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🌼🌺🌞可愛くない夏至祭💐🌺🌸

「ミッドサマー」観てきました。この記事は「ミッドサマー」の感想・考察です。ネタバレをガッツリ含みますので未見の方はご注意ください。


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この映画のざっくりとしたあらすじとしては、主人公のダニーはアメリカの大学に通う女の子。夏休みに彼氏とその男友達グループの計画している旅行に同行することに。旅の主目的はスウェーデンにあるとある村「ホルガ村」の夏至祭に参加すること。そこで漂う不穏な雰囲気、一行はどんな体験をすることになるのか!? という感じです。

だいぶ毒が抜かれてますけど。

重要な情報として、主人公のダニーは元から不安症だった上に映画冒頭で家族がダニーの知らぬ間に練炭か何かで死んでしまい、さらに彼氏のクリスチャンとは関係が冷え気味で、少なくともクリスチャンの方はそろそろ別れたいという気持ちを抱いています。もうダニーの精神はメッタメタですよ。しかもクリスチャンはダニーのこの状況を知った上でダニーにスウェーデン行きを隠していて、それがバレた時におそらくダニーの勢いに負けて突発的にダニーを旅行に誘い、まさかの同行希望をもらって友達にもバツが悪いというアレな人。「多分断るだろうけど誘わないのも変だし」「君たちが誘えって言ったことにしてくれ」じゃないよ。

村に行く前から人間関係が不穏なのですが、さらにやばいのが、そもそもホルガ村行きを提案したのが友達グループの1人であるペレ(ホルガ村出身者)だということ。

あーもうだめだよ終わったよぉ!

クトゥルフ神話TRPGならシナリオ開始時既にSAN0のNPC枠だよぉ! 外に撒かれる種、餌を運んでくる鳩、素晴らしい導入ですね!

まずホルガ村で生まれ育った人間は、18歳から36歳の「人生における夏」の時期に巡礼と称して村の外へ出ます。ペレもちょうどこの時期にアメリカの大学へ来ていた。そして夏至祭(冬至も夏至祭の衣装を着ると言っていたのでもしかしたら冬至祭も)に合わせて外から人間を村へ連れてくる役目を担うわけです。「近親相姦は基本的に避ける、そのために外から人を呼ぶこともある」という村人の発言から、余所者の役目の一つは新しい血をもたらしてもらうこと。クリスチャンのように村の娘とセックスさせて種を置いて行ってもらったり、女性が残るようなら母体になってもらうわけです。もう一つは生贄、最後に数人まとめて焼かれたやつですね。ホルガ村における夏至祭は高齢者を間引き、新しい血を取り入れ、いらない人間を始末して完了と言う、リソースの限られた集団生活を保つ上で非常に合理的なシステムを綺麗なお花で飾り付けた祭と言えます。

なんと可愛くないことか。


生贄というのは、ひとつは種や母体を残してもらうために数人呼んでその中で村に馴染めない、村に不利益をもたらすようなメンバーを(村の戒律として)合法的に処理する場です。今回はダニー以外の余所者勢はみんな生贄になりました。ロンドンのカップルは早い段階で村に馴染めず出て行く決断をした(高齢者2人が死んだ時に強く反発していて、この後外の世界でホルガ村では人を殺しているなどと吹聴されると困る)、ジョシュやマークは村の決まりごとを守らなかった(閉鎖空間での集団生活に不向き)ですね。

ぶっちゃけ、大いなるものに生贄を捧げたいという名目だけなら余所者を殺すだけで十分ではないかと思うのです。なのにわざわざ村人からも生贄にする余所者と同数生贄を出すのかというと、これはおそらく「高齢や怪我病気ですぐに死ぬわけじゃない人で村にとっての不穏分子を処理する枠」だと思います。村で生まれ育ったけど、例えば「まだ生きられる人を殺すのは嫌だなぁ」みたいな、なんとなくこの村のやり方はおかしいんじゃないかなと感じてしまった人間を処理する枠ということですね。神殿を焼く時に「不浄な精神を浄化する」という文言があったのと、女王選択枠でない村人生贄が本当に自分から志願したのか、ランダム選出だったのか分からないという点からそう思いました。くじにはあらかじめ殺したい人の名前しか入ってないとかできますし、本人が志願したシーンはなかったですしね。薬で酩酊させて神殿に連れていくこともやろうと思えばやれるでしょう。クリスチャンが村人生贄枠としてカウントされてたのがズルいっちゃズルい。まあどうしても枠が余ったら敬虔なホルガ村人からも生贄を選出するんでしょうが。

閉鎖的なコミュニティにとって、理由なく人を殺すのは問題があるでしょうが(なんでもない時に隣の人から殺されるかもしれないと思うのは生活してられないのでコミュニティが崩壊する)、真っ当な理由があれば無問題というわけです。

歌や踊り、仕草などの作法はともかく(決まった形で体を動かすこともそれによって気分が乗ってくるのでコミュニティを形成する上では意味がある)やってることの中身がまあシステマチックで可愛くない。ここまで綺麗にまとめてあると、本当にこれ考えたの何百年も前の人か?という気持ちになります。ホルガ村って実はもっと新しいカルト集団のコミュニティなんじゃないの?という疑いも出ようものです。


キャラクターについても言いたいことはありますが、この記事はひとまずこの辺で。

ここまで読んでくださりありがとうございました。



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