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「拾ってきたモノ」

子供の頃の私は、色々なモノを拾ってくるという妙な癖があった。

たとえば、

「ピン」

雪が積もる夕方。友達の家から帰る途中、突如道の真ん中に落ちていたボーリングのピン。これが結構大きくて重い。どう考えても本物のボーリングのピンだ。意地でも持って帰ろう!そう決意して両手で抱えてなんとか家まで歩いた。なぜ落ちていたかなどは考えない。ただ私の収穫物として純粋に持ち帰るのみである。

こんなモノもある。

「うで」

すっかり雪が積もった時の下校時。広々とした新雪の先をよく見ると遠くに一本何かが刺さっている。どうしても気になり雪を漕いで近くに行って見てみると「腕」だった。一瞬ドキッとしたが「石膏でできた腕」だった。しかもピースしてる!おそらく図工の時間に作った誰かの作品だろう。そしてふざけて雪に刺したのであろう。まぁこれも当然拾って帰る。面白い収穫物。

こんなモノもあった。

「うき」

海岸に流れ着いた「うき」のことである。おもに親戚一同で海に遊びに行った時に集める。さまざまな国から流れ着いた色とりどりのうき。フジツボなんかもくっ付いて不思議で魅惑の形状だ。おおきなゴミ袋いっぱいに50個くらい収穫したこともあった。

そうそうこれもあった。

「たま」

これは下校途中の草むらに落ちていたとても重い鉄の玉だ。直径15センチくらいの大きさだ。丸いものもあったが、一部が凹んだものもあってこれも魅力的だった。腕が相当疲れたが何日かに分けてなんとか5〜6個を持ち帰ってきた。ところが後日母に聞いたのだが、知らない中学生男子がうちにやってきて、その玉を返して欲しいと願いでたらしい。聞くとそれは砲丸投げに使う鉄球だったのだ。どうやら私が砲丸の玉を必死で持って帰るところを誰かに見られていたらしい。その部員は噂を頼りにやっと我が家を突き止めたとのこと。母から部員に謝って砲丸の鉄球は返してあげたとのこと。事情は分かるが苦労しただけに悔しかった。

このように、とにかく変なモノを見つけては収穫物として持ち帰ってくる。そんな習性がある変な子供であった。

しかし私が収穫した後、頃合いを見計らってちゃんと処分してくれていた母の技。これもなかなかだと今更ながらに気づいた。おかげで私の家がゴミ屋敷にならずに済んだ。

ではまた。


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