見出し画像

《ポールとヴィルジニー》

18世紀、フランスの小説。純愛物語の舞台はマダガスカル島に近いフランス島、当時フランスの植民地で現在のモーリシャス島。著者は、ベルナルダン・ド・サン=ピエール。この小説一作で今に名を残している。


三五歳の時には二五歳年上のルソーと親しく交情を結んだらしい。ナポレオンがこの小説を愛読していたことや、ナポレオンの兄弟と旧知の間柄だったこともあり、六五歳の時からナポレオンの厚遇をうけた。

1737年の生まれ。そこそこの家柄の出自であったが、激しい性格が影響して前半生は衝突と波乱の連続で、生活も困窮を極めたらしい。

後半生では定職も得て、結婚もし、ようやく生活も安定した。そんな中で本職の植物学の著作をものしたが、その再販出版過程で付帯的な巻として出版したのがこの小説で、出版直後から世に大反響を呼んだ。

しかも、フランス文学史上に輝くほどの名作と称揚されるほどとなり、以来版を重ね、多くの後進作家に影響を及ぼす次第となった。

しかし、熱も冷めればなんとやら。あまりにうまくまとまりすぎた筋立てや現実との大きなギャップなどから、19世紀以降の合理主義、リアリズムの潮流においては、次第に忘れられた作品となり、そのうち誰からも顧みられなくなった……が名作は決して滅びることはなかった。


物語の内容はここでは触れないが、読み物としては楽しめる筋書きであり、一気読みしてしまった。

KINDOL版で楽しんだが、興味深かったのは挿し絵。オリジナルではなく後世のものらしいが、登場人物のうち女性の姿は優しく美しく、男性は凛々しく。モノクロだが、景物の描写もよく雰囲気が出ていた。これだけでも楽しめる。


これは作者の年表を見て驚いたことだ。彼は二度結婚をしており、一回目は五六歳のとき、相手は出版社主の娘で二二歳。三四歳差もの年の差婚。

二回目はもっとすごい。死別により六三歳のとき再婚。相手が二〇歳で年の差はなんと四三歳。艶福家とはこのことか。


※サファリサファリさんの画像をお借りしました。




最後までお読みいただきありがとうございました。記事が気に入っていただけましたら、「スキ」を押してくだされば幸いです。