研修医・医学生の新NISA

マッチングの結果が出て、研修医生活が始まるということが現実として実感されてきたからか、同期に来年から始まる新NISAについての質問を受けることが多いので、noteをまとめてみることにしました。
医学生も自分の余裕資金、または親に交渉して来年から新NISAを始めてみてはいかがでしょうか。投資には「複利効果」というものがあるので、満額埋められなくても、早く始めるほうが有利とされています。
有料部分は私の新NISAおよびその枠を超えて投資するうえでの戦略(一部具体的な銘柄を含む)ですので、それ以外の部分(新NISAに関わる内容すべて)は無料で読めます

追記:2023/12/7 NASDAQ100の質問部分でリスク許容度について言及しました。
2023/12/7 有料部分で、年初一括すべきかどうかについての質問に回答しています(無料部分の結論と矛盾しない内容ですが、今後の相場についての考えを含み、これから投資を始める人を混乱させてしまいかねないので有料部分に入れさせてもらいました)。
2024/03/10 有料部分で、「今はバブルか?」についての個人的見解を書かせていただきました。なお、積立投資すべき、という意見が変化するものではありません。


注意事項

この記事は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で作成したものではありません。
銘柄選択、売買価格等の投資の最終決定は読者様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。
本記事の情報は信頼できると判断した情報源からのものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。
また、本記事の内容は予告なしに変更することがあります。
投資にはリスクがあり、自己責任です。
上記のことを承知された方のみ、以下の記事を読んでくださいますようお願いいたします。

結論

つみたて投資枠でeMAXIS Slim全世界株式(以下オルカン)またはeMAXIS Slim米国株式(以下S&P500)に10万円/月の投資を行う。設定は「再投資型」かつ「為替ヘッジなし」。さらに余裕があれば成長投資枠でもオルカンまたはS&P500に投資する。
ただし、余剰資金で行うべきで、生活資金を使ってはいけないと思っています。また、若いうちは遊びとか経験にお金を使うべき、という考えも理解できます。なので、どれだけ投資するかは個人の判断で決めるべきです。とにかく、1円でも投資するなら新NISAを始めるべきと考えています。

NISA

開設

NISA口座の開設方法は検索すれば出てきます。簡潔に言うと、まずは証券口座の開設をして、その中にNISA口座という「枠」を作ります
証券口座はSBIか楽天がいいと思います。楽天は改悪など問題になっていますが、シェア争いに決着が付けばSBIも改悪を進めると考えているので、どっちでもいいと思います。楽天証券では楽天ポイント、SBIではTポイント(近々Vポイントに統合されるそうです)が貯まり、それも投資に使うことができるので、ご自身が利用しているサービスとの相性を考えて開設するのがいいと思います。
また、証券口座開設はポイントサイトで美味しい案件が多いので、ポイントサイト経由で登録するとお小遣い稼ぎになるかもしれません。また、友達紹介システムもあるので、家族間で紹介するのもいいかもしれません。

新NISAの制度について

詳細についてはわかりやすい説明動画などあるので(「新NISA 制度 変更点」などで検索するとたくさん出てきます)、そちらを参考にしていただきたいのですが、簡単に言うと、「つみたて投資枠」120万円/年、「成長投資枠」240万円/年の計360万円/年の非課税投資枠が与えられます。そして、新NISA全体での投資枠は1800万円です。その非課税期間が無期限(かつ投資枠が大幅に増額された)ということが今回の大きな改正です。
「つみたて投資枠」がリスクの低い投資対象専用の枠、「成長投資枠」がリスクを取ってもいい枠、といったイメージです。

なぜオルカンまたはS&P500なのか

簡潔に言うと、これらはインデックスファンドという、特定の指数に連動して値動きすることを目指して作られた投資信託であり、高度に分散投資されていて、リスクが比較的低いからです。近年はIT関連の占めるウェートが大きくなったとはいえ、これらの構成銘柄には様々な業種の株式が含まれているため、景気サイクルによるダメージが抑えられ、リスクが低いと考えられています。
オルカン(オールカントリーの略)は名前の通り、全世界の企業の時価総額に連動するように作られた投資信託です。S&P500は米国の優良企業500社の時価総額(S&P500指数)に連動するように作られた投資信託です。理論的にはオルカンのほうがリスクが低いと言われていますが、米国企業も世界中で活動しているため、どちらが優れているかは一概には言えません。しかし、これらの投資信託では世界経済全体の成長、米国経済全体の成長(厳密には成長の期待)の恩恵にあずかることができるため、細かい企業分析などしなくても手堅く資産形成できるとされています。また、構成銘柄は指数を作るプロのマネージャーによって定期的に見直されていますので、経済構造の変化にも対応できるとされています。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(オルカンが対象にしている指数) vs S&P500に関しては、近年はS&P500の方がいい結果をあげていますが、オルカンが優勢な時期もありました。「米国企業は世界中で活動しているので、実質世界株式だ」と言う人、「とはいえ、米国にもリスクがある」と言う人もいて、どちらが正解かという結論は出ていません。また、これらのインデックスファンドは指数に連動させるため、運用するためのコストが低く、信託報酬という、投資信託の保有者が信託先に払うコストが非常に少なく、利益の大部分を保有者が享受できます(2023/12/3現在、eMAXIS Slim全世界株式が総資産の0.05775%/年、eMAXIS Slim S&P500が総資産の0.09372%/年となっている)。

オルカンとS&P500半々はどうなの?

正直なところ、正解はないです。どっちかに振り切るのが怖い人は安心感のためにそうしてもいいかもしれません。
しかし、その場合でも、オルカンのうち時価総額の約60%は米国企業が占めるということは知っておいてください(2023/12/3時点)。
つまり、半々にしたところで米国の割合は約80%となり、ポートフォリオ全体としては「米国のウェートが上がったオルカンもどきのインデックスファンド」が完成します。ただ、先程も述べた通り、どっちかに振り切るのが怖い人は安心感のためにそうしてもいいかもしれません。
1970年から2019年までの投資結果では、リスクが最も低くなるのは米国82%で+先進国18%の比率だという結果もありますが、グローバル化が進んだことで、分散投資によるリスク軽減効果が薄れてきていると指摘する人もいます。コロナ禍を超えて、経済が変化したこともあり、今後はどの比率が最適なのかは誰にもわかりません。しかし、オルカンやS&P500であれば、業種特有のリスクなどは分散投資による軽減がされています。

では筆者は?

私は新NISAではオルカンで1800万円を埋めたいと考えています。冒頭の結論でとりあえずつみたて投資枠を埋めることを勧めましたが、私はなるべく最速(毎月積立)で新NISA枠を埋めたいと考えています(その他の出費とのバランスを考えながら)。
個別株式への投資は新NISAの枠の外で行う予定です(枠が余ればその枠を利用して取引する可能性もありますが)。

よくある質問(内容の補足も兼ねています)

同期からされた質問とそれに対する答え・自分の考えを書いていきます。

Q. 10万円分買ったとして、それが一瞬で12倍になったらその年のつみたて投資枠は終わりなの?

A. 枠はまだ110万円分残っている。非課税枠というのは元本(購入可能額)の金額であり、値動きの結果の評価額ではない。

Q. つみたて投資枠を10万円余らせてしまったら来年のつみたて投資枠はいくらになるの?

A. 120万円にリセットされます。成長投資枠も同様です。復活よって全体の上限である1800万円に影響が出たりすることはありません。枠の復活については文章でうまく説明する自信がないので、Youtuberの説明など参考にしてください。少なくとも新NISAは長期保有のための商品で1800万円分を埋めるつもりあれば、無視していい話ではあります。

Q. 株式:債券(国債)の比率を60:40にするのが無難だと聞いたことがある。

A. 医師免許で期待される収入が債券みたいなものなので、NISAの投資自体は株式ほぼ100%でいいと考えている。新NISAの枠を埋めてから、株式の金額があまりに大きくなったら債券にも投資をするといいと思う。その場合、定期的に合計額の比率をコントロール(リバランス)するとリスクが低くなると思う。

Q. NASDAQ100(ベンチャー企業群みたいなもん)が成長性あっていいんじゃない?

A. リスクも大きいので、高値掴みした場合、新NISAのパフォーマンスが落ちる可能性がある。とはいえ、医師として稼ぐなら、多少リスクを取ってもいいと考えているので、全く推奨しないわけではない
NASDAQ100指数がドットコムバブルのピーク(2000年)を超えたのは15年後だった(S&P500は7年で回復した)。つまり、15年間、成長の恩恵を受けられなかったということになる。S&P500指数の構成銘柄はGAFAMなど、NASDAQに上場している大手IT企業も含まれるが、昔からの堅実かつ安定した収益をあげるビジネスを続ける企業(コカ・コーラやVISAなど)も多く含まれ、景気の動きに強い。現在、ドットコムバブル時に買ったNASDAQ100はS&P500と同じくらいまたはそれを超えるリターンに追いついているが、引き出す前後にまた暴落が起きていたら、回復を待つと10年以上かかる可能性があるうえに、値動きがS&P500などに比べて大きいので、元本割れリスクも大きい。
新NISAは将来の資産形成のために長期保有を前提として行うので、リスクの高い投資先は避けるのがいいと考えている。しかし、先述の通り、リターンが美味しいので、将来の生活防衛に心配がなく、早くお金持ちになりたい、みたいな人は買ってもいいかもしれない。ご自身のリスク許容度と相談して投資するのがいいと思う。自分のリスク許容度を知るのに一番いい方法は、実際に投資して値動きを見ること。どれくらいの値下がりで不安を感じるのかを知ってからでもリスクをとるのは遅くないと思う。狼狽売りは積立投資の大敵なので、インデックス投資するなら、価格を見ない、投資していることを忘れることが積立投資成功の鍵なのかもしれない。

Q. 楽天も同様の投資信託を始めるらしいし、ポイントを差し引きするとeMAXIS Slimより信託報酬が安くなるから、楽天証券ならこっちがいいんじゃない?

A. 少なくとも1年間はeMAXIS Slimが無難だと思う。また、これが最安だからといってSBIから楽天証券にNISA口座を移すなどする必要はないと思う。実は、投資信託に対して払うコストは信託報酬だけではない。銘柄入れ替えや為替に伴うコストなど(隠れコストと呼ばれる)もあり、これは信託報酬と別に保有者が払うべきコストとなっている。これらを含めて楽天の投資信託が最安コストになる保証はない。
現状、これらを含めてもeMAXIS Slimシリーズは業界最安のコストである。楽天オルカンや楽天S&P500の隠れコストは1年間運用されないとわからないので、1年後に楽天証券が発行する報告書を見てからコストを比較したうえで乗り換えることを検討してもいいかもしれない。

Q. ドル建てでETF(上場投資信託といい、株のように売買できる投資信託のこと)を買うのはどう?信託報酬も円建て(今まで説明してきたファンド)より低いし

A. 新NISA枠を最大限活用するなら円建てかつ再投資ありにすることがベスト。
「再投資」とは、簡単に言うと、ファンドの構成銘柄から出た配当金をファンドの購入に充てることである。この際、配当金による再投資は新NISAの枠を消費せず、今まで購入した投資信託の評価額に上乗せされる。つまり、配当金分だけ新NISAの枠がさらに拡張されたのと同じ結果になる。
一方で、ドル建てETFの場合、配当金は証券口座にドルとして振り込まれるため、再投資する場合、新NISAの枠を消費してしまう
また、ETFからの配当金はNISA口座でない場合、外国で課税されたのち、課税後の金額から日本で20%が課税される。NISAでは日本での課税がなくなるだけで、海外での課税はされる(また、NISAは配当控除の対象外である)ことに注意する。

Q. インデックスファンドじゃなくて高配当株はどう?配当も非課税だし。

A. 医師であれば新NISAで高配当株を買う必要性は薄いと考えている。高配当株中心に新NISAのポートフォリオを組む人でも、配当金にも減配リスク(この場合、減配が発表されると株が売られて株式自体の価格も下がることが多い)や、配当を出すために企業価値すなわち株価が下がる(いわゆる身売り)などして、総合的にパフォーマンスが悪くなるというリスクがあることは知っておくべき。高配当株は売買しやすい特別口座での運用の方がパフォーマンスが良くなると考えられる。

Q. 親がアクティブファンドを勧められてたんだけど、プロに任せたほうがいい結果になるの?

A. やめたほうがいいと思う…
アクティブファンドは信託報酬をはじめとした手数料が高い。例えば、信託報酬が総資産の1%だと、5%の利益が出たとしても、取り分は約4%になってしまう(総資産が105%になり、その中の1%が取られるので)。つまり、アクティブファンドが勝つためには、インデックスファンドのリターン+手数料 を超えるリターンを出さなければならない。その過程でリスクをとることになり、元本割れしてしまう可能性が高くなる。また、安定した資産形成というNISAのコンセプトから逸脱する。アクティブファンドへの勧誘は、我々のためではなく、証券会社が手数料を稼ぐために行っているということは忘れないでほしい。また、過去15年間でアクティブファンドの95%近くがインデックスファンドに負けているという調査結果もある。

さらに勉強したい人にオススメの本

敗者のゲーム

今や、市場は情報が即座に反映されるため、他者(すなわち市場の平均)を出し抜くことができず、ミスによる自滅で負けていく「敗者のゲーム」であり、インデックス運用は市場の平均であり、負けることがないため最善の運用方針だ、という趣旨の本。内容も誰でもわかるように書かれています。


ウォール街のランダムウォーカー

私がバイブルとしている1冊です。
今や、市場は情報が即座に反映されるため、ランダムに生成され予測できない情報が株価を動かす。つまり、株価の将来の動きはランダムウォークであり、誰も市場に勝ち続けることはできない(勝率50%の賭けを続けているならいつかは負ける)。そのため、市場と連動するインデックス運用が最適解だという趣旨の本。要旨は「敗者のゲーム」と同じですが、こちらはバブルの歴史や市場のリスク、運用手法の歴史など詳細な説明がされていて、第13版で約500ページと量は多いですが、誰でもわかるように書かれています。敗者のゲームを読んでみて、株式市場や運用手法に興味が出た方は買ってみてもいいかもしれません。


改訂版 金利をみれば投資はうまくいく

金利の変動による景気サイクルやサイクルごとに強い業種、為替の変動など説明されています。上の2つと違い、「ある程度は未来を予測できる」という主張の本ですが、少なくとも株価変動の大きな要因である金利について知ることで、株価変動が来ても落ち着いて投資を続けられる冷静さが身につくと思われます。

投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について

投資をしない人でも、これだけは読んでほしいと思える本です。サクッと読めます。
「為替の強さが国力を反映する」、「日本国債は国民の預金で購入されているので日本は財政破綻しない」、「チャートはすべてを語る、あるいはオカルトである」など、金融にまつわるよくある勘違いを、経済学の知識がない人でもわかりやすいように、実務の面から説明してくれる良書です。

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新NISA枠を超えた分の筆者の投資方針

現時点での方針で、半分メモ書きみたいなものです。個別株以外ではNISA枠をサポートするための堅実な資産の組み合わせが中心です。
既に徐々に実践されていて、ある程度リターンをあげています。
また、新NISA年初一括 or 毎月積立についての筆者なりの考えにも言及しています。
個別株は自身の専門性でわかる範囲の銘柄に留める。
ビットコインは

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