目標がすり替わっている
在宅勤務になってから、母が部屋でエアロバイクを漕ぐようになった。
お昼休憩になったら意気揚々とやってきて「とりあえず10分漕ぐぞ!」と大きな声で宣言。
気合十分にバイクにまたがり、体力に自信がないのにもかかわらず、いきなり立ち漕ぎから始めてしまった。初っ端からエンジン全開である。
そんな調子で10分ももつのかしらとチラチラ様子を窺っていたら、徐々にスピードが落ちていき、最終的には「立ち漕ぎなんてしていませんでしたよ?」とでも言いたげな顔でしれっとサドルに腰を下ろしていた。
明らかにバテている。
まあ、無理をするより10分間ちゃんと漕ぎ続ける方がずっといい。
そんなふうに思っていたら、突然母が漕ぐのをやめて「よし、目標の5分終了!」と言ったのである。
私は耳を疑った。たしか漕ぎ始める前は10分と言っていたような…
目の前にいた祖母と顔を見合わせて私の記憶違いでないことを確信した。
母はいたって真面目に後片付けを始めていた。本気で目標が5分だったと思い込んでいる。
無意識に自分に嘘をついてしまうほど、あの立ち漕ぎが応えたようだった。
なんだか無性に母を労いたくなった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?