「バス停の並び方」
もう、ちょっとこれは我慢ならんことがあって。ぜひ聞いていただきたい。
タイトル通りバス停に対しての人の並び方は、ザックリ分けて2通りある。
1つ目は、車道と「並行」に。
2つ目は、車道と「垂直」に。
このように平行か垂直かがあるのはなんとなくご存知かと思う。私がいつも乗るバス停は歩道が狭い。なのに、なのにー!
垂直に並んでいる人がいる
マジで?と目を疑う光景である。よく考えてもらいたい。このまま1人2人と増えていった場合、
完全に歩道が塞がれる!
けっこう人通りも多いとこだから、何十回も歩行者や自転車の人に迷惑顔をされて、その都度よけなきゃならないというのに!
この不都合な並び方が発生するかどうかは当然ながら
2番目に並ぶ人にかかっている
私が使うバス停であれば、40代の大柄なおじさんが該当する。いつも2番目にいて、そして必ず
垂直なのである
「あぁ、今日も垂直だな…」3番目の私はもう慣れたもので、怒りよりも慈悲の心である。「お前はまったく。いつも困ったものだなぁ」そんな呆れながらも暖かく見守り、私もその後に続いて背後霊のごとく垂直に並んであげるのである。朝からカリカリしたくない。その垂直おじさんは、イヤホン付けてスマホに夢中だ。大体いつもそう。
ところが先日私は、朝から妻と喧嘩してしまったこともあってイライラしていた。その原因がまた、ゴミの段ボールの縛り方かなんかの小っさいことなので、余計にイライラしながらバス停に向かった。そしたら、はい
垂直である
おじさんは例外なく垂直だ。この時ばかりはもうなんか
このままではいかーん!
そう思って、3番目の私はついに
平行に並んでやったのである。
世直しだ。もうこんな不都合はやめにしなきゃダメだ。垂直おじさんの人生に「気づき」を与えなきゃダメ。そんな気持ちである。
まぁそのせいで非常に奇妙な並び方が発生してしまう。なんせ垂直と並行のブレンディであるから、次に来た人は必ず困惑する。朝から「垂直派」か「平行派」かを問われ、冷汗ものの選択問題に直面するのである。
そう考えている間に、来た来た、次なる4番目の男性である。どっちに並ぶ?…
あーぁ、垂直派に並んじまったぁー。
私はガッカリしたがそこはグッと気を取り戻し、平行派代表として仁王立ちで威厳を示した。
5番目の女性が小走りにバス停に来た。女性はこの奇妙なブレンディ状態にしばらく棒立ちになっていた。そして意を決して
平行派に並んだーっ、同志だ!
非常に良い判断ができる女性だ。きっと教養のあるご家庭で育ったのだろう。
ところが6番目の女性は垂直派だった…。ちっ。
そんな無言の攻防戦が繰り広げられ、いつしかバス停には2本の帯が独特のうねりを持って伸びていったのだ。
問題はここからだ。この2本に伸びた2派の帯は、どのようにバス乗り込むのだろうか。それを想像すると憂鬱な緊張感を感じた。
もしかしたら軽いイザコザからなじり合いに発展し、汚らしい人間たちの愚行を目の当たりにするのでは…。そんなことを考えていたらバスが来てしまった。
1人目が乗り込んだ。
2人目も乗り込んだ。
そして私の番だが、身体が動かない。自分の小心者っぷりには驚いた。その時、垂直派4番目の男性は
頭を軽く下げ、左手で私に先に乗るよう促したのである。
正直驚いた。ちゃんとこの不都合さを把握して、おそらく私の心理も想像しての促しだったのでは。
その後の人たちも皆譲り合いの精神でスムーズに乗り込んだのだ。
日本はまだまだ大丈夫だ。
そんなことを思って私は座席に着いた。
いい気分で何気なく、自分が持っているICカードを見て血の気が引いた。間違えてsuicaのチャージ分で支払ってしまった!バスの定期を別で持っているのにーっ。つまりまるまる運賃を損したのだ。きぃーっっ!!
数百円という小っさいことだけど、今日はとてつもなく落ち込んでしまった。
ではまた。