人に忘れられた時
漫画「ONE PIECE」の登場人物Dr.ヒルルクの名セリフ。
人は いつ 死ぬと思う…?
心臓を銃で撃ち抜かれた時… …違う
不治の病に犯された時… …違う
猛毒キノコのスープを飲んだ時…… 違う!!!
…人に忘れられた時さ…!!!
このシーンは漫画でも映画でも大泣きもんの大感動セリフで、僕も頭痛がしばらく止まないほど泣いたりするけれど、
人に忘れられた時は死ぬ時ということなら、俺ってもう何回も死んでるし、何人も殺してるじゃん!
忘れられることはつらい。
特にこっちが忘れてない大好きな人から、思い出の出来事や自分の存在を忘れられると、寂しくて悲しくてどうしようもなくなる。
この忘れる、記憶から消えるという現象は、誰にとっても悲しい出来事でしかないので、映画の題材にもよく使われる。
「君の名は」
「50回目のファーストキス」
「エターナル・サンシャイン」等
どれも感動的な映画だ。
今日のことは絶対に忘れない!とか
あなたのことは忘れません!とか
生きていれば何度かそんな思いを持ったはずだけど、
きっと誰でもみんな忘れている。
絶対に忘れないと誓ったことも忘れている。
生きている全ての時間のうち、いったい何%の出来事を人は覚えているのだろう。
きっと1%も無いのではないだろうか。
人生の99%を忘れて生きるのが人というものなのだろう。
でも忘れたり忘れられたりって、そんなに悲しいことなのかな。
記憶に残っていることで今があるのなら、忘れてしまった99%の人生は無駄で意味の無いことなのかな。
いくらなんでもそんなことはないだろう。
あってたまるかとも思う。
そりゃあ忘れられたら悲しいし、ショックだし、時には泣きたくなる。
でも僕の中には、忘れてしまった人の影響が必ず残っている。
怒りっぽいことも涙もろいことも、せっかちでおおざっぱで時間にうるさいことも、音楽と女の子が大好きなことも、
今の僕の成分のかなりの部分が、忘れてしまった人や出来事で作られてきたはず。
たくさんの忘れてしまった出来事や出会いや別れの積み重ねで今の自分が出来ているのだから、無駄なことなんか一つもなかったはずだ。
だから忘れてしまった人に、思いに、傷に、感謝して生きたいと思う。
忘れてしまったあの時の誰か、本当にありがとう。
記憶からは消えているけど、僕のどこかでちゃんと残っているよ。
僕のことを忘れてしまった誰かの中で、僕は思い出されることがなく、生き続けているはずだ。
それでもやっぱり忘れたくはないから、僕は音楽を聴く。
音楽ほど記憶を呼び起こすアイテムを僕は他に知らない。
昔聴いていた音楽を聴くと思い出す。
具体的には思い出せなくても、あの時の感覚や空気の匂いや嬉しさや痛みを感じさせてくれる。
新しい音楽を聴いて感動するということは、今の僕だけで感動してるのではなくて、人生全ての自分の積み重ねの結果の僕が感動しているということ。
感動するっていうことは、人生全部で感動してるのと同じなんだ。
忘れてしまった全ての人のおかげで、僕は感動することが出来る。
大好きな音楽を聴くと、僕は54年の人生全てを肯定されているように思えて、嬉しくてどうしようもなくなる。
音楽って、ほんとにすごいよ。
人生全部救ってくれる。
今まで出会ったくれた人みんな、僕のことを忘れたってしぶとくあなたのどこかで生き残るからね。
僕があなたのことを忘れても、僕はあなたと出会ったことで間違いなく生かされる。
何年後かに、今聴いている音楽と一緒にあなたのことを思い出すはずだから、
思い出せなくても必ず残っているはずだから、
僕だけじゃなくて、あなたはたくさんの人の中に記憶にはなくても残っているはずだから、
生きていたことは無駄なことじゃないはずだよ。
今生きていることは、必ず誰かのためになるんだよ。
どうか生きていきましょう。
人は いつ 死ぬと思う…?
…人に忘れられた時さ…!!!
違うよDr.ヒルルク。
忘れられたくらいじゃ人は死なない。
記憶から消えたって、忘れ去られることなんてあるはずがない。
誰のことも忘れない。
全てのことも忘れない。
記憶から消えたって忘れない。
人生全部が人を、僕を、作っているのだから。
音楽と一緒に生きていくよ。
音楽は記憶を呼び起こす最高のアイテムなんだ。
今までも今もこれから先も、音楽を心の中全部に鳴らし続けてやる。