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【Vol.18】悪魔の爪痕
普通、住宅見学会のチラシには
・床材の素材
・キッチンなどの住宅設備
・間取り
・断熱、気密性能
といった《住宅の仕様・スペック》の文言が並びます。
もちろん商品である住宅のウリなので伝えるべき項目のひとつではありますが、どの工務店さんが建てる家も、素人目には他社の家と比べてそれほど差を実感できるものではありません。
「いやいや、ウチは地域でも珍しい家を建てているから間違い無く差別化できてるよ」
という工務店さんでも、性能がとんがりすぎて逆に伝わりにくくなってしまった…という悩みはないでしょうか。
今や
地震に【弱い】家はありません。
住めば【不健康になる】家もありません。
とてつもなく【デザインが悪い】家もありません。
プロの目で見た性能の違いはありますが、一般消費者にとって細かい数値の差は『どんぐりの背比べ』状態だといえます。
そんな時、【その性能を目指すことになった想い】を伝えることで現状を突破できることがあります。
例をあげてみます。
■MAZDAのロータリーエンジン
世界ではじめて日本のMAZDAが実用化したロータリーエンジン。他のエンジンとは全く異なる構造と特徴を備えたロータリーエンジンの特徴をまとめるとこうなります。
ロータリーエンジンはレシプロエンジンとは基本的に大きく異なる構造を持っている。そのシリンダ(ローターハウジング)の側面は2ノードのペリトロコイド曲線というまゆ型である。ピストン相当のものはローターと呼ばれ、シリンダに内接する3葉の内包絡線で構成された三角おむすびの形(ルーローの三角形)をしている。ローターは芯のずれた軸(エキセントリックシャフト、右図中心の白い部分で軸は回転中のB)に取り付けられ自由に回転するようになっている。その回転を制御するためエキセントリックシャフトの回りでサイドハウジングに固定され回らない歯車(茶色)の回りをローターの内歯がかみ合うようになっている。出力はエキセントリックシャフトがクランクとして動作することで取り出される。ローターの1回転で4ストローク機関の工程が3組進行し、エキセントリックシャフトは3回転する。
・・・・・・専門用語ばかりなので、車に詳しくない人は読むのが苦痛になったのではないでしょうか?
仕様スペックや性能の話は、なかなか一般消費者には伝わりにくいことが分かります。
では、当のMAZDAはどのように伝えているのでしょうか。
MAZDAのホームページでは、ロータリーエンジンを世界ではじめて実用化するに至った【想い・物語】が強調されていました。
開発当時のロータリーエンジンは、「悪魔の爪痕」と呼ばれたチャターマーク(異常摩耗)が発生し、わずか40時間程でエンジンが停止してしまう欠陥品とも言えるものでした。統合・合併の危機にあったマツダは社運を掛けて47人の研究部を設置。「今日からわれわれ四十七士は、研究室を我が家と思い、ロータリーエンジンが完成するまで、寝ても覚めてもロータリーエンジンのことを考えてほしい」という部長の呼び掛けに、枕元にメモ帳を起き、徹夜で実験を繰り返します。あらゆる材料を試し、挙句には牛や馬の骨まで使ってみますが悪魔の爪痕は消えません。世間からも社内からも風当たりが強くなる中、ついに世界ではじめて悪魔の爪痕を消し去ることに成功するのです。
現在のホームページでは表現方法が変わっているのですが、いずれにせよ、よく分からないロータリーエンジンという【モノ】の裏側に【ヒトの想い・物語】があることがわかると、グッと伝わりやすくなるのが実感できると思います。
残念ながら時代の流れでロータリーエンジン搭載車は市場から姿を消してしまいましたが、2023年にプラグインハイブリッドモデルとして11年ぶりに復活したことからも分かるように、世界中に熱烈なファンを持っています。
住宅見学会のチラシでも同じ事。
一生懸命に家の性能を伝えても一般消費者には伝わりにくい時は
・なぜこんな家を建てるのか?
・なぜ今回のイベントを開催するのか?
という工務店さんの【想い・物語】を伝えるコーナーをチラシの一部に入れるだけで、ガラッと反応が変わることが多々あります。
個別相談では工務店さんの実例もご紹介していますので、興味のある方はお問い合わせくださいね。
今日のまとめ
【なにを?】よりも【なぜ?】を伝えよう!
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