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ジョーカー(ネタバレ考察)

一度目は全てをストレートに受け止めて鑑賞。二度目は最初から全てを疑って鑑賞してみました。すると驚いたことに、作品自体の印象が一度目とガラッと変わったのです!

この物語には二つの時間軸が存在していて、ある片方の時間軸で起こる一つ一つの事象全てに、現実に混在した「妄想」が存在しているように感じました。

その一つ目の軸と二つ目の軸を分けるポイントは、アーサーがペニー殺害とランドル殺害で逮捕され、アーカム病院に収監される "前" と "後" なのです。

アーカム病院収監 "前"の妄想

こちらの時間軸では、妄想と現実がはっきり別けて描かれています。その中で分かりやすく抜き取られら妄想が次の3つ…

※序盤の「マレー・フランクリン・ショー」に出演する場面。
※ソフィーとの関係。
※ペニーによるトーマス・ウェインとの関係やアーサーの出生の秘密に関する妄想。

アーカム病院収監 "後"の妄想

現実の中に妄想が複雑に混在しているのがこちら側。

考察①カウンセリング

現実:アーサーがカウンセリングを受けているのは事実。

妄想:ただ実際には収監後に行われたもので、寂れた雑居ビルの一室で行われていたように見えたカウンセリング自体、財政の悪化から行われていないし、それに起因して当然薬も処方されていない。

カウンセラーは同一人物だが、年齢的容姿に大きな差。

考察②列車内殺人事件

現実:列車内の3人の証券マンは実際にピエロマスク(メイク?)の人間に殺害されている。

妄想:ただ実際に殺したのはアーサーではなく、収監前にテレビのニュースを見た彼が、勝手に自分自身に置き換えている。

考察③マレー・フランクリン

現実:「マレー・フランクリン・ショー」でアーサーのクラブでのライブ映像が流れ、マレーに笑いものにされるのは事実。

妄想:ただ番組出演からマレー・フランクリン殺害までの流れは、彼の「殺したい」という願望による妄想。

序盤でのペニーと見ている同番組の途中に挿入される妄想が伏線。ペニーとのまだ幸せの余地が残されたときにみた妄想→全ての希望が失われたあとにみた妄想。

現実にはマレー・フランクリンは殺されていない。

考察④拳銃

現実a:アーサーは拳銃を所持しているが…

現実d:会社をクビになる際、同僚に銃を持っていたことを聞かれたアーサーが、「ランドルに聞いてくれ。ランドルの銃だ」と言うのに対し、ランドルの「デタラメ言うな!」という怒りの言葉は現実。なぜなら…

妄想a:実際に所持している拳銃は彼が度々口にしている通り小道具。

妄想b:ランドルから銃を受け取る場面がそもそも妄想だから…

射殺シーンでの残弾数に違和感。

そして"人と違う"ことを認めたくないアーサーは、"ふつう"の同僚との仲間意識に強い憧れを抱き、妄想する。
序盤では"人と違う"小人症のゲイリーを同僚と一緒に笑いものにするが、ペニー殺害後に自分も"人と違う"ことを悟ったアーサーは、以前からいけ好かなかった"ふつう"の人種のランドルをも殺害。自分と同じ人種の"人と違う"ゲイリーは見逃す。

考察⑤アーカム病院収監後

現実:ランドル殺害後に見逃したゲイリーの通報によって逮捕され、アーカム病院に入れられる。

妄想:"後"の「妄想」で挙げた事象含め火の海と化したゴッサムシティで民衆から祭り上げられる場面は全て、収監後に「ジョーカー」がカウンセラーに語った、彼が現実だと思い込んでいる妄想。

考察⑥物語のつながり

OPの涙を流しながらメイクをするアーサー…この場面こそが「ジョーカー」誕生の瞬間。これはアーサーがランドル殺害後、「マレー・フランクリン・ショー」への出演を妄想しながら行われた場面。

ここから直接繋がるのは、ストリートギャングに看板を奪われてリンチされる場面ではなく、階段でダンスを踊る場面。そこで刑事2人に追跡され逮捕。アーカム病院へ収監されカウンセラーに語る話こそが、「妄想」と「現実」が入り乱れたこの【ジョーカー】の物語。


考察⑦これは全て…

妄想:という、この考察そのものが全て…

信じるも信じないもあなたしだい♪


実を言えば一回目の鑑賞だけならここまで評価は高くなかった。二回目の鑑賞で全てを疑って観た結果、妄想と現実の境界線を曖昧にするこの脚本に超絶魅了された。ぜひ多くの映画ファンに二回目の鑑賞をオススメします。

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