【♯テレ東シナリオコンテスト】「愛と友情のノグチ」
石澤大輔さんのテーマ作品記事「聴こえるはずのない声」より
タイトル「愛と友情のノグチ」
人 物
三浦沙羅(29)フリーター
千円札
宇佐美真世(30)沙羅の友人
目貫隼(25)アイドル
百円玉
十円玉
五千円札
猫川涼子(27)殺し屋
女
店員1
店員2
あらすじ
三浦沙羅(29)の買い物中に、千円札が喋り始める。千円札は、沙羅の好きなアイドル、目貫隼(25)の財布の中にいたことがあると言う。沙羅はその千円札に目貫のいる場所まで連れて行ってもらおうとする。しかし、友人の宇佐美真世(30)と行ったファミレスで千円札を使わなければ不自然な状況に追い込まれる沙羅。千円札を使わないことには成功するが、真世に愛想を尽かされる。
沙羅と千円札は五千円札や百円などに相談する。電子マネーが目貫の家の住所を教えてくれる。しかし、目貫を目の前にして、テンパって逃げてしまう沙羅。
次の日、千円札を狙う殺し屋に追われる沙羅。殺し屋は千円札を渡さなければ真世を殺すと脅す。悩む沙羅だが、千円札に「俺たちは巡り巡っていつか出会えるかもしれない」と言われて、殺し屋に千円札を渡す。沙羅とマヨは仲直りする。
数ヶ月後、沙羅はレジのお釣りとして渡された千円札と再会する。
本文
○グッズショップ「Aショップ」・外観
「アイドルグッズ・Aショップ」と書かれた看板。
○同・中
レジのカウンターに目貫の写ったブロマイドを置く三浦沙羅(29)。
沙羅の向かいに店員1。
店員1「千円になります」
沙羅「はーい・・・」
沙羅、財布から千円札を出す。
千円札「待って待って待って!」
沙羅「え?」
千円札「俺のこと使っちゃうの?」
沙羅、千円札をまじまじとみて、
沙羅「・・・え?野口英世が喋った?」
千円札「野口じゃない!まぁ野口か?俺 だよ俺!千円札!」
沙羅、笑って、
沙羅「いやいやいや・・・」
店員1、沙羅をみて、
店員1「あのー」
沙羅、慌てて、
沙羅「あ、すみません」
千円を銭受けにおこうとする沙羅。
千円「使わないでよぉ!俺もう世間を渡り歩きたくないんだよぉ!」
沙羅「本当に喋ってる?!何この千円!?」
千円「もうね、隠居したい俺。見ず知らずのやつの手から手へ、手から手へ、回されすぎて身も心もボロボロなのよ」
沙羅、千円をまじまじとみて、
沙羅「私・・・疲れてるのかな」
店員「お客様・・・?」
沙羅「あ、すみません」
沙羅、千円を出そうとして、
千円札「ちょちょちょーい!ねえ、このブロマイド必要?ねえ、必要?!」
沙羅、自分に言い聞かせるように、
沙羅「この隼くん、写り神だから。必要」
沙羅、千円を銭受けにおく。
沙羅「お願いします」
店員1「千円お預かりします」
店員1が千円を手に取る。
千円「おい!お前!この男が好きなのか!?俺そいつの財布に収まってた事あ るよ!!」
沙羅「は!?」
千円「助けて!俺、隼くんが触った千円!」
千円をレジに入れようとする店員。
沙羅、ハッとなって店員に、
沙羅「あ、あの!」
店員1、ハッとして、
店員1「はい?」
沙羅「やっぱりこっちでお願いします」
キョトンとした店員。
沙羅、店員1から千円札をとる。
千円札「ヤッホー!」
財布から100円玉や10円玉を何枚も銭受けに置く沙羅。
○ファミレス「ハマフル」・外
チェーン店のファミレス。
「ハマフル喫茶」と書かれた看板。
○同・中
テーブルの上には目貫の写ったブ ロマイドと千円札。
テーブルに座って、まじまじと千円札を見つめる沙羅。
千円札「ありがとう、ありがとう!助けてくれたお礼になんだってしちゃうぜ!」
沙羅「本当に隼くんの千円だったの」
千円札「ああ!隼は俺の前の前の前の前のご主人だ」
沙羅「どこで使われたの!?」
千円札「コンビニでコアラのマーチ、買った時かな」
沙羅、はしゃいで、
沙羅「本物だ!隼くん、コアラのマーチ好きなんだよねえ!可愛いよねえ!」
千円札「ま、短い付き合いだったけどな」
沙羅「へー、あ・・・じゃあ、隼くんにあってみたい!」
千円札「え、あうの?」
沙羅「うん、できる?」
千円札「まあ、できなくは。無いと思う」
沙羅、千円札を顔に近づけ、
沙羅「隼くんの匂い、残ってるはず」
髪を巻いて白のコートをきた宇佐美真世(30)が入ってくる。
真世「沙羅―、お待たせ・・・え?」
立ち止まる真世。
沙羅、千円を鼻に当てて深呼吸している。
沙羅「うっすらとカレーの匂いだ!隼くんカレー食べてたの?」
千円「前の持ち主がインド人なだけ」
沙羅「覚めるようなこと言わないで」
沙羅、千円を鼻から離す。
沙羅のテーブルの前に宇佐美真世(30)が立っている。
真世「沙羅・・・?」
沙羅、真世に気がつき、
沙羅「あ、真世!?いつからいたの?!」
真世「千円の匂い嗅いでたあたりかな・・・」
沙羅「あ、や、これは・・・」
真世、沙羅を覗き込み、
真世「(真剣に)あんた大丈夫?」
沙羅「う、うん・・・」
苦笑いする沙羅。
× × ×
沙羅の前にはオムライス、真世の前にはパスタが置かれている。
沙羅がペラペラと喋っている。
沙羅「この隼くん、まじもう絵画、芸術だよね!」
真世「沙羅、とりあえず食べなって」
沙羅「あ、うん」
沙羅、オムライスを食べながらも、
沙羅「でね、今度ライブがあるんだけど、チケット争奪戦えぐいから真世も手伝
ってくれないかなぁ」
真世「また?別にいいけど・・・」
沙羅、身を乗り出して、
沙羅「ううー神―!ありがとう!」
真世、心配そうに、
真世「てか、大丈夫なの?お金。沙羅、めっちゃライブ行ってるじゃん」
沙羅、オムライスをもぐもぐしながら、
沙羅「うん、まぁー、なんとかなるなる」
真世「ならいいけど」
真世、パスタを巻きながら、
真世「ねね、来月の沖縄旅行どうする?」
沙羅「あー・・・」
沙羅、いいづらそうに、
沙羅「来月も隼くんライブだからさ・・・また今度にしない?」
真世、食べるのを止めて、
真世「え、なんとかなってないじゃん」
沙羅「本当ごめん・・・」
真世「いくらなんでもありえないわ」
沙羅「でも・・・」
真世「(ため息)はぁ」
黙って食事をする沙羅と真世。
○同・中・レジ前
カウンターに店員2が立っている。
真顔の真世と沙羅が財布を持って立っている。
店員2「お二人で1890円になります」
真世「じゃ、私大きいのしかないから後で千円頂戴」
沙羅「おけー」
真世が店員2に五千円札を渡す。
千円「何がオッケーなんだい?」
沙羅「え?」
沙羅、財布を見ると千円札と一万円札が入っている。
千円「俺を使っちゃうの?」
沙羅「あ・・・待って!私も大きいのしかない・・・!」
真世、振り返って、
真世「あ、ごめん。払っちゃった」
沙羅の手に千円と一万円が握られている。
真世「いや、てかあるじゃん千円」
沙羅、慌てて、
沙羅「こ、この千円はないの」
真世「ないって、あるじゃん」
沙羅「いや、その千円だけど、千円じゃないっていうかぁ・・・」
真世、イライラしながら、
真世「え、意味わかんないんだけど?」
沙羅「だからその、使ってはいけない千円」
真世「一万円あるのに?」
沙羅「こっちは、使ってもいい一万円」
真世、沙羅に、
真世「ねえ、沙羅、本当に困ってるなら相談して?」
沙羅「そ、そんな困ってない!」
真世「千円払えないんでしょ?そのくら
い奢るよ」
沙羅「いい!いいって!大丈夫だから」
真世「じゃあさぁ」
真世、千円札をみる。
沙羅「あの、これさ、隼くんが触った千円なの・・・」
真世「ええ?」
沙羅「だから・・・大事な千円で・・・」
真世「それで、さっき匂い嗅いでたの?」
沙羅、うなづく。
沙羅「隼くんの残り香、あると思って」
真世「沙羅・・・」
真世、顔をしかめて、
真世「引くわぁ」
沙羅「真世・・・」
真世「最近のあんた隼くんで頭いっぱいすぎてなんかつまんないから、また落ち着いた時に返して」
真世、出ていく。
店員2の声が聞こえる。
店員2(声)「ありがとうございましたー!」
千円札「ありがとうございました!」
沙羅「・・・・・・」
沙羅、真世の後ろ姿をみている。
○公園・中・ベンチ
沙羅、ベンチに座り、千円札をみている。
沙羅「あんたのせいで真世に愛想尽かされたんだけど」
千円札「俺のせいにされてもなぁ」
沙羅「あんたのせいでしょうがよ」
沙羅、ため息をつく。
千円札「ま、あれだな。友情も、俺たち金と一緒で出会って別れての繰り返しさ」
沙羅「私、千円に慰められてる・・・惨めだ・・・」
千円札「おいおい、俺はただの千円じゃない。お前の友達だ」
沙羅「とも・・・だち・・・」
千円札「おう」
沙羅、千円札の野口英世をみて、
沙羅「野口英世が友達と思えばいいか」
千円札「ま、まぁこの際なんでもいいよ」
沙羅「ねえ、ノグチ」
千円札「いきなり呼び捨て?」
沙羅、生唾を飲み込み、
沙羅「隼くんに会わせて」
千円札「まじで言ってる?」
沙羅「私、隼くんと仲良くなりたい」
沙羅、千円札を握りしめる。
○コンビニ・外観
高層ビルに囲まれたコンビニ。
○同・中
お菓子コーナーでコアラのマーチを手に取っている沙羅。
沙羅「ここで隼くんが・・・」
千円札「お前気持ち悪いなぁ」
沙羅「うるさい!それより来るんでしょうね」
千円札「多分な」
沙羅、キョロキョロしている。
○同・外(夜)
○同・中(夜)
時計の針が午前2時を指している。
沙羅、腕を組み窓の外を見ている。
沙羅「本当にここなの?」
千円札「間違い無いんだけどな・・・」
時計を見る沙羅。
沙羅「今日は来ないのかな」
千円札「よし、じゃあ仲間の力を借りよう」
沙羅「ノグチ、仲間なんかいるの?」
千円札「お前一万円持ってたろ、それ崩せ」
沙羅「ええ、崩すの?」
沙羅、レジを見る。
○同・入り口前・外(夜)
沙羅が財布の中にある五千円や百円玉など小銭たちを見ている。
千円札「おい、みんな相談したいことがあるんだ」
五千円札「(あくび)ふわああ。私、もう寝たいんですけど」
百円玉、十円玉たち、キャッキャとはしゃいでいる。
百円玉「外の空気美味しいっ!ハハハ!」
十円玉「新しい冒険の始まりだぁ!」
五千円札「ちょっとあんたらうるさい」
百円玉「ごめんなさーい」
沙羅「賑やかね・・・」
千円札「新しいご主人だ!」
沙羅を見てざわつく金たち。
五千円「うわ、無駄遣い多そうな女!」
百円玉「みんな!短い付き合いだったな」
沙羅「なんか嫌な奴らね!」
千円札「あのさ、みんな目貫隼って奴知ら
ない?」
五千円札「知らないわねえ」
百円玉が叫ぶ。
百円玉「知ってる!知ってる!」
千円札「やっぱり利用してるみたいだな。この辺に住んでるのか?」
百円玉「知らない。ずっと財布の中にいたから」
沙羅「そう・・・」
百円玉「最近はもっぱら電子マネーらしくて滅多に財布を開けてくれないんだ」
沙羅「電子マネー・・・」
千円札「なるほど・・・」
沙羅「電子マネーなんかどうやったら会
えるの?」
五千円札「ライン送ればいいじゃない」
沙羅「え、ラインしてんの?」
五千円札「SNS大好きだからね、あの人」
沙羅「電子マネーが!?」
百円玉「だって電子だもんなぁ」
沙羅「アカウント教えて」
千円札「なんだっけ?」
五千円札「S,u,i,k,a」
沙羅「エスーユーアイ・・・あ、スイカ」
千円札「わかりやすっ」
沙羅「出てきた」
沙羅、携帯に「目貫隼くんの家はどこですか?」と打ち込む。
既読がつく。
沙羅「既読はや」
五千円札「携帯の中に住んでるようなもんだからね、アイツ」
沙羅「あ、きた!」
沙羅の携帯に「東京都世田谷区ハイグランドハイツ25階55号室」
と書かれている。
沙羅「めっちゃ具体的な情報きた!?」
千円札「すげえ!電子マネーにありがとうって言って!」
沙羅「オッケー」
沙羅、携帯に「ありがとうby千円のノグチ」と打ち込み送る。
○「ハイグランドハイツ」・入り口前
夜空にそびえる高層マンション。
「ハイグランドハイツ」と書かれた看板。
化粧をなおしている沙羅。沙羅の胸ポケットには千円札。
沙羅「ここが・・・隼くんち・・・」
沙羅、入り口の前に倒れ込む。
千円「どうした!?」
沙羅「倒れたふり」
千円札「ふり!?」
沙羅「ここで倒れてたら、きっと隼くんが声をかけてくれる」
千円札「隼くんじゃなくても声かけるよ」
沙羅、キラキラした目で、
沙羅「どうかしましたか?でも私は動かない。そしたらちょっとうちで休んで
行きませんかって・・・」
タクシーがマンションの前に止まる。沙羅、跳ね起きて、
沙羅「はあ!まさか・・・!」
沙羅、再び勢いよく倒れたふり。
目貫隼(25)が降りてくる。
目貫、倒れている沙羅に駆け寄る。
目貫「どうかしましたか?!」
沙羅、飛び起きて、
沙羅「し、隼くん・・・」
目貫「大丈夫?ここのマンションの人?」
沙羅、テンパって、
沙羅「は、ははは、はい!元気です!あり
がとうございます!では!」
沙羅、カクカク歩きながら逃げる。
それを見る目貫。
目貫「酔っ払いか?」
目貫、マンションの中へ入る。
顔を抑えて蹲み込んでいる沙羅。
沙羅「やってしまった・・・人生最高最大級、マンモス5億頭分のチャンスを棒
に振ってしまった」
沙羅、泣いている。
沙羅「隼くんが美しすぎて、テンパってしまった・・・何やってんだ私・・・」
千円札「おい・・・元気出せよ。家分かっ
たんだし、またチャンスあるだろ」
沙羅「無理・・・隼くんに酔っ払いって言われた。もう終わりだ。うええん・・・」
沙羅、号泣。
千円札「泣くなよ!」
千円札、優しく、
千円札「俺はな、もっと終わりな人間いっぱい見てきたぞ」
沙羅「私に取っては最後よ・・・」
千円札「借金が返せなくて俺を使って練炭買ったやつとか」
沙羅、思わず顔を上げて、
沙羅「おもたいな!?」
千円札「一日分の給料で俺を渡された外国人労働者もいたなぁ」
沙羅「いちいちヘビーすぎるよ」
千円札「それに比べたらなんだよお前は。別に嫌われたわけでもあるまいし」
沙羅「うん・・・なんか、バカバカしくなってきた」
千円札「ほら、家帰って寝ようぜ」
沙羅「(小声で)ありがとう、ノグチ」
沙羅、千円札を握り歩き始める。
○「山極コーポ」アパート・外観(朝)
二階建てのアパート。
山極コーポと書かれた看板。
○同・沙羅の部屋・中(朝)
ベッドとテレビがある部屋。
壁中に目貫の写真やポスターが貼られている。テーブルに千円札が置かれている。
ベッドで沙羅が寝ている。
枕元の携帯のアラームがなる。
沙羅「んん・・・」
沙羅が携帯の画面を見る。
目を見開く沙羅。
沙羅の携帯でツイッターを見てい る。タイムラインに「検索より失礼します。沙羅さんの千円をお譲り頂けないでしょうか」と書かれている。
沙羅「検索より失礼します。沙羅さんの千円をお譲り頂けないでしょうか・・・は
いい?」
沙羅「なんでバレてんだ・・・」
千円札「まさか・・・」
千円札、沙羅から携帯をとる。
千円札「うう、タッチできねえ」
沙羅「貸して」
千円札「スイカ、スイカだ!」
沙羅「スイカ?・・・あ!」
沙羅、スイカで検索。
沙羅「スイカ・・・『友達が千円札の力で隼くんに会いに行くらしい。金は天下
の回りもの』なんつて」
千円札「で、電子マネーのやつ、口が軽い
な・・・」
沙羅「ま、こんなのほっとけば・・・」
チャイムがなる。
ドアの方を見る沙羅。
○同・玄関前・中(朝)
ドア前にアタッシュケースを抱えたスーツの男を連れた女が立って
いる。女、ドレス姿。
向かいに沙羅。沙羅、慌てて千円札をポケットに入れる。
女「是非ともあなたの千円札をお譲りいただきたい」
沙羅「いや、ほんとただの千円なんで・・・」
女「もちろんタダでとは言わない」
男がアタッシュケースを開ける。
びっしりと詰まった札束。
女「100万でどうかしら」
沙羅「え!?1000円が100万円・・・」
千円札「おいおい勘弁してくれよ」
女「伏せて!」
沙羅「え!?」
ピシュンという音がする。
ドアに銃痕ができる。
女1の頬から血が垂れる。
沙羅「はい!?」
女「殺し屋まで雇った奴がいるみたいね」
リビングの窓の外の建物の窓に、ライフルを構えた女が見える。
沙羅「命狙われてるの!?」
女「・・・私は手を引く。あなたも覚悟がないならその千円札、手放した方が身
のためね」
女と男、出ていく。
ピシュン!とまたドアに銃痕ができる。
沙羅「と、とにかく逃げよう」
沙羅、靴を履いて部屋から出る。
○同・階段(朝)
マンションの共有スペースの階段を駆け下りる沙羅。
○公園・タコの遊具・外
公園にあるタコの形をした遊具。
○同・タコの遊具・中
タコの遊具の内部。ドーム状になっている。
隅っこで小さくなっている沙羅。
沙羅、千円札を握りしめている。
千円札「仕方ない、こうなったら俺を使えよ」
沙羅「でも・・・」
千円札「もう目貫隼の居場所も分かったし用無しだろ」
沙羅「友達になったじゃん」
千円札「とはいえ、俺は金だ。使われてなんぼだ」
沙羅、俯く。
沙羅「ノグチ・・・できないよ・・・」
沙羅、千円札をなでながら、
沙羅「あたしに取ってノグチはもうお金じゃない・・・」
千円札「沙羅・・・」
沙羅、千円札を見つめる。
○同・同・外
キャットスーツを着た猫川涼子がゆっくりとタコの遊具に近づいている。
○同・同・中
外の様子を伺う沙羅。
沙羅「やばい・・・絶対あれ、殺し屋だ・・・」
沙羅、タコの遊具から出る。
○住宅街・道
住宅街。
走る沙羅。
キャットスーツの涼子が沙羅を追いかけている。
沙羅「あんな格好目立つだろ!絶対」
走る沙羅。
向かいから真世が歩いてくる。
沙羅「真世!?」
真世「うわ、沙羅・・・」
沙羅と真世がぶつかる。
真世「何してるの!?」
沙羅「こ、殺し屋が・・・!」
真世、呆れた顔で、
真世「あんた、いよいよ・・・うわ」
驚く真世。
涼子が銃を構えて近寄ってくる。
涼子「さ、大人しくその千円札、渡しなさい」
真世「うわ・・・本当に殺し屋だ」
真世、震える。
沙羅「どうしよう」
千円札「仕方ないよ、渡すしかないよ!」
沙羅「でも・・・」
涼子、真世に銃を突きつけて、沙羅を見て、
涼子「ほら、早く出して」
沙羅、動かない。
真世「沙羅・・・」
千円札「ほら、二人の命を千円で買ったと思えばいいだろ!安い買い物だよ!」
沙羅、千円札と真世を交互に見て、
沙羅「できない・・・どっちも友達だから」
千円札「俺とお前はまた会えるかもしれない・・・でもアイツは・・・」
沙羅、ハッとして真世を見る。
真世「せ、千円?てかその格好キャッツアイ?とにかくめっちゃ怖いよぉ!」
銃を突きつけられて怯える真世。
沙羅、顔を上げて、
沙羅「分かった」
沙羅、千年札に何か書き込む。
千円札「おいおい・・・」
涼子「変な動きするな!」
沙羅、動きを止める。
沙羅「さーせんでしたぁ」
沙羅、涼子に千円札を差し出す。
涼子「聞き分けがいいわね」
涼子が、千円札を受け取ろうとする。
沙羅「ありがとう・・・」
千円札「また会えたらいいな」
涼子、千円札をケースにしまう。
涼子「任務完了」
涼子、屋根の上を飛びながら去る。
真世、沙羅を見て、
真世「あ、ありがとう・・・」
沙羅「ううん・・・こっちこそ巻き込んでごめん」
沙羅と真世、見つめあってハグをする。
○町・全景
テロップ「数ヶ月後」
○グッズショップ「Aショップ」・外観
○同・中
レジでお釣りを受け取る沙羅。
沙羅、千円札をじっと見る。
千円札に小さくノグチと書かれている。
沙羅「おーい、ノグチ」
千円札は千円札のまま。
沙羅「ま、そうだよね」
千円札「なんてな!!」
驚く沙羅。
沙羅「うわぁ!」
千円札「めぐりめぐって帰ってきたぜ!」
沙羅「奇跡だね」
千円札「運命だよ」
千円札を見つめて笑う沙羅。
〈終わり〉
テーマ作品記事 「聴こえるはずのない声」
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