人公のレオは実は女の子だったんですね。最初は、中性的だけど、気性の荒い、芯のある男子だと思ったんです。けれど、文化祭で、軽音部の親友から告白されるシーンがあります。読者としては「???ゲイなの??」と思っちゃうわけですが、実は、レオの正体は「男勝りの女子」だったわけです。にかいどうさん凄い!お見事!!私は騙されました(笑)。200ページ近く読んで、一度も疑いませんでした。
確かに、読み返すと、男子だと明確に描写される個所がないんですね。でも、言葉遣いとか、軽音部の親友にキックとか、ビンタとかするシーンとか、考え方がやけに論理的だとか、そういうところから勝手に男子だと思ってしまったわけです。
2019年出版ですから、LGBTが叫ばれ始めたあたりの時期ですよね。
これは、人間を男女の区分けに拘る社会へのメッセージなのかも??
まあ、そこまで考えて書いてるのかよく分かりませんけど。
まあ、こういう話ですから、もう一周すると、また別な読み方ができて2度おいしい作品だと思います。ある意味、実写化は不可能で、小説だからこそ、出来るのだと思います。